暴力団関係者の登記名義があるからといって、時価は相続税評価額を下回るか。

隣接宅地及び本件私道の各共有持分に暴力団関係者の登記名義があるからといって、時価は相続税評価額を下回るか。

(平成21年6月25日 広裁(諸)平20第33号)

事例の概要等

本件土地の概要

本件宅地は、間口約10m 奥行約12m ほぼ長方形の土地である。また本件宅地(地積43㎡)は、幅員4mの通り抜け可能な私道(以下本件私道という)に接している。
本件宅地の西側に隣接する宅地(以下隣接宅地という)及び本件私道の各共有部分について、暴力団関係者が昭和60年に売買し、登記されている。なお、当該暴力団関係者は20年以上前に死亡しているが隣接宅地及び私道の各共有持分はいずれも当該暴力団関係者の登記名義のままである。

事案の概要

本件は、請求人らが相続により取得した宅地の価額を不動産鑑定評価に基づく鑑定評価額により相続税の申告をしたところ、原処分庁が、当該宅地の価額は原処分庁が依頼した不動産鑑定評価に基づく鑑定評価額であるなとして更正処分等を行ったのに対し、請求人らが同処分等は違法であるとして、その一部の取消しを求めた事案である。

 

裁決要旨

請求人らの主張

請求人らは、隣接宅地及び本件私道の各共有持分について暴力団関係者が登記名義を有していることは、所有者という立場を利用して不当な言いがかりをしてくる可能性があるから、本件宅地について減価要因が生じているとして、当該要因を近隣対策費として減価した請求人ら鑑定評価に基づく鑑定評価額15,600,000円が本件宅地の時価である。

原処分庁の主張

本件宅地については、評価通達に基づく価額(以下「相続税評価額」という。)が本件相続の開始時における時価を超えているという特別の事情があるため、その時価は原処分庁鑑定評価額31,000,000円となる。
また、原処分庁鑑定評価に不合理な点は認められず、請求人ら鑑定評価については、合理性を欠く点がある。

審判所の判断

本件宅地の相続税評価額は31,332,460円であるところ、本件宅地に係る請求人ら鑑定評価額及び原処分庁鑑定評価額のいずれの価額も相続税評価額を下回るものであるから、まず、請求人ら鑑定評価及び原処分庁鑑定評価の合理性について検討した上で、本件宅地の時価を検討する。

請求人ら鑑定評価は、標準画地比準方式を適用する際の近隣地域の範囲の判定及び標準画地の設定において土地価格比準表の定めに準拠していないばかりか、格差の程度の判定においても土地価格比準表の定めを著しく超える判定を行うなど、その合理性に問題がある。

また、上記減価要因は、現実的かつ具体的な要因ではなく心理的要因であると認められるところ、請求人ら鑑定評価が市場性及び費用性の両観点から算定した減価率100分の30はその算定方法に問題があるといわざるを得ないから、請求人ら鑑定評価額が時価を示すものとはいえない。

これに対し、原処分庁鑑定評価は、上記減価要因を近隣地域と類似地域の格差要因とみて、その格差率を100分の5と判定して地域格差の補正を行っていることは、当審判所においても相当と認められ、その他の部分についても、不動産鑑定評価基準等に準拠して適正に鑑定評価が行われており、原処分庁鑑定評価は十分合理性を有するものである。

そして、本件においては、このようにして算定された原処分庁鑑定評価額が相続税評価額を下回るから、原処分庁鑑定評価額を本件宅地の時価とみるのが相当である。

コメント

本件の価格についてまとめると下記のようになる
①本件土地の相続税評価額(路線価による)… 31,332,460円
②相続人らの鑑定評価額 …         15,600,000円
③原処分庁の鑑定評価額 …         31,000,000円
④審判所の判断した時価 …         31,000,000円

相続人らの鑑定評価額と原処分庁・審判所の判断した時価3,100,000円との間に倍の開きがあります。
この原因は上記2で述べている「上記減価要因は、現実的かつ具体的な要因ではなく心理的要因である」というところにあります。即ち心理的瑕疵に該当すると言っています。

しかし、本件土地を相続し、売却しようとした場合、実測取引となれば隣接土地及び共有持分の私道の境界立合及び捺印(実印)が必要になりますが、隣接土地及び共有持分の私道の名義は当該暴力団関係者の登記名義のままなら、どう処理するでしょうか。

実務上実害が生じ、本件土地への影響がないとは言えない。理屈は通っているのですが、上記価額では高すぎると言わざるを得ません。