相続時の時価は、鑑定評価額によるべきか否か

請求人らは、相続時の時価は、鑑定評価額によるべきと主張するが、請求人らの鑑定評価額は、開発法のみにより算定されているので、不動産鑑定評価基準に準拠して算定されたものとは認められないとした事例。

(平成17年12月15日 東裁(諸)平17-80)

1.事例の概要等

(1) 本件土地の概要等

本件A土地は、駅から約950m(道路距離)に位置する3,178.83㎡の土地である。第1種低層住居専用地域(建ペイ率50%、容積率100%)に存する。
A土地所在地域において、昭和54年以降、開発されている2,000㎡以上の土地は、すべてマンション敷地になっている。

(2) 事案の概要

請求人らは、相続により取得した本件土地の価額は、鑑定評価額によるべきである旨主張する。しかしながら、請求人らの鑑定評価額は、開発法のみにより算定されていることから、不動産鑑定評価基準に準拠して算定されたものとは認められず、本件相続開始日における適正な時価を表しているとは認められないので、請求人らの主張には理由がない。

次に、財産評価基本通達に基づき評価した相続財産の価額(相続税評価額)が、相続開始時におけるその財産の時価を上回っているような特別な事情がない限り、財産評価基本通達に基づき評価する方法には合理性があると認められるところ、本件土地の相続税評価額は、当審判所が、本件土地の近隣地域及び同一需給圏内の類似地域の取引事例を基に算定した本件土地の時価額を下回ることから、相続税評価額に基づく原処分は適法である。

2. 裁決の要旨

(1)原処分庁の主張

原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。

(イ)本件鑑定評価額について

本件鑑定評価額は、不動産鑑定評価基準に定められた鑑定評価の手法のうち、開発法のみを採用し、取引事例比較法及び収益還元法による検証が行われておらず、不動産鑑定評価基準に準拠して算定した価額とはいえないので、本件相続開始日におけるA土地の時価(客観的な交換価値)を適切に示しているとは認められない。

(ロ)A土地の価額について

A土地に係る相続税評価額を算定すると、866,207,547円(以下「原処分庁評価額」という。)となり、評価基本通達の適用については、次の通りである。
a. A土地の近隣の地域で、2,000m以上の土地について、戸建住宅の敷地として開発された事例は、相続開始前10年間で1件もなく、すべてマンション敷地として開発されており、A土地の面積は3,178.83mであるので、A土地の最有効使用の方法は、マンション敷地であること及び現に相続開始後、A土地上にはマンションが建設され、公共公益的施設用地の負担はないことから、A土地は、広大地に該当せず、評価基本通達24-4(以下「改正前広大地通達」という。)の定めの適用はない。

(2)請求人らの主張

A土地の価額は、次のとおり本件鑑定評価額によるべきであるから、本件各更正処分の全部の取消しを求める。

(イ)本件鑑定評価額について

不動産鑑定評価基準において、面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等の更地の鑑定評価額は、取引事例比較に基づく比準価格、土地残余法による収益価格を関連付けて決定した価格にさらに開発法により算定した価格を比較考量して決定するものとする旨規定されているが、開発法は、標準的な画地の評価方法とは明らかに違うことから、開発法により算定した価格を中心に考えることが重要であると解釈することができる。

(ロ)原処分庁評価額について

次のとおり、原処分庁の評価基本通達の解釈及び適用には、明らかな誤りがあるので、原処分庁評価額に合理性はない
A 広大地通達の適用について
しかしながら、原処分庁は、本件あらましでは、マンション敷地か否かの判断基準としていない面積のみを判断基準として、A土地をマンション敷地と認定し、本件あらましの判断基準の一つとされている容積率については、何ら判断要素として触れていない。

このような状況下で、A土地をマンション敷地と認定することは明らかな判断誤りである。
したがって、A土地の評価に際し、評価基本通達によって評価額を算定する方法を採用している原処分庁は、本件あらましに基づいて、少なくとも改正前広大地通達を適用して評価すべきである。

(3)審判所の判断

(イ)A本件鑑定評価額について

A 本件鑑定評価額について

(A)不動産鑑定評価基準は、不動産鑑定士等が不動産の鑑定評価を行うに当たっての拠り所となる統一的基準であるところ、同基準によれば、更地の鑑定評価額については、更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとし、再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきであり、当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに開発法に基づき算定した価格を比較考量して決定するものとする旨定めている。
しかし、本件鑑定評価額は、上記のとおり、開発法のみ基づき決定されており、取引事例比較法等の他の手法から算定された比準価格等との比較考量がなされていない。
したがって、本件鑑定評価額の決定においては、不動産鑑定評価基準における手法を尽くしていないこととなる。
また、別表4-2及び別表4-3のとおり、戸建開発法及びマンション開発法により求められる価格は、採用する投下資本収益率及び予想販売収入並びにこれらの金額等を基礎として見積もられた販売費及び一般管理費の割合によって、その求められる価格は異なることとなる。
したがって、採用した投下資本収益率などの数値に妥当性があるか否かを検討する意味からも、取引事例比較法等の他の手法から算定された比準価格等によって、開発法により求められた価格の検証が必要になるものと認められる。

(B)以上のことから、本件鑑定評価額に合理性があるとは認められず、本件鑑定評価額は、本件相続開始日における適正な時価を示しているとは認められない。

(ロ)以上のことから、A土地は、その相続税評価額901,500,293円(283,594円/㎡)が、相続開始時における時価1,061,973,989円(334,077円/㎡)を上回っているような特別な事情があるとは認められないので、A土地の相続税の課税価格に算入される価額は、相続税評価額によって評価することが相当であると認められる。

コメント

不動産鑑定評価基準によれば、更地の価額は「更地」や「自用の建物及びその敷地」の取引事例に基づく比準価格や土地残余法による収益価格を関連づけて決定する。再調達原価が把握できる場合には積算価格をも関連づけて決定する。
なお、更地の面積が、近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合には、開発法による試算価格をも比較考量して決定することになっている。
本件の場合、開発法のみを採用して更地価額を求めているようであるが、更地の価額を求めるならば基準に基づくべきである。