審判所が算定した価額を当該宅地の価額とするのが相当であるとした事例

相続税評価額は審判所が算定した時価を上回っていることが認められるので、審判所が算定した価額を当該宅地の価額とするのが相当であるとした事例

(平成9年12月11日裁決 公開・東京)

紙にTAXと書いてある写真

事例の概要等

本件土地の概要

A土地は地積269㎡、商業地域に位置する。
A土地は貸家敷である。

事案の概要

本件は、相続により取得したA土地の貸家建付地の評価額の多寡を争点とする事案である。
請求人は、請求人が依頼した不動産鑑定士の鑑定評価額によるべきと主張する。
一方原処分庁は、本件宅地の価額は相続税評価額によるべきであると主張する。

しかしながら請求人側の鑑定評価書には種々の不的確な点があるので本件宅地の価額を表しているとは認められない。
また原処分庁が提出した鑑定評価書の写しには不動産鑑定士の氏名が記されていないので証拠資料として採用できない。
そこで審判所が本件宅地の価額を算定したところ、審判所が算定した価額が相続税評価額を下回っていることが認められたので、審判所が算定した価額を当該宅地の価額とするのが相当である。

裁決の要旨

請求人らの主張

原処分は次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
A土地の価額は、原処分庁が本件宅地を財産評価基本通達に基づいて評価した価額(以下相続税評価額という)を下回っているから、本件通知処分は、本件宅地の時価の解釈を誤った違法な処分である。

原処分庁の主張

原処分は、次の理由により違法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
原処分庁鑑定評価額は、本件宅地の本件更地価額を上回っており、かつ、原処分庁鑑定評価額を基に評価基本通達に基づく減価割合を乗じて算出した本件宅地の価額は、本件宅地の相続税評価額を上回っている。

審判所の判断

請求人鑑定書では、貸家建付地の価額の算定に当たって、個別的要因の格差修正率をマイナス20パーセントと判断しているが、その根拠が不明であり、また、算定した基準となる資料の提出がなく、その適否を判断することができない。

原処分庁から提出された鑑定評価書の写しには、その鑑定を行った不動産鑑定士の氏名が明らかにされていないところ、一般的にこのような証明書等の書類は、誰がどのような立場で作成したかが重要であると考えられることから、原処分庁が提出した鑑定評価書の写しを、本件宅地の時価を証明する証拠資料として採用することはできない。
したがって、この点に関する原処分庁の主張は採用することができない。

そこで、当審判所において、本件宅地と同一の用途地域内にある取引事例等を別表8のとおり抽出し、これらの現地確認を行い、土地価格比準表に準じて地域要因及び個別的要因の格差補正を行い、本件課税時期における本件宅地の価額を算定したところ、次のとおりである。A宅地の貸家建付地としての価額は、次のとおり算定される。

[自用地とした場合の価額]2,637,085,719円×([借地権割合]1-8×[借家権割合]0.3)=[貸家建付地としての価額]2,004,185,146円)

ところで、その土地の価額が評価基本通達に基づく画一的な評価方式による相続税評価額を下回らない限りにおいて、課税実務上、土地の価額は相続税評価額によることとされている。
そうすると、このような課税実務の下では、各納税者間の課税の公平の面からも、A宅地については、その価額を相続税評価額を超える価額とするのは適当ではなく、相続税評価額をその土地の価額とするのが相当である。
したがって、A宅地の価額を上記Cで算定された価額とするのは相当ではなく、請求人らが本件申告書に記載したA宅地の相続税評価額を1,675,946,122円と算定していることに誤りも認められないから、A宅地の価額を1,675,946,122円とするのが相当である。

コメント

請求人が提出した鑑定評価書には、鑑定評価に採用した取引事例に不適当なものがみられるので種々の不的確な点が認められたりするので、当該鑑定評価額はA宅地の価額を表しているとは認められないと門前払いされています。
また、原処分庁の鑑定評価書には、その鑑定を行った不動産鑑定士の氏名が明らかにされていないということで当該鑑定評価書は証拠資料として採用されないということでした。

結果的にA宅地の価額は相続評価額1,675,946,122円となりました。