原処分庁側の鑑定評価額が合理的であるとした事例

権利関係が錯綜した貸宅地の評価について、財産評価基本通達によらず原処分庁側の鑑定評価額によることが合理的であるとした事例。

(平成17年7月7日裁決 (公開))

1.  事例の概要等

(1) 本件土地の概要

物件1は、4棟の建物の敷地及び道路として利用されている平坦な土地であるが、P市に接する部分はがけ地法面となっている。道路部分の地積は65.42㎡、物件1の地積は588㎡、年間地代は186,900円である。

(2) 事案の概要

本件は、相続により取得した物件1の貸宅地の評価額の多寡を争点とする事案である。
本件物件1の貸宅地の評価額について、請求人及び原処分庁は不動産鑑定士らの鑑定評価に基づき算定した金額である旨主張するが、審判所は、原処分庁側の鑑定評価に合理性があるとして、本件物件1は原処分庁側の鑑定評価に基づき算定した金額であるとした事例です。

2.  裁決の要旨

(1) 請求人らの主張

(イ) 本件各物件の時価は、不動産鑑定士Rが行った鑑定評価(以下「請求人ら鑑定」という。)による鑑定評価額である。具体的には、別表2「請求人ら主張額」欄の金額であり、本件各更正処分は請求人ら主張額を超える部分を取り消すべきである。

(ロ) 本件各貸宅地については、評価通達に基づき算定した評価額は時価を超えている状態にあり、原処分庁側も鑑定評価による時価の見直しを行い、それに基づいて本件各更正処分を行ったことに争いはない。
よって、これらの時価は、評価通達によらず、他の合理的な方式に基づき算定すべきであり、請求人ら鑑定と原処分庁側の行った鑑定評価のいずれが合理的な時価の算定をしているか考察すべきであるところ、原処分庁側の鑑定評価は時価を正確に構築していない。

(2) 原処分庁の主張

(イ) 不動産鑑定士に鑑定を依頼したのは、本件各貸宅地には、複数の地主が所有する土地をデベロッパーが一括で借り上げ、それらを一体として宅地造成し、各地主が所有している土地の形状とは全く無関係に区画された状態で転貸しているなど将来における復帰価値の算定が極めて困難であるという事情が認められたこと、物件8については、請求人ら鑑定の評価手法及び評価額に疑義があったことから、時価の検証を行う必要があると判断されたためである。
そして、評価通達に基づく評価額と原処分庁鑑定に基づく評価額にバラツキが生じたため、評価の安全性を考慮し、いずれか低い価額を本件各物件の評価額として採用したものである。
上記のとおり、別表2「原処分庁主張額」欄の金額と同額の評価額でされた本件各更正処分は適法であるので、審査請求は棄却されるべきである。

(3) 審判所の判断

(イ) 法令の解釈

イ 財産の価額

相続税第22条は、相続により取得した財産の価額は、「当該財産の取得の時における時価による」と規定しているところ、この場合の時価とは、当該財産を取得した日において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。

(ロ) 請求人ら鑑定について

(A)個別格差について

請求人ら鑑定は、物件1をその利用状況(建物敷地部分、道路部分及びがけ地部分)に応じて7区分し、その地域の標準的な画地に対する格差(以下「価値率」という。)について、形状が相当なものは100%、形状が不相当なもの(以下「端画地」という。)は30%、無道路地は50%、道路部分は10%、がけ地部分は10%と判定している。この7区分のうち、端画地とされたものは3区分あり、それぞれ価値率を30%と判定しているが、30%とした具体的な根拠は明らかではなく、また、それらはそれぞれ所在する位置、形状等が異なっており、一律に同じ30%になるものとは認められないことから、請求人ら鑑定が判定した価値率に合理性があると認めることはできない。
同様に、無道路地に係る価値率50%についても、具体的な算定根拠が明らかではなく、合理性があると認めることはできない。
また、個別格差の算定に当たり、がけ地部分F32.37平方メートル及び端画地G24.52平方メートルは分母に含められているが分子には含められておらず、結果としてその分だけ個別格差が過少に算定されているが、当該部分を分子に含めなかった理由が示されていない。
したがって、これらの価値率等を基礎として算定された物件1の個別格差52%は、合理性があるものとは認められない。

(B)以上のことから、請求人ら鑑定の更地価格は採用することはできない。

(ハ) 原処分庁鑑定について

(A)個別格差について

請求人らは、原処分庁鑑定は、一方で推測した過去の造成前の形状を基に、また一方で現在の地勢等の状況を基に個別格差を判定しており、支離滅裂な鑑定であると主張する。しかしながら、原処分庁鑑定の個別格差の内訳として挙げられた項目とその説明の趣旨は、物件1の筆全体を開発素地と捉え、幹線道路である市道との現在の位置関係(無道路地)及び現在の地勢を基に個別格差を判定したものと認められるので、一方で推測した過去の状況を基に、一方で現在の状況を基に判定したものとする請求人らの主張は相当ではない。

(B)物件1の評価額

原処分庁鑑定は、請求人ら鑑定に比して合理性があると認められるところ、原処分庁は、物件1の評価額は、原処分庁鑑定において判定された道路部分の価値率10%を、評価通達の定めを準用して0%に置き換え、原処分庁鑑定に基づく評価額を補正した後の金額であると主張する。
しかしながら、鑑定評価基準と評価通達は異なるものであり、また、評価通達によらず鑑定評価基準により物件1を評価するものであるから、単に、評価通達における取扱いを根拠として、当該価値率を0%とすることは相当と認められない。むしろ、請求人ら鑑定及び原処分庁鑑定ともに、物件1の道路部分の価値率を10%と判定していることからすると、当該道路部分の価値率は10%とするのが相当である。
したがって、物件1の評価額は原処分庁鑑定に基づく評価額と同額の13,501,000円であると認められる。

3.  コメント

相続人らと原処分庁共に時価鑑定をすることに争いはなく、相続人らは時価鑑定金額は3,552,000円、原処分庁の時価鑑定は13,501,000円と求めている。
上記により審判所は原処分庁の時価鑑定を相当としました。
路線価の価格がいくらかは不明ですが、路線価よりは低くなったということでよしとすべきかと思います。

 

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Posted by koba