マンション適地とはどういう土地か③
マンション適地とは、どういう風に実務上判断したらいいかについて裁決を通じて調べてみたいと思います。
審判事例①(平成24年7月4日裁決)
マンション適地等に当たるか否かについて
(イ)①(中略)本件地域は用途地域が第1種中高層住居専用地域であり、建ぺい率60%及び容積率200%であるから、マンション等の建築に係る規制が厳しくない地域であること、②(中略)駅、公立の小学校及びスーパーマーケット等に近接するなど、公共施設及び商業施設への接近性に優れていること、③(中略)本件地域には複数のマンションが存すること、④およそ、マンションの敷地とするためには、ある程度大規模な地積が必要と認められるが、(中略)本件地域において、本件相続開始前10年間における500㎡以上の土地に係る建物の建築状況を確認したところ、2件の建築事例があり、2件ともマンションの建築事例であること、⑤(中略)本件相続開始日後、現に本件○土地及びその隣接地を敷地としてマンションが建築されていることからすると、本件土地は明らかにマンション適地等の該当するものと認められる。
(中略)
B (中略)②○本件相続開始日後、本件○土地及びその隣接地を敷地として、現にマンションが建築され、当該マンションはしゅん工前に全戸が完売しているといった事情などからみて、本件地域はマンションが選好される地域であると認められることなどからすると、本件地域がマンションより戸建住宅の志向の強い地域であると認めることはできないし、仮に容積率を200%使用することができないとしても、そのことをもって、本件各土地がマンション適地等ではないと認めることもできない。
したがって、請求人らの主張を採用することはできない。(中略)
E(中略)マンションの建築分譲及び戸建住宅の建築分譲のいずれにも利用可能であることからすると、戸建住宅ではなくマンションが建築分譲されたこと(かかる建築事例の存在)をもって、マンション適地等であるとの判定の基礎の一つとすることは何ら不合理ではない。
したがって、請求人らの主張を採用することはできない。
結論
以上により、本件各土地はそれぞれマンション適地等に該当すると認められるから、広大地とは認められない。
本件土地は駅から約500m に位置し、面積2,108.19㎡、第1種中高層住居専用地域(建ぺい率60% 、容積率200% )にあります。
また、同駅周辺にはスーパーマーケット等の商業施設もあります。本件土地がいわゆるマンション適地等に該当するとされた理由は、本件相続開始後、本件土地に7階建のマンションが建築されたことです。この事実が、審判所の判断の理由付けの1つになったのだと思います。
審判事例②も、マンション適地に該当するとした事例です。請求人は贈与により取得した土地は広大地に該当するとして、税務署に更正の請求をしました。しかし税務署は、本件土地は開発行為を了したうえ、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来に新たな開発行為は行われる予定はなく、本件地域の標準的使用からしても有効利用されているとして、広大地として認めませんでした。
国税不服審判所でも争われましたが、国税不服審判所は原処分を有効と判断しました。
本件土地の概要は次の通りです。
面積:948.67㎡ 用途地域:第1種低層住居専用地域(60%、150%) 駅への距離:H電鉄J駅から徒歩約12分 周辺の利用状況:テナントビル・賃貸マンション・店舗・中小規模一般住宅・駐車場等が混在する地域 土地の利用状況: |
審判事例②(平成23 年9 月5日裁決)
本件土地の利用状況
(中略)平成4年3月18日ころに新築された鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建の本件建物及び本件建物入居者専用の駐車場の敷地用地として一体として利用され
ており、本件建物は(中略)賃貸可能な12戸中11戸又は12戸という高い入居者率を実現している。そして、本件建物の耐用年数は、(中略)耐用年数省令で規定する法定耐用年数47年であり、その外観上、著しく老朽化又は損傷しているといった事実も認められないことからすると、今後相当の期間利用することができるものと見込まれる。
以上のとおり、本件土地は、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない。
(中略)
本件西側地域における宅地の利用状況
(中略)本件贈与の日を含む平成10年以降に本件西側地域内で新築された建物は共同住宅のみであることからする
と、本件西側地域は、戸建住宅と共同住宅が混在する地域であると認められ、これらの用途のいずれもが本件西側地域における宅地の標準的な利用形態であると認めるのが相当である。そうすると、本件土地は、標準的な利用形態で
る面積基準である500㎡を上回っているものの、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準
的な使用状況に照らしても有効に利用されていると認められるから、(中略)広大地には該当しないものと認めるのが相当である。
ある共同住宅用地として既に利用されていることになり、周囲の状況に比して特殊な形態として利用されているものとはいえない。すなわち、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されているということができる。
小括
(中略)本件土地は、その地積が、本件公示地の地積である約426㎡及び○市における(中略)の開発許可を要する面積基準である500㎡を上回っているものの、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されていると認められるから、(中略)広大地には該当しないものと認めるのが相当である。
審判事例② のポイントは下記の通りです。
①本件土地上に、平成 4年建築の老朽化も損傷もしていない鉄筋コンクリート造3階建の共同住宅(法定耐用年数は47 年)があること。すなわち建替する必要のないしっかりした建物があり、今後相当の期間利用できること。 ②同建物 12戸中 11戸または12戸の高い入居者率であること。すなわち共同住宅としての市場性が高いこと。 ③平成10年以降に新築された建物は共同住宅のみであること。 |
特に、③のウェートが大きいと思われます。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)