評価単位の区分と広大地適用
評価単位の取り方によって広大地としての面積要件を満たすか否かが争われた事例をご紹介致します。
裁決事例を読みとくことによって、実務に生かすことができます。
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
甲土地(農地)と乙土地(貸家建付け地)は、地続きなので併せて一団の土地として広大地通達を適用すべきかが争われた事例
(熊裁(諸)平22第5号 平成22年11月12日裁決)
1.本件各土地の概要
①甲土地:地積1,201㎡、畑として利用(市街地農地)
②乙土地:地積543.41㎡、本件相続開始時において、被相続人が所有する家屋が存し、その家屋を■■に賃貸していた(貸家建付地)。
甲土地と乙土地は地続きで、市街化区域内に所在する。
③甲土地と乙土地を併せて本件各土地という。(別図1)
2.争点
甲土地と乙土地を併せて一団の土地として広大地通達を適用することができるか否か。
3.原処分庁の主張
評価通達7は、土地の価額は、原則として、宅地、田、畑、山林等の地目の別に評価する旨定めている。
ただし、例外として一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価し、また市街地農地等又は宅地と状況が類似する雑種地が隣接している場合、その形状、地積の大小、位置関係等からみて一団の土地として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の土地ごとに評価すると定めている。
甲土地は畑で農地として、乙土地は宅地で貸家建付け地として利用されており、各々の土地は、地目が相違する区分された土地として利用されていることから、甲土地及び乙土地は、上記評価通達7が例外的に定める複数地目からなる一体として利用されている一団の土地等に該当するものとは認められないため、評価上の区分については、甲土地及び乙土地をそれぞれ地目別に区分して評価することが相当である。
そうすると、甲土地は、広大地通達に定める広大地に該当すると認められるため、当該通達を適用して評価することが相当であるが、乙土地は、■■■が定める開発許可を必要としない面積である1,000㎡未満であるから、広大地通達の適用は認められない。
したがって、評価額は、甲土地は38,908,797円、乙土地は28,692,048円となる。
4.請求人の主張
都市計画法第4条第12項に規定する開発行為の申請は地目・用途に関係なく1000㎡以上であればできることとなっており、開発行為を行うとした場合、一般的には、地目や用途が異なるとしても、同一所有者で地続きであれば当然ながら併せて開発行為を行うはずであるから、このような土地は、地目・用途に関係なく一団の土地としてその面積が1000㎡以上あれば広大地通達を適用すべきである。
甲土地は、畑で自用地、乙土地は、宅地で貸家建付け地であるが、各土地は同一所有者で地続きの一団の土地であり、面積は併せて1000㎡以上となるから甲土地及び乙土地を一団の土地として広大地の評価をすべきである。
したがって、甲土地及び乙土地を一団の土地として評価すると、その評価額は51,662,291円となる。
5.審判所の判断
イ.法令解釈
(イ)評価通達7は、土地の評価は地目別にすることを原則とし、ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価する旨定めている。
ロ 前記の事実を上記イに照らして判断すると、次のとおりである。
(イ)前記のとおり、本件相続開始時において、甲土地の地目は畑で、乙土地の地目は宅地であり、甲土地と乙土地は地続きであるものの、地目は異なっており、また、甲土地は自用の農地として、乙土地は貨家建付地としてそれぞれが別個に利用されており、一体として利用されていた事実は認められない。
そうすると、甲土地及び乙土地の評価に当たっては、評価通達7のただし書きに定める特例的な取り扱いをする余地はなく、土地の価額は、地目の別に評価するという原則を適用して、甲土地及び乙土地は、それぞれ別に評価するのが相当である。したがって、甲土地と乙土地を併せて一団の土地として評価することはできない。
また、広大地に該当するというためには、評価対象地が、当該土地の属する地域において開発行為を行うために各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上の宅地であることを要するところ、乙土地の面積は543.41㎡であり、■■■の市街化区域内において開発許可を必要としない面積である1,000㎡未満であることから、乙土地について広大地通達を適用することはできない。
※甲土地…自用地
乙土地…貸家建付地
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※コメント
本件において裁決書に「請求人らは、甲土地及び乙土地を一団の土地として、また丙土地について広大地通達を適用し、さらに乙土地及び丙土地については、評価通達26(貸家建付け地)を適用して申告した」とあります。
財産評価基本通達7(土地の評価上の区分)には、「土地の価額は…地目の別に評価する。ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする」とあります。
請求人らは甲土地及び乙土地は隣接する一団の土地なので開発行為をするとすれば上記の内容を踏まえて広大地通達を適用したようですが、審判所は「甲土地と乙土地は地続き広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。であるものの、地目は異なっており、また、甲土地は自用の農地として、乙土地は貸家建付け地としてそれぞれが別個に使用されており一体として利用されていた事実は認められないと断定し、「甲土地と乙土地を併せて一団の土地として評価することはできない」としました。
個々の事実を積み上げて地目を出すことはとても必要かと思います。
特に一体として利用されていたか否かは重要ですね。
以上
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)