良寛詩集より
あわただしい日々の中にあって、 ふと良寛詩集に目をやる時があります。
この時は、時を忘れてその情景を眼に浮かべてみたりしてしまいます。
この時こそ時代を超えて、時を忘れてしまいます。
終日望烟村 （終日 烟村を望み）
展転乞食之 （展転 乞食し之く。）
日夕山路遠 （日夕れて 山路遠く）
烈風欲断髭 （烈風 髭を断たんと欲す。）
衲衣半如烟 （衲衣 なかば烟のごとく）
木鉢古更奇 （木鉢 古びて さらに奇なり。）
未厭飢寒苦 （いまだ厭わず 飢寒の苦を）
古来多如斯 （古来 多くはかくのごとし。）
ひねもすあなたこなたの村々を望みながら、あちこちを托鉢しつづける。
日が傾いてからの帰りの山路は遠く、烈しい風が髭をたち切りそうだ。
衣は着古してぼろけかかり、木鉢は古びていよいよ変てこになった。
飢えも寒さも決していとわぬ。昔から出家僧の定めはおおかたこんなものだ。