マンション適地か!
マンション適地と認められるので、広大地の評価を適用することはできないとした事例
(東裁(諸)平17第42号 平成17年9月16日裁決)
1.本件各土地の概要
(1)A土地
本件土地の地積は、1402.12㎡である。 駅から約750mに位置する。本件A土地は、ほぼ長方形の土地である。本件土地の属する用途地域は、第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。本件A土地の存する地域は、マンションが数多く建ち並ぶほか、低層の共同住宅(アパート)や戸建住宅も建ち並ぶ地域で、本件A土地と同程度の画地規模の築浅及び建築中のマンション敷地が多数ある。
(2)B土地
本件B土地の地積は、1,785.47㎡である。駅から440mに位置する。本件A土地は、ほぼ長方形の土地である。本件土地の属する用途地域は第1種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。本件B土地の存する地域は、マンションが数多く建ち並ぶほか、低層の共同住宅(アパート)や戸建住宅も建ち並ぶ地域で、本件B土地と同程度の画地規模の築浅及び建築中のマンション敷地が多数ある。
※A土地、B土地ともに本件相続開始日における利用状況は、いずれも駐車場である。
(3)C土地
本件C土地の地積は3,230.47㎡である。本件C土地は〇〇から約640mに位置するやや不整形な土地である。本件C土地と隣接地を併せた土地1367.65㎡を敷地面積として地上12階建のマンションを昭和57年に建築申請されている。(延1878.28㎡)
(4)D土地
本件D土地の地積は1281.88㎡である。本件D土地は〇〇〇から700mに位置するコの字形の土地である。本件D土地はコインパーキング、洗車機置場等に使用されている。
2,争点
本件各土地は、広大地に該当するか。
3.請求人らの主張
(イ)広大地の評価
次の理由により広大地の評価を適用すべきである。
A 本件AないしD土地が所在する地域には、住宅地図等によっても分かるとおり、現在においても一戸建ての住宅が数多く見受けられる。
B 本件AないしD土地について、開発行為をした場合に公共公益的施設用地の負担が必要か否かを判断する時期は、本件相続開始日である。
したがって、たとえ本件相続開始日後に、本件A土地を取得した譲受人が同土地上にマンションを建築したからといって、相続開始後の後発的な事象を相続開始の時点に遡及して評価要素として反映させ、公共公益的施設用地の負担がないとの判断をすべきではない。
4.原処分庁
原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
(イ)広大地の評価
A 本件AないしD土地の地積は、近隣地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大ではあるものの、①本件AないしD土地の容積率は、前面道路の幅員からみても、指定容積率200パーセントが適用できること、②昭和51年以後の本件近隣地域において、1,000㎡を超える土地に係る開発行為は、いずれもマンションの建築を目的とするものであり、また、被相続人が生前に売却した1,000㎡を超える土地及び請求人が相続開始後に売却した1,000㎡を超える土地について、いずれもその売却後にマンションが建築されていること、③被相続人も自らが所有する土地上にマンションを建築していることからすると、本件AないしD土地について経済的に最も合理的であると認められる利用方法は、マンションを建築することを目的とするものと解され、その場合に、公共公益的施設用地の負担が認められなかったことからすれば、本件AないしD土地については、広大地の評価を適用することはできず、奥行価格補正率を適用して評価するのが相当である。
B 原処分庁は、上記Aのとおり昭和51年以降の開発行為等の各事実から本件近隣地域における1,000㎡を超える土地の利用状況がマンションの建築用地に移行していると判断したのであり、かつ、上記Aの判断に誤りがない証左の一つとして、本件相続開始日後、請求人が本件A土地を売却した後の同土地の上にマンションが建築された事実を掲げたのであって、同土地の売却後のマンション建築という事実のみをとらえて本件相続開始日に遡及させて判断したものではない。
5.審判所の判断
(イ)本件AないしD土地に係る広大地の評価の適用の可否について、上記(イ)の各事実を判断すると、次のとおりである。
A 本件所在地域は、〇〇〇から300mないし900mの徒歩圏内にあり、交通接近性に優れ、〇〇〇の中では道路付けが良い閑静な住宅地で、マンションが数多く建ち並ぶほか、低層の共同住宅(アパート)や戸建住宅も建ち並び、本件AないしD土地と同程度の画地規模の築浅及び建築中のマンション敷地が多数ある状況にある。
B このような状況において、①昭和57年の被相続人の譲渡資産(土地)の上には譲渡後にマンションが建築されていること、②昭和57年の被相続人の譲渡にかかる買換資産はマンション(〇〇〇)であること、③本件近隣地域において、地積が1,000㎡を超える土地に係る平成10年から平成14年までの期間の売買取引事例地は、その売買取引後の当該取引事例地の上に建築された建築物が、いずれもマンションであること、④本件相続開始日後、請求人が譲渡した本件A土地には、譲渡後マンションが建築されていること、⑤本件所在地域において、地積が1,000㎡を超える土地に係る昭和51年以降の都市計画法第29条に規定する開発行為の許可を受けるための申請は、いずれもマンションの建築のためにされた開発行為の申請であり、その場合に公共公益的施設用地の負担は認められなかったこと、⑥本件所在地域において、地積が1,000㎡を超える土地に係る昭和51年から平成15年までの建築確認申請によれば、そのほとんどがマンションの建築のためであり、戸建住宅の敷地は1件のみで、しかもその申請は本件相続開始日の22年前である昭和54年であること、⑦本件C土地が接面する各〇〇及びその〇〇に接続する〇〇に囲まれた区画内の土地が、本件C土地を除きマンション敷地であることからすれば、本件所在地域の土地、殊に地積が1,000㎡を超える土地は、マンション適地と認めるのが相当である。
C したがって、本件AないしD土地は、マンション適地と認められ、広大地の評価を適用することはできないことから、奥行価格補正率を適用して評価するのが相当である。
※奥行価格補正率を適用することについては、現行法では適用しませんので、ご注意ください。
(ニ)請求人の主張について
A 請求人は、本件AないしD土地について、広大地の評価を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、本件AないしD土地は、上記のとおり、明らかにマンション適地と認められ、その場合に開発道路等の潰れ地は生じず、公共公益的施設用地の負担はほとんど生じない(本件D土地のみに負担が認められるが僅少である。)ことから、戸建住宅分譲用地として開発道路等の公共公益的施設用地の負担を想定し、広大地の評価を適用することはできない。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
B 請求人は、上記において、本件相続開始日後に本件A土地を取得した譲受人が、同土地上にマンション等を建築したからといって、相続開始後の後発的な事象を、相続開始の時点に遡及して評価要素として反映させ、公共公益的施設用地の負担が必要ないとの判断をすべきではない旨主張する。
しかしながら、本件AないしD土地は、上記のとおり、明らかにマンション適地と認められるところ、マンション適地であるとの判断の証左の一つとして、本件A土地の売却後のマンション建築という事実が掲げられるのであって、当該事実のみを本件相続開始日に遡及させてマンション適地と判断したものではない。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
以 上
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コメント
評基通24-4では、広大地は、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものを除く」とあります。つまり、マンション適地等に該当する土地は広大地として認められません。
広大地の評価において、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」の判断基準について国税庁HPで以下のように述べています。
広大地の評価における「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」の判断
【照会要旨】
広大地の評価において、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」とは具体的にどのようなものをいうのでしょうか。
【回答要旨】
評価対象地が、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」(中高層の集合住宅等の敷地用地として使用するのが最有効使用と認められるもの)かどうかの判断については、その宅地の存する地域の標準的使用の状況を参考とすることになります。
しかし、戸建住宅と中高層の集合住宅等が混在する地域(主に都市計画により指定された容積率(指定容積率)が200%以下の地域)にある場合には、最有効使用の判定が困難な場合もあることから、例えば、次のように「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」に該当すると判断できる場合を除いて、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」には該当しないこととして差し支えありません。
1.その地域における用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性(社会的・経済的・行政的見地)から判断して中高層の集合住宅等の敷地用地に適していると認められる場合
2.その地域に現に中高層の集合住宅等が建てられており、また現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまり中高層の集合住宅等の敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその以降の程度が進んでいる場合
一方、指定容積率が300%以上の地域内にある場合には、戸建住宅の敷地用地として利用するよりも中高層の集合住宅等の敷地用地として利用する方が最有効使用と判断される場合が多いことから、原則として「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」に該当することになります。
地域によっては、指定容積率が300%以上でありながら、戸建住宅が多く存在する地域もありますが、このような地域は指定容積率を十分に活用しておらず、①将来的にその戸建住宅を取り壊したとすれば、中高層の集合住宅等が建築されるものと認められる地域か、あるいは、②例えば道路の幅員(参考)などの何らかの事情により指定容積率を活用することができない地域であると考えられます。したがって、②のような例外的な場合を除き、評価対象地が存する地域の指定容積率が300%以上である場合には、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」と判断することになります。
本件において審判所が以下のように判断し、マンション適地に当たるので広大地ではありませんと述べています。
まず、①被相続人が自ら所有する土地上にマンションを建てているのは本件AないしD土地についてマンションを建てることが経済的に最も合理的であると認めているからだ、と解される。
②本件相続開始日後、本件A土地には譲渡後マンションが建築されていること
③本件所在地域において1000㎡以上の土地が昭和51年から平成15年までの建築確認申請においてそのほとんどがマンションの建築であって、戸建住宅は1件のみであること。
これ以外にも掲げておられますが、以上3つでほぼマンション適地と判断できると思います。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)