広大地に該当するか否か
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地を含む周辺地域の開発において、路地状部分を有する土地を組み合わせた戸建分譲は一般的に行われているので、本件土地は、広大地には該当しないとした事例(東裁(諸)平17第163号 平成18年4月27日裁決)
本件土地の概要
被相続人の自宅の敷地として使用されている本件土地744.5㎡のうち被相続人の所有権及び共有持ち分に対応する地積は497.5㎡である。
本件土地は、駅の1.3kmに位置する台形の土地である。
本件土地の存する地域は、戸建住宅が多数建ち並ぶほか、低層の共同住宅(アパート)が散見される閑静な住宅地域である。本件土地が属する用途地域は、第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)である。
争点
本件土地は、広大地に該当するか否か
請求人らの主張
原処分は、次の理由により違法であるから、本件各通知処分についてはいずれもその全部の、本件各更正処分等についてはいずれもその一部の取消を求める。
イ 本件各通知処分及び本件各更正処分
本件土地は、次の理由により広大地と認められるから、本件土地のうち被相続人が所有する部分の価額は、評価基本通達24-4の定めを適用し、75,895,365円とすべきところ、本件各通知処分及び本件各更正処分はこれをしていないから違法である。
(イ)本件土地は、平成16年6月29日付国税庁資産評価企画官情報第2号及び同17年6月17日付同情報第1号に記載されている広大地の判定基準である①評価基本通達22-2に定める大規模工場用地に該当しないこと、②容積率が100%未満でマンション等の敷地に適さないこと、③その地域における標準的な宅地に比して著しく地積が広大な土地であること、④開発行為を行った場合には、公共公益的施設用地(開発道路部分)の負担が必要となる土地であること等のすべてに該当するから、広大地である。
原処分庁の主張
原処分は、次の理由によりいずれも適法であるから、本件審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各通知処分及び本件各更正処分
(イ)請求人らは、本件土地について開発行為を行うとした場合には、別紙3の1図のように公共公益的施設用地である開発道路の負担が必要となる旨主張するが、別紙3の2図のとおり、上記開発道路を同図のA土地及びB土地のそれぞれの敷地の一部(路地状部分)とすれば、これを負担する必要がなく、その結果、評価基本通達24-4の算式中の「公共公益的施設用地となる部分の地積」が存在しないこととなるから、当該通達の適用はない。
(ロ)そして、本件土地のうち被相続人の所有する部分を、評価基本通達の定めにより評価した価額は82,527,770円であり、請求人らの本件相続に係る相続税の納付すべき税額を計算すると、別表1の「更正処分等」欄の額と同額となるから、本件各通知処分及び本件各更正処分はいずれも適法である。
審判所の判断
(1)本件各更正処分について
イ ■■■の担当職員は、当審判所に対し、要旨次の通り答述している。
(イ)本件土地のような土地について戸建分譲を行う場合は、建ぺい率及び容積率の計算上のメリット等があるから、あえて路地状部分を開発道路とせず、建物敷地の一部とすることが一般的な形態である。
なお、本件土地を別紙3の2図のとおり、路地状部分を有する土地を組み合わせることによって戸建分譲する場合は、開発道路を設置しないから、開発行為に該当しないので開発申請を要しない。
(ロ)■■■としても、良好な街づくりの視点からみれば、道路を作るようにとの要望はもっているが、別紙3の2図のように路地状部分を有する土地を組み合わせ、道路を作らないことが都市計画法等に反していない限り、行政サイドからの指導事項は見当たらない。
ロ 上記の各事実並びに上記の答述を判断すると、①本件土地は、別紙3の2図のとおり、路地状部分を有する土地を組み合わせることによって、道路等の公共公益的施設用地の負担を必要とせず、標準的な地積の宅地6区画に分割できること、②本件土地を別紙3の2図のとおりに分割することは、都市計画法等の法令に反していないこと、③本件土地を別紙3の2図のとおり分割すると、そのすべてを宅地として有効に利用することが可能である上、建ぺい率及び容積率の計算上有利であって、別紙3の1図の道路を設置する土地利用に比して経済的合理性があること、④本件土地を含む周辺地域の開発において、路地状部分を有する土地を組み合わせた戸建分譲は、一般的に行われていることからすれば、本件土地は、広大地に該当しない。
したがって、本件土地を評価基本通達24-4の定めを適用せず評価した別表3の⑤の原処分庁の価額は相当である。
ハ 請求人らの主張について
(イ)請求人らは、本件土地は、広大地の判定基準である①評価基本通達22-2に定める大規模工業用地に該当しないこと、②容積率が100%未満でマンション等の敷地に適さないこと、③その地域における標準的な宅地に比して著しく地積が広大な土地であること、④開発行為を行うとした場合において、公共公益的施設用地である道路等の負担が必要となる土地であること等のすべてに該当するから、広大地である旨主張する。
しかしながら、本件土地が存する地域においては、道路の負担を必要としない路地状部分を有する土地の組合せによる戸建分譲が一般的に行われており、本件土地についても同様の形態での分譲が可能であることからすれば、本件土地は、開発行為を行うとした場合において、公共公益的施設用地の負担が必要となる土地には該当しないので広大地とは認められない。
したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ロ)請求人らは、上記のとおり、評価基本通達24-4の(1)のかっこ書きにおいて定義している「経済的に最も合理的であると認められる開発行為を行うとした場合」とは、開発行為を行わなくとも有効活用が可能な土地であれば、広大地に該当しないとする趣旨ではない旨主張する。
しかしながら、評価基本通達24-4の(1)のかっこ書きの「経済的に最も合理的な開発行為を行うとした場合」とは、経済的合理性の観点から、公共公益的施設用地となる部分の地積が必要最小限のものとなる開発行為を想定することを定めたものであり、本件土地のような道路等の公共公益的施設用地の負担を必要としなくとも、標準的な地積の宅地に分割することが可能である土地についてまで、あえて公共公益的施設用地の負担を必要とする開発行為を想定することを定めているものではない。
したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ハ)また、請求人らは、仮に路地状部分の有効活用が可能であるとしても、評価基本通達24-4の定めは、宅地としての利用を前提としており、物理的に建物が建てられない路地状部分の駐車場としての利用を合理的とする趣旨ではない旨主張する。
しかしながら、路地状部分は、物理的に建物を建てられない土地であるとしても、その路地状部分を有する土地の一部として、その土地上に建物を建築する場合の建ぺい率及び容積率の算定において有効に利用されることから、宅地であると認められる。
そして、整形な宅地であっても、建物が建てられていない部分を駐車場として有効利用することは一般的に行われていることから、路地状部分の駐車場としての利用が不合理なものとは認められない。
したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
ホ 本件各更正処分について
以上の事から、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、また、本件相続に係る相続税の課税価格に算入される本件土地のうち被相続人の所有する部分の価額は、別表3の⑤のとおりとなり、これに基づき当審判所において、本件相続に係る請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、いずれも本件各更正処分の額と同額となるから、本件各更正処分はいずれも適法である。
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コメント
財産評価通達24-4(広大地の評価)では、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」を広大地としています。
ただし、路地状開発により戸建住宅分譲を行うことが経済的に最も合理的である開発の場合には、開発道路(公共公益的施設用地)を負担する必要がないため、広大地の適用はできません。
国税不服審判所の裁決、国税庁のHPには、「路地状開発を行うことが合理的と認められる」か否かは、次の①~④を総合的に勘案して判断しています。
① 路地状部分を有する画地を設けることによって、評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積」に分割できること
② その開発が都市計画法、建築基準法、都道府県等の条例等の法令に反しないこと
③ 容積率および建ぺい率の計算上有利であること
④ 評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行われていること
本件において市町村の行政庁が『■■■としても、良好な街づくりの視点からみれば、道路を作るようにとの要望はもっているが、路地状部分を有する土地を組み合わせ、道路を作らないことが都市計画法等に反しない限り、行政サイドからの指導事項は見当たらない』と言い切っています。上記の路地状開発の要件④を盾にその地域を拡大していけば路地状開発が可能な土地はすべて広大地ではないということになってしまい、良好な整然とした街づくりに影響を及ぼす結果にならないように考えて頂きたいと思います。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)