広大地補正率の適用される土地の面積の下限について
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
公共広場として貸し付けられている本件土地(8,312.43㎡)は、評価通達に基づく評価額に0.7を乗じた価額ではなく、5000㎡を超える土地であっても広大地補正率の下限0.35を適用するのが相当であるとした事例(福裁(諸)平21第30号 平成22年3月30日裁決)
本件第一土地の概要
本件第一土地の地積は、8,312.43㎡で、公共広場として貸し付けられ、そのことにより賃料を得ている土地である。
倍率地域に存する土地で、その倍率は1.1倍である。
又、本件相続開始日における地目は、雑種地である。
争点
本件第一土地の価額を評価するに当たって、評価通達の定めによらないことが正当と認められる特別な事情があるか。
原処分庁の主張
本件第一土地は、評価通達の定めに従って評価しており相当である。
なお本件第一土地は評価通達24-4(以下広大地通達という)に定める広大地には該当しない。
請求人の主張
本件第一土地の価額については、評価通達に定められた評価方法によって評価した価額に0.7を乗じた額が相当である
審判所の判断
(イ)法令解釈等
A 評価通達に定める評価方法の合理性について
評価通達に定める評価方法を画一的に適用したのでは、適正な時価が求められず、著しく課税の公平を欠くことが明らかであるなど、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情がある場合を除き、評価通達の定めに基づき評価した価額をもって相続税法第22条に規定する時価とするのが相当である。
B 地積が5,000㎡を超える広大地の評価について
広大地通達において、広大地として評価する土地は、5,000㎡以下の地積とするとされているところ、地積が5,000㎡を超える土地であっても、公共公益的施設用地の負担が必要な開発行為を行わなければならない場合には、広大地補正率の下限である0.35を適用して評価することは差し支えない旨取り扱われているが、この取り扱いは当審判所においても相当と判断する(以下、この取り扱いと広大地通達を併せて「広大地通達等」という。)。
(ロ)本件第一土地について
(ⅰ)原処分庁は、本件更正処分において本件第一土地の価額を評価するに当たり、広大地通達等を適用せずに別表6-1のとおり■■■と評価しているところ、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、本件第一土地は、①地積が8,312.43㎡とその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大であり、②開発行為を行うとした場合に、その形状等から判断して公共公益的施設用地の負担が必要と認められ、③評価通達22-2に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものには該当しないと認められることから、広大地通達等を適用して評価することとなる。
(ⅱ)そして、この場合の広大地補正率については、地積が5,000㎡を超える土地であっても、広大地通達に定める広大地補正率の下限である0.35を適用して差し支えないとされていることから、0.35を適用するのが相当である。
(ⅲ)そうすると、広大地通達等を適用して評価した本件第一土地の価額は、別表6-2のとおり■■■となり、前記のとおり、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情がある場合でない限り、この金額をもって本件第一土地の価額とすることが相当である。
B 請求人は、本件第一土地の価額については、評価通達に定められた評価方法によって評価した価額に0.7を乗じた額が相当である旨主張する。
(ⅰ)しかしながら、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、本件第一土地は、請求人が本件被相続人から贈与を受けた平成16年10月10日において、■■へ公共広場として貸し付けられ、そのことにより賃料を得ており、そして、地積が8,312.43㎡とその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大であるものの、これらのことをもって本件第一土地の価額を評価通達の定めによらないことが正当であると認めることはできず、また、評価通達に基づく評価額に0.7を乗じた額が本件第一土地の客観的交換価値を示しているとは認められない。そうすると、本件第一土地の価額を評価するに当たって、評価通達の定めによらないことが正当と認められる特別な事情があるとは認められないことから、請求人の主張には理由がない。
C 本件第一土地の価額については、前記Bのとおり、同価値を評価するに当たって、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情があるとは認められないことから、別表6-2のとおり■■■となる。
別表6-2
地積(㎡) | 固定資産税の路線価 (円) | 倍率 | 持分 | 広大地補正率 | 賃借権割合 | 評価額(円) |
8,312.43 | 1.1 | 64分の4 | 0.35 | 0.05 |
(注)固定資産税の路線価は、本件第一土地が接する路線で最も高い路線価の1㎡当たりの金額である。
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コメント
相続財産の評価は、基本的には評価通達の定めによることになりますが、評価通達に定める評価方法を画一的に適用すると、適正な時価が求められず著しく課税の公平を欠く特別な事情がある場合には、評価通達の定めによらない方法をもって求めた価格を時価とすることができるとあります。
本件では、本件土地は、8,312.43㎡と規模の大きな土地であるため、評価通達に基づいて求めた評価額に0.7を乗じた価額をもって時価であるとの請求人の主張に対して、審判所は、広大地となる要件を備えた土地であれば、5000㎡を超える土地であっても、広大地補正率の下限である0.35を適用して評価額を求めてもいいですよ、と言っています。
本件は、原処分庁は、評価通達24-4<広大地通達>を適用せずに評価していますが、審判所は以下のように結論づけました。
『原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、本件第一土地は、①地積が8,312.43㎡とその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大であり、②開発行為を行うとした場合に、その形状等から判断して公共公益的施設用地の負担が必要と認められ、③評価通達22-2に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものには該当しないと認められることから、広大地通達等を適用して評価することとなる。
(ⅱ)そして、この場合の広大地補正率については、地積が5,000㎡を超える土地であっても、広大地通達に定める広大地補正率の下限である0.35を適用して差し支えないとされていることから、0.35を適用するのが相当である。』
そうすると、本件第一土地の価額については、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情があるとは認められない、としました。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)