その地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大か!!
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
その地域においては約7割が工場・倉庫敷地及び事務所敷地などであるから、本件土地は、その地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大とは認められないので、広大地には該当しないとした事例
(熊裁(諸)平23第5号 平成23年12月21日裁決)
1.本件土地の概要
本件土地の地積は、1,138㎡の雑種地である。
幅員約6mの道路に接面するほぼ長方形の土地で、月ぎめ駐車場として利用されている。
2.争点
本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当するか否か。
3.原処分庁の主張
(1)①■■■の大半は、工場、倉庫敷地、店舗敷地、事務所敷地、共同住宅敷地及び駐車場として使用されていること、
②本件土地の付近で用途地域を同じくする本件基準地の地積は4,452㎡であること、
③■■■において本件相続開始日前20年間に開発許可を受けたものは、平成元年に事務所及び倉庫、平成5年に貸工場及び貸事務所、平成13年に共同住宅2区画及び平成17年に共同住宅2棟であること、
④■■■において、工場・倉庫敷地、店舗敷地、事務所敷地、共同住宅敷地及び駐車場として使用されている区画の平均地積は、1,519.44㎡であることが認められる。
これらのことを総合勘案すると、■■■における「標準的な宅地の地積」は、約1,519㎡程度であるとみることが合理的であると認められ、本件土地の地積は、「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大な土地とは認められない。
(2)したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。
4.請求人の主張
(1)■■■■、■■及び■■においては、本件相続開始日前10年間の開発において、■■■■内で戸建住宅5戸が建てられている事実が認められるなど、当該地域は、工場・倉庫敷地、店舗敷地及び事務所敷地等が一般的な使用ではなく、様々な建物の敷地が混在している地域であることから、当該地域の存する全ての土地の合計面積から導き出される平均地積をもってその地域の標準的な宅地の地積とすることが合理的である。
そうすると、対象宅地数55件(内居宅数28件)、合計地積数40,182.37㎡、平均地積730.59㎡が確認されており、これを■■■■、■■及び■■における標準的な宅地の地積とすることが合理的であるから、本件土地の地積は、「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大である。
また、住宅関係業者によると、この地域は、戸建住宅の開発がされる地域であることから、本件土地を経済的に最も合理的な開発行為を行うとした場合には、戸建住宅分譲用地であり、本件土地に都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要と認められる。
(2)したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当する。
5.審判所の判断
イ 広大地通達にいう「その地域」の範囲について
本件A水路東側地域を、利用状況、環境等がおおむね同一と認められるひとまとまりの地域として、広大地通達にいう「その地域」と認めるのが相当である。
ロ「標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大か」について
本件A水路東側地域は、一部は戸建住宅敷地及び店舗付住宅敷地として利用されているものの、別表2及び別図2のとおり、約70%が工場・倉庫敷地、事務所敷地及び駐車場に利用されているから、それらを当該地域の標準的な利用とみるのが相当であり、それらの地積の平均は、別表3のとおり1,194.99㎡であるから、当該地域の「標準的な宅地の地積」は、1,195㎡程度と認めるのが相当である。
そうすると、本件土地の地積は1,138㎡であるから、本件土地は、本件A水路東側地域の「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大な土地であるとはいえない。
ハ したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地には該当しないというべきである。
6.請求人の主張について
(イ)請求人は、■■■、■■及び■■においては、本件相続開始日前10年間の開発において、■■■■内で戸建住宅5戸が建てられていることから、当該地域は、工場・倉庫敷地、店舗敷地及び事務所敷地等が一般的な使用ではなく、様々な建物の敷地が混在している地域であると認められ、当該地域に存する全ての土地の合計面積から導き出される平均地積をもって広大地通達にいう「その地域」の「標準的な宅地の地積」とすることが合理的であり、また、住宅関係業者によると、この地域は、戸建住宅の開発がされる地域であることから、本件土地を経済的に最も合理的な開発行為を行うとした場合は、戸建住宅分譲用地であり、本件土地に開発行為を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要と認められる旨主張する。
(ロ)しかしながら、広大地通達にいう「その地域」は本件A水路東側地域であり、当該地域における標準的な宅地の利用状況は、約70%が工場・倉庫敷地、事務所敷地及び駐車場であるから、これらの地積の平均が「標準的な宅地の地積」であり、本件土地は、「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大な土地とはいえず、公共公益的施設用地の負担が必要である旨の請求人の主張は、広大地通達に定める広大地という前提を欠くものである。
したがって、請求人の主張には理由がない。
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コメント
広大地であるか否かを判断するにあたり、本件は「その地域における標準的な宅地の地積」がいくらであるかが問われた事例といえます。
「その地域」とは利用状況、環境等がおおむね同一と認められるひとまとまりの地域として「その地域」を定めますが、本件においては下記のように審判所は判断しました。
『本件A水路東側地域は、一部は戸建住宅敷地及び店舗付住宅敷地として利用されているものの、別表2及び別図2のとおり、約70%が工場・倉庫敷地、事務所敷地及び駐車場に利用されているから、それらを当該地域の標準的な利用とみるのが相当であり、それらの地積の平均は、別表3のとおり1,194.99㎡であるから、当該地域の「標準的な宅地の地積」は、1,195㎡程度と認めるのが相当である。
そうすると、本件土地の地積は1,138㎡であるから、本件土地は、本件A水路東側地域の「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大な土地であるとはいえない。
ハ したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地には該当しないというべきである。』
別表3をみていただければ分かりますように、これだけの物件の所在地番・面積等を調査する手間暇は相当なもので、通常では出来ません。
それは手間・暇がかかりすぎるからです。
争いとはここまでするのだという証になると思いますので、掲載することにしました。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)