市街化調整区域内の土地と広大地

2019年6月11日

広大地は、一昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。

本件土地は、市街化調整区域内に存する雑種地であるが、市街化調整区域内の開発が許可される条例指定区域内に所在しない土地に該当するので、開発行為を行うことができない。従って広大地に該当しないとした事例

1.本件各土地の概要

(1)本件A土地

本件A土地の地積は、1814㎡の雑種地である。広大地に該当しないとした事例
本件土地は、資材置き場を目的とする賃貸契約をし、賃貸していた
本件A土地に接する道路の向かいは市街化区域となる土地で、市街化調整区域にも宅地が点在している地域である。
本件土地の固定資産税課税上の現況地目は、宅地比準雑種地である。
本件土地の属する地域は、市街化調整区域内に所在する。

(2)本件B土地

本件B土地の地積は、961㎡の雑種地である。
本件土地は、駐車場又は資材置き場を目的とする賃貸借契約を締結し、賃貸していた。
本件土地の固定資産税課税上の現況地目は宅地比準雑種地である。
本件土地の属する地域は、市街化調整区域内に所在する。

2.争点

本件各土地は、評価基本通達24-4に定める広大地として評価すべきか否か。

3.原処分庁の主張

イ 本件各土地は、市街化調整区域内で、また、市の条例により許可を受けて開発行為が可能と定められた区域外に所在する雑種地であり、かつ、平成12年の改正前の都市計画法第43条に規定する旧既存宅地(以下「旧既存宅地」という。)にも該当しない。
そうすると、戸建住宅建設用地としての開発を行うことができない土地であるから広大地として評価することはできない。

ロ 本件各土地は、建物の建築が全くできない雑種地の「しんしゃく割合50%」を適用した金額によって評価するのが相当である。

ハ そして、本件各土地の周辺状況及び周辺地域との位置関係からすると、付近の宅地の価額を基として評価するのが相当である。

4.請求人らの主張

イ 以下の理由から、本件各土地は評価基本通達24-4に定める広大地に該当する。

(イ)広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法に規定する開発を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものとされているが、必ずしも実際に開発行為が可能か否かは要件とされていない。

したがって、広大地の適用については、現実に開発できるかどうかで判断すべきではない。

(ロ)本件各土地を、宅地価額から比準して評価する方式(以下「宅地比準方式」という。)に基づいて評価するのであれば、宅地の評価方法の手法である広大地の評価方法もまた適用されるべきである。

5.審判所の判断

(1)認定事実

イ 本件各土地の法令等による制限は次のとおりである。

(イ)本件各土地は、市街化調整区域内に所在している。

(ロ)本件各土地は、■■■が平成18年4月1日付で施行した「都市計画法による市街化調整区域における開発許可等の基準に関する条例」(以下「本件条例」という。)第4条《法第34条第11号の規定による条例で指定する土地の区域》に規定する開発行為が可能である「条例指定区域」(以下「条例指定区域」という。)には所在しない。

(ハ)また、本件各土地は平成9年3月に「■■■地域整備推進事業」の予定区域に指定されており、本件条例第3条《法第34条第11号の規定による条例で指定する土地の区域の申出》第2項(1)に規定する■■■が定める計画的な市街地整備の見通しがある区域(以下「特定保留区域」という。)で、開発の申出ができない区域に所在する。

(ニ)本件各土地は、一定の条件を満たせば開発許可を受けることなく開発することが可能な「旧既存宅地」に該当しない。

(2)本件各土地の算定基準

イ 評価基本通達82において、雑種地の評価は、原則としてその雑種地と状況が類似する付近の土地の評価額に比準して行う旨定められているところ、本件各土地及びその周囲の状況は、
①本件各土地が市街化区域に近接しており、本件各土地が所在する市街化調整区域内にも宅地が点在すること、
②本件各土地は宅地と同様の外観を呈していること及び
③■■■が本件各土地の固定資産税の課税に当たり、宅地比準雑種地として評価していることから判断すると、
本件各土地の評価に当たっては、宅地比準方式により評価するのが相当であると認められる。

(3)広大地として評価することの可否

イ 評価通達24-4の趣旨にかんがみれば、開発行為を行うことのできない土地については、開発行為を行なえないことについて何らかの斟酌を加えるにしても、広大地と評価して減額の補正を行う必要はないから、評価基本通達24-4の適用を認める余地はない。

ロ 本件各土地は、市街化調整区域に所在する雑種地であり、本件条例の規定によれば、開発することができる条例指定区域に指定されておらず、更に、特定保留区域に編入されていて開発行為ができない土地であると認められる。

したがって、本件各土地に開発行為を行うことを前提とした広大地としての評価方法を適用することは認められず、請求人らの主張には理由がない。

ハ 本件各土地は旧既存宅地でないことは明らかであるから、これを既存宅地であると仮定しての主張は採用できない。

(4)建物の建築制限に係るしんしゃく割合について

上記のとおり、評価基本通達82において、雑種地の評価は、原則としてその雑種地と状況が類似する付近の土地の評価額に比準して行う旨定められているところ、市街化調整区域内の雑種地の評価について、宅地比準方式により評価する場合、市街化調整区域内の雑種地の評価について、宅地比準方式により評価する場合、課税実務上、建物の建築制限に係るしんしゃく割合(減価率)を、
①建物の建築が全くできない場合には50%、
②店舗等の建築が可能な幹線道路沿いや市街化区域との境界付近の地域に所在し、家屋の構造、用途等に制限を受ける場合には30%、
③②と同様の地域に所在し、宅地価格と同等の取引実態が認められる場合には0%とすることとして取り扱われており、この取り扱いは、当審判所も相当であると認められる。

これを本件についてみると、本件各土地は、市街化調整区域内に所在し、建物の建築ができない土地であることから、しんしゃく割合を①の50%として減額するのが相当である。

以  上

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コメント

本件において、審判所は、「広大地として評価することの可否」において下記のように述べています。

『イ 評価通達24-4の趣旨にかんがみれば、開発行為を行うことのできない土地については、開発行為を行なえないことについて何らかの斟酌を加えるにしても、広大地と評価して減額の補正を行う必要はないから、評価基本通達24-4の適用を認める余地はない。

ロ そして、本件各土地は、市街化調整区域に所在する雑種地であり、本件条例の規定によれば、開発することができる条例指定区域に指定されておらず、更に、特定保留区域に編入されていて開発行為ができない土地であると認められる。

したがって、本件各土地に開発行為を行うことを前提とした広大地としての評価方法を適用することは認められず、請求人らの主張には理由がない。』

開発ができない土地は広大地と評価して減額の補正をする必要がないので広大地とは認められない、と言っています。

以上から言えますのは、市街化調整区域内の開発が許可される条例指定区域内に所在する土地であるか否かを市町村町の開発指導課等にて確認し、本件土地が開発が可能か否かを確認することが大切です。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/