既に開発を了しているか否か

2019年6月11日

既に開発を了しているか否かについて争いになった裁決事例がありますので掲載します。

平成23年4月21日裁決

本件甲土地は、既に開発を了した共同住宅の敷地として有効利用されているので、広大地を否認した事例です。

あらまし

  1. 本件甲土地は、面積742.98㎡、間口28m、奥行26mの土地で、相続開始日には鉄筋コンクリート造4階広大地に該当しないとした事例建の建物(平成14年1月18日新築、延床面積965.7㎡)がありました。用途地域は第二種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)です。
  2. 本件土地の利用状況
    甲土地は、開発行為に関する工事の検査を受けて平成14年1月18日に新築された鉄筋コンクリート造陸屋根4階建の共同住宅(甲地上建物)の敷地として使用されており、本件建物は、実効収入割合が100%に近いほどに有効に利用されている。そして本件建物の耐用年数は、甲地上建物は47年であり、外観上建築後の経年によることを超えて著しく老朽化又は損傷・・・は認められず・・・今後相当の期間利用することができるものと見込まれる。
    以上より、本件甲土地は開発行為を了した上、共同住宅の敷地として利用されており、近い将来・・・新たな開発行為を行うべき事情も認められない。
  3. 本件地域における宅地の使用状況
    本件地域内に存する宅地の用途別の面積の割合は、戸建住宅用地が約26パーセント、共同住宅用地が22%、法人等事業所用地が約21%、倉庫・車庫・工場用地が約30パーセントである。
    本件土地は・・・標準的な使用形態の1つである共同住宅・・・である。周囲の状況に比して特殊な形態で利用されているとは認められない。
  4. 審判所の判断
    1. 本件各土地は・・・既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されているものと認められる。
    2. 本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されているものと認められるから、本件甲土地について開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地である道路を開設することの要否について検討する必要はなく、この点に関する請求人らの上記主張は、採用することができない。

又、審判所は次のようにも言っております。

  1. 宅地上に建物が建築されていることは広大地の判定に影響を及ぼさない旨の主張について請求人らは、平成17年情報には「著しく広大であるかどうかの判定は、当該土地上の建物の有無にかかわらず、当該土地の規模により判定することに留意する。」と注記されていることから、本件各土地上に建物が建築されていることは、地積が著しく広大であるか否かの判定に影響を及ぼさず、本件各土地が広大地に該当する旨主張する。
    確かに、本件各土地上に建物が建築されていることは、地積が著しく広大であるか否かの判定に直接影響を及ぼすものではないが、上記のとおり、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるのであるから、広大地通達の趣旨にかんがみても同通達にいう広大地には該当しないものと認められるのであって、請求人らの上記主張は、採用することができない。

ということで、広大地の規定の適用を否認しました。

※この裁決事例で気づくことは下記の通りです。

本件甲土地は、駅から約2,000mに位置するため交通の便は良いとは言えない距離に位置するため、共同住宅を建設するにあたり、敷地内に駐車場が必要です。
敷地を有効に使おうとするならば、法定容積率200%に対して、実効(基準)容積率は129.98%(敷地面積742.98㎡に対する建物延床面積(965.7㎡)比)と低いのです。基本的に土地を購入すれば、その土地を目いっぱい活用してその土地に収益を上げさせようとするのが本来の姿と思いますが、敷地のうち約65%しか使用しておりません。
敷地を有効利用しているようには見受けない状況の可能性もあるように思われますので、本件甲土地は、広大地の要件を満たしている可能性があるかもしれません。

《裁決要旨》

請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、賃貸マンションの敷地となっているところ、地価公示法によれば賃貸マンションを建築することが地域の標準的使用とはなり得ないこと及び本件各土地が所在する地域の近傍地域が一群の戸建住宅分譲用地へと移行しつつあることからすると、本件各土地は「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」には該当しないなどと主張して、本件各土地は、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。

しかしながら、広大地通達の趣旨に照らすと、評価対象宅地につき、評価時点における当該宅地の属する地域の標準的使用に照らして、当該宅地を分割することなく一体として使用することが最有効使用であると認められる場合には、広大地に該当しないと解するのが相当であり、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地や現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地などについては、特段の事情がない限り、広大地には該当しないものと解せられるところ、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として使用されており、本件各土地について、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない上、本件各土地の存する地域においては、戸建住宅用地、共同住宅用地、法人等事業用地、倉庫・車庫・工場用地の各用途のいずれもが標準的な使用形態であると認められることからすると、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らして有効に利用されているものと認められる。

したがって、本件各土地は、広大地には該当しないものと認めるのが相当である。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/