規模の大きな土地でも広大地になるとした事例

2019年6月11日

事務所、倉庫、作業所の用途に供している土地であるが、広大地に該当するとされた事例

(名裁(諸)平18第23号・平成18年10月10日裁決)

本件各土地の概要

(1)本件土地E

本件土地Eは、地積2,564.32㎡の土地で中小工場地区に位置し、本件被相続人の亡夫である■■■が賃貸人となり(本件被相続人がその地位を継承した)、■■■に賃貸されていた。(図3のうち東側部分) 路線価の設定されていない道路(以下「本件南側道路」という。)のみに接していることから、評価基本通達14-3に定める特定路線価を設定することが出来る土地である。

(2)本件土地F

本件土地Fは、地積1,603.83㎡の土地で、中小工場地区に位置し、奥行き49.12mのほぼ台形の土地である。本件土地Fは、 ■■■が賃貸人になり(本件被相続人がその地位を継承した)、■■■に賃貸され、販売用車両の展示場として利用されていた。

争点

①本件土地E②本件土地Fは、広大地補正をすべきか。

請求人らの主張

①本件土地E広大地に該当するとした事例の画像
広大地補正をすべきである

②本件土地F
広大地補正をすべきである

原処分庁の主張

①本件土地E
広大地補正は認められる。

②本件土地F
広大地補正は認められず、宅地について適用される崖地補正ではなく、宅地造成費の控除を行うべきであるから、本件土地Fの評価額は、46.080.902円となる。

審判所の判断

イ 広大地補正をすべきか等

(1)本件土地E(争点1)

(イ)当審判所の現地調査及び■■■都市計画図等によれば、次の事実が認められる。

A 本件土地Eは、建ぺい率60パーセント、容積率200パーセントの都市計画法上の準工業地域にあり、大規模な商業施設、中・小規模工場と戸建住宅が混じった地域にある。

B 本件土地Eの最寄りの公示地(以下「本件公示地」という。)は、本件土地Eの北約400メートルの、■■■に所在する120平方メートルの戸建住宅用地であり、本件土地Eと同じ都市計画法上の準工業地域に位置しており、本件公示地の地価公示情報による周辺地利用現況は、一般住宅のほかに工場等が見られる住宅地域となっている。

C 本件公示地は、約70戸の連なる戸建住宅のうちの一つの区画の土地である。
また、本件土地Eの西側約200メートルにも、11戸の戸建住宅開発地がある。

D 本件土地Eの近隣には、本件土地Eの西側約50メートルに賃貸マンションが1棟、それ以外では本件土地Eの南約500メートルに数棟立っているが、本件土地Eには、すでに開発を了しているマンション・ビル等はない。

(ロ)上記認定事実によれば、本件土地Eは、戸建住宅の開発用地として適した地域にあると認められ、地積も開発申請が必要となる面積を超えていることなどから、本件土地Eの評価に当たっては、広大地補正をするのが相当である。

(ハ)そして、請求人らが提出した土地造成計画図(図11)は、■■■の宅地開発に関する指導要綱に従っており、合理的な開発計画図と認められることから、評価基本通達24-4で定める広大地の補正率(以下「広大地補正率」という。)は、本件土地Eの全体の地積2,564.32平方メートルから公共公益的施設用地となる部分の地積と認められる590.71平方メートルを差し引いた数値を本件土地Eの全体の地積2,564.32平方メートルで除した割合の0.77とするのが相当である。

(2)本件土地F(争点1)

イ 広大地補正を適用をすべきか等

(イ)本件土地Fは、本件土地E同様、戸建住宅の開発用地として適した地域にあると判断され、地積も開発申請が必要な面積を超えていることなどから、本件土地Fの評価に当たっては、広大地補正をすべきである。

(ロ)そして、請求人らが提出した土地造成計画平面図(図12)は、■■■の宅地開発に関する指導要綱に従っており合理的な開発計画図と認められることから、広大地補正率は、本件土地Fの全体の地積1,603.83平方メートルから公共公益的施設用地となる部分の地積と認められる278.27平方メートルを差し引いた数値を本件土地Fの全体の地積1,603.83平方メートルで除した割合の0.83が相当である。

以上

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コメント

本件において審判所は、本件土地E及びFについて下記の理由をもって広大地評価をすべきであるとしました。

『本件土地Eは、戸建住宅の開発用地として適した地域にあると認められ、地積も開発申請が必要となる面積を超えていることなどから、本件土地Eの評価に当たっては、広大地補正をするのが相当である。

本件土地Fは、本件土地E同様、戸建住宅の開発用地として適した地域にあると判断され、地積も開発申請が必要な面積を超えていることなどから、本件土地Fの評価に当たっては、広大地補正をすべきである。』

本件土地Eが、『戸建住宅の開発用地として適した地域である』とありますが、認定事実によれば、本件土地Eの存する地域は、大規模な商業地域、中小規模工場と戸建住宅が混じった地域で、本件土地Eの近くには本件公示地があって、一般住宅のほか工場等がみられる住宅地域である。

本件土地Eの西側約50mに賃貸マンションが1棟、それ以外では本件土地Eの南側約500mに数棟建っているが、本件土地Eには、既に開発を了しているマンション・ビル等はない』と記載されています。

本件土地が上記のような地域ですが、審判所は戸建住宅の開発に適した地域と判断し、本件土地Eは広大地に該当するとしました。近くの公示地が住宅地の評価ポイントが住宅地のポイントであったことも幸いしたので、広大地として評価されたかもしれませんね。

本件土地Fも、本件土地Eと同様に戸建住宅の開発用地として適した地域にあると判断され、広大地補正をすべきと判断しました。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/