開発を了していることと広大地について

2019年6月12日

既に開発行為を了している土地は、標準的な地積に比して広大であっても広大地に該当しないところ、本件土地は既に建物の敷地として利用されているので、広大地補正はできないとした事例(平成16年3月5日裁決 東京 公開)

1.本件土地の概要

本件土地の地積は、990.61㎡の土地である。
本件相続開始日における本件土地の状況は、〇〇市が所有するM館の敷地である。
〇〇館は、〇〇市の所有で地上2階地下5階の鉄筋コンクリート造の建物である。

(1)調査結果
当審判所が〇〇市の担当部課において、本件賃貸借契約の内容を調査したところ、更地時価買取請求は、〇〇市が権利金等の一時金を支払っていないことから定められたものであり、更地時価買取請求があった場合には、〇〇市としてはこれに応じる必要があり拒否はできない事実が認められた。

(2)本件土地の価額について

①請求人らは、本件土地の価額は自用地としての価額から60%の借地権相当額を控除して評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件賃貸借契約によると、本件土地は「M館」の用地としてP市に賃貸されたものであるところ、契約締結に際し賃借人であるP市から土地所有者である被相続人に対し権利金等の一時金の授受がないことから、被相続人は本件賃貸借契約の期間中であってもP市に対して更地時価買取請求ができ、P市は当該請求に対し異議なく応じるものとされることは、P市は借地権者としての経済的利益について享受しないものとしたと認められるところであり、一方、土地所有者である被相続人は賃貸した本件土地の底地価額は何ら減損することなく自用地と同額の価額として保証されているものと認められるところである。
加えて、被相続人は、本件賃貸借契約の期間中、P市借地料算定要領により固定資産税等の額の3倍という地代を受領することが保証されている。
そうすると、P市及び被相続人は本件賃貸借契約において、本件土地における借地権の経済的価値を認識しない旨を定めたものというべきであるから、本件土地の評価に当たっては、借地権相当額を何ら減額すべき事由はないのであって、60%の借地権相当額を控除すべきとの請求人らの主張には理由がない。
したがって、本件土地の価額は、自用地としての価額と同額で評価するのが相当であり、その価額は228,999,313円である。

②請求人らは、本件土地の価額が自用地としての価額から60%の借地権相当額を控除するべき旨の主張が認められないとしても、都市公園用地通達に準じ、自用地としての価額から40%相当額を控除すべきである旨主張する。
都市公園用地通達では、都市公園法第2条第1項第1号に規定する公園又は緑地(以下「都市公園」という。)の用地として貸し付けられている土地の価額について、当該土地が都市公園の用地として貸し付けられていないものとして評価基本通達により算出した価額から、40%相当額を控除した金額によって評価する旨が定められている。
これは、都市公園の用地として貸し付けている土地所有者は、貸付期間において正当な事由がない限り土地の返還を求めることはできないなど、都市公園を構成する土地については、都市公園法の規定により私権が行使できず、また、公園管理者に対する都市公園の保存義務規定も定められているために、都市公園の用地として貸し付けられている土地には相当長期間にわたりその利用が制限されることから、自用地としての価額から40%相当額を控除するものであると解される。
しかしながら、本件土地は、P市に対し更地時価買取請求ができ、P市はそれに異議なく応じることからすれば、都市公園用地通達に準じて評価することは相当でない。

(ハ)請求人らは、本件土地は近隣の標準的な土地に対し著しく広大な土地であるから、本件土地の更地価額の算定には評価基本通達24-4に定める広大地補正を行うべきである旨主張する。

既に開発行為を了している土地は標準的な地積に比して著しく広大であっても評価基本通達24-4に定める広大地に該当しないところ、本件土地は既に「M館」という建物の敷地として利用されていることから、広大地補正をすることはできない。
(ニ) 以上のことから、本件土地の価額は228,999,313円であり、請求人らの課税価格及び納付すべき税額を計算すると、別表2の「当審判所認定額」欄のとおりとなり、請求人らの納付すべき税額はいずれも本件更正処分の額を上回るから、本件更正処分は適法である。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/