都市計画法及び条例と広大地判定

2019年6月12日

本件各土地は、都市計画法・条例において開発許可が不要であり、また事前協議においても強制力のある行政指導の事実も認められず、道路の負担が求められる明確さが認められないので広大地を適用できないとした事例
(関裁(諸)平21第119号 平成22年5月25日裁決)

1.本件各土地の概要

イ 甲土地

広大地に該当しないとした事例(イ)甲土地は、地積2,644.00㎡の宅地である。甲土地は、東側約6mの公道・北西側幅員約5mの公道に接面する三角形の土地で、北東方向から南西方向に緩やかな下りの傾斜となっている。

(ロ)建築基準法第52条《容積率》に規定する容積率は200%、同法第53条《建ぺい率》に規定する建ぺい率は70%である。

ロ 乙土地

(イ)乙土地は地積1210.17㎡の宅地である甲土地の向かいに位置し、西側が○○に、南側が幅員約5mの道路に面する評価通達16に定める角地に該当する四角形の土地である。

(ロ)都市計画区域外に所在し、建築基準法第52条に規定する容積率及び同法第53条に規定する建ぺい率の定めはない。

ハ.本件各土地

(イ)甲土地と乙土地を併せて本件各土地という。

2.争点

本件各土地の評価において、広大地通達の適用はあるか否か。

3.請求人の主張

次の理由により、本件各土地の評価において、広大地通達の適用はある。

イ 本件各土地の開発に当たっては、都市計画法上の開発許可は要しないが、本件指導要綱により、○○○との事前協議が必要である。○○○では、これまでの10年間に事前協議が186件実施されているが、うち約40%が宅地分譲に係るものと聞いており、これらについては本件指導要綱に基づき、道路設置の行政指導が行われ、道路の設置により減歩が生じていると考えられるから、本件各土地も公共公益的施設用地の設置が必要であると考えられる。また、本件指導要綱上、水道の引込みについても事前協議が必要であるから、本件指導要綱に基づく事前協議は、事実上の強制力が伴うものである。

ロ 本件各土地の近隣の土地の開発においても道路が新設された事実があることから、本件各土地の開発に当たっても道路の設置が必要と考えられる。

4.原処分庁の主張

次の理由により、本件各土地の評価において、広大地通達の適用はない。

イ 本件各土地は、都市計画法第29条による開発許可を要さず、また、請求人は、請求人が主張する○○○における事前協議に関する事実を認定するに足りる証拠資料等の提出もせず、その主張自体が前提を欠くものである。

ロ 本件指導要綱は、開発許可を要する面積基準を都市計画法とは別に定めたものではなく、同要綱に基づく事前協議を開発許可と同視することはできない。

5.審判所の判断

(1)判断

イ 本件各土地の地積は、都市計画法に規定する開発許可を要する地積を下回ることから、本件各土地は、開発行為をしようとした場合に開発許可を要しない土地に該当する。

ロ この点について、請求人は、本件各土地を開発するに当たり、開発許可は不要であるとしても、宅地分譲に係る事前協議が行われると、道路等公共公益的施設の設置が求められ、本件各土地の近隣の土地開発において、道路が新設されている事実は認められるから、本件各土地についても、広大地通達を適用すべきである旨主張する。

しかしながら、上記の答述及びロの申述によれば、○○○において、都市計画法によって公共公益的施設用地の負担が求められる場合と同様に事実上強制力のある行政指導が一般的に行われていた事実は認められず、宅地分譲を行う場合に事前協議によって公共公益的施設用地の負担が求められるのが明確であったとまでは認められない。

ハ 本件各土地は、非線引き都市計画区域内及び都市計画区域外の土地であることからすれば、都市計画法上、種々の用途に供することが可能であり、本件各土地の経済的に最も合理的な特定の用途が、戸建分譲住宅地であるとまではいえない。

そうすると、仮に、請求人が主張する通り、甲土地を70坪程度に宅地開発した場合、道路設置が必要であったとしても、甲土地が評価通達15から同20-5までに定める補正では十分といえない程の個別事情がある土地とはいえないから、請求人の主張は採用できない。

ニ 以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用できず、本件各土地の評価において広大地通達の適用はない。

(2)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

よって、主文のとおり裁決する。

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コメント

①広大地の評価において、評価対象地が各自治体の定める開発許可を要する面積基準(以下開発許可面積基準という)以上であれば、原則としてその地域の標準的な宅地に比して著しく地積が広大であると判断することができます。

非線引き都市計画区域の開発許可面積基準は3000㎡です。又非線引き都市計画区域及び準都市計画区域のうち、用途地域が定められている区域においては、市街化区域に準じた面積即ち三大都市圏は500㎡、それ以外の地域は1000㎡です。

広大地評価をするにあたり、都市計画法上の区域区分を調査することになります。本件は、非線引きの都市計画区域の物件です。注意すべきは用途地域が定められているか否かを調査することを忘れてはなりません。

用途地域が定められていれば、開発する場合の面積は1000㎡、用途地域が定められていなければ3000㎡が開発許可面積になります。

②これらの内容を踏まえて、審判所は下記のように判断しました。(要約)

(イ)ところで、都市計画法第29条及び第33条《開発許可の基準》第1項並びに都市計画法施行令第19条及び第22条の2によれば、区域区分の定めのない都市計画区域では3,000㎡以上、都市計画区域外では1ha以上の土地について開発行為をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならず、その許可にあたって、開発行為の設計に道路、公園等の公共公益的施設の配置等が適当にされているか否か等が考慮される。

以上の規定からすると、当該土地の属する地域において都道府県知事の許可が必要となる最少面積に満たない宅地であれば、公共公益的施設用地の負担を法的に強いられることはないといえる。

(ロ)以上からすると、当該土地が「広大地」に該当するというためには、原則として、当該土地の属する地域において都道府県知事の許可が必要となる最少面積以上の宅地であることが必要であり、

(ハ)本件各土地の地積は、別表2の「地積」欄記載のとおり、都市計画法に規定する開発許可を要する地積を下回ることから、本件各土地は、開発行為をしようとした場合に開発許可を要しない土地に該当する。

(ニ)本件各土地の評価において広大地通達の適用はない。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/