広大地通達に定める広大地に該当しないとした事例

2019年6月12日

本件土地は、標準的な宅地の地積に比べて著しく広大とはいえないので、本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当しないとした事例(名裁(諸)平24第9号 平成24年10月30日裁決)


本件土地の概要

本件土地は、地積867.00㎡の宅地で、相続発生日に本件土地上に鉄筋コンクリート造ルーフィング葺4階建共同住宅(延1241.68㎡)の建物がありました。本件土地は県道に接している土地です。本件土地の属する用途地域は、第1種住居地域第2種住居地域(共に建ぺい率60%、容積率200%)にまたがっている。広大地に該当しなかった事例

 

審判所の判断

(1)本件相続開始日前約10年内の建物の建築状況

本件県道沿いの■■■交差点から■交差点までの範囲について、本件相続開始日前約10年に当たる平成12年から平成21年までに建築された建物の敷地にかかる状況を当審判所が調査したところ、別表3-2のとおり、店舗としての利用が大半であり、件数及び面積のいずれの割合も最も高かった。

なお、当該範囲の地域における店舗の敷地面積の詳細は、別表3-3のとおりである。

(2)地価公示について

下記のとおり、本件土地を本件県道沿いに300mほど南道したところに、本件相続開始日に近時した平成21年1月1日を調査基準日とする公示地(以下、本件公示地という)があり、その形状は、次のとおりである。

文章中の表

(3)開発許可が必要な面積規模

■■交差点から■交差点までの範囲の地域は、別表3-1のとおり、戸建住宅及び共同住宅(3階以上及び3階未満)の件数割合の合計が29%面積割合の合計が18%店舗の件数割合が56%面積割合が72%であって、件数及び面積のいずれも割合も店舗が最も高かった。

標準的な宅地の地積について

①上記のとおり、本件地域における宅地は、「店舗」としての利用が最も多く、上記のとおり、本件地域内の本件相続開始日前約10年内の建物の建築状況をみても店舗が多いと認められることから、本件地域における標準的な使用は、店舗の敷地と認められる。

②本件地域における店舗の敷地面積は、別表3-3のとおり、約130㎡から5,000㎡を超えるものまであるところ、面積順上位2位の宅地の面積は同3位の宅地の面積の2倍近くあり、画地規模が格段に大きいことから、上位2位以上を除いた上で、本件地域における店舗の敷地面積について、相加平均(算術平均)したところ、平均敷地面積は約730㎡であった。

③さらに、公示地は土地の利用状況、環境、地積、形状等が中庸のものであるとして指定されるものであるところ、上記のとおり、本件地域内に所在する本件公示地の面積は■■であること、上記のとおり、本件地域は■■の市街化区域に該当するところ、同地域における開発許可を受けなければならない開発行為の面積規模は500㎡以上とされていることも考慮すれば、本件地域における「標準的な宅地の地積」は、約730㎡ないし約■■㎡であると認められる

別図3-1と3-2

文中の別図3-3

 

*******************************

コメント

本件においては、広大地通達に定める「その地域」のとり方について相当に争いになっていて、請求人の主張する標準的な宅地の地積は標準的な宅地の地積は300㎡程度と判断していますが、原処分庁はその地積は800㎡程度の地積で標準的な使用は中層の共同住宅や商業施設と判断しています。

審判所は別表のように本件地域における標準的な使用は店舗で、標準的な宅地の地積は約730ないし約■■㎡であるとしています。このように請求人と大きな差が生じる原因はその地域のとり方にあるようです。

本件においては裁決書では「その地域」について下記のように述べています。

『このような広大地通達を定めた趣旨に鑑みれば、同通達でいう評価宅地の属する「その地域」とは、①河川や山などの自然的状況、②行政区域、③都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、④道路、⑤鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。

この文章を読んでも「その地域」を決めるのは難しいかもしれませんが、余り広くとりすぎると「その地域」の特性がうすれることも考えられるので余り大きくとりすぎないように注意する必要があります。

また、争いになれば、当然にその地域の地域分析が行われます。その結果が添付しております土地の状況分析表、店舗の敷地面積表等です。緻密な努力と費用、時間をかけてし資料を作っておられます。この資料はとても説得力があります。その地域をしっかり決めてこの分析資料を付けて、広大地の定義に沿う理由が付けば、広大地適用は万々歳です。本件は広大地は否認されましたが、参考になる添付資料です。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/