広大地適用が相当であるとした事例

2019年6月12日

広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。

請求人が作成した甲土地の土地開発図は特に経済的に不合理な点は認められないので、広大地適用が相当であるとした事例(金裁(諸)平16第5号 平成16年11月9日裁決)

本件甲土地の概要

甲土地の地積は、947㎡の土地である。
甲土地の周辺は、一般住宅、中小の店舗及び事務所等が混在している。
甲土地は、本件相続後平成13年中に譲渡され、その直後に6区画の宅地として開発されている

争点

甲土地は広大地に該当するか

原処分庁の主張

(イ)広大地について

「標準的な宅地の地積」について

広大地に該当するとした事例の画像

 「標準的な宅地の地積」とは、上記により判断した地域における利用状況等が標準的な宅地の地積を言い、具体的には、次の(A)及び(B)の地積に基づき判断することとなる。

(A)評価対象の土地の接する路線に面し、課税時期において標準的な利用状況等であると認められる宅地の地積

(B)評価対象の土地の近傍の課税時期の年の地価公示又は地価調査の標準地の地積

(イ)甲土地について

甲土地についてみると、次のとおり、広大地として評価することは相当であり、その場合の公共公益的施設用地となる部分の地積は153.39㎡とするのが合理的と認められる。(別図3)

請求人らが作成した別図1の甲土地の土地開発図は、公共公益的施設用地となる部分の地積348㎡が本件指導基準に定める必要最小限のものではないから、有効な宅地の面積が最大となる経済的に最も合理的なものとは認められない。

請求人らの主張

 (イ)甲土地について

広大地の評価における公共公益的施設用地となる部分の地積は、本件指導基準に基づいて算定されなければならず、請求人らが作成した別図1の甲土地の土地開発図は、本件相続開始日における本件指導基準に適合していることは明らかであり、その上での経済合理性が認められる。
また、原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発図は、次のとおり適正なものとは認められない

A 甲土地における「公共公益的施設用地となる部分の地積」について

原処分庁は、経済的合理性を追求するあまり、本件指導基準に基づかない運用により別図3の甲土地の土地開発図を作成し、公共公益的施設用地となる部分の地積を算定している。
このように、明文化されていない運用を適用して公共公益的施設用地となる部分の地積を算定することは信義則に反するものである。

B 甲土地における「経済的に最も合理的であると認められる開発行為」について

開発行為については、①現実の取引における処分可能性、②本件指導基準が求める市民の安全確保及び③有効宅地面積の最大化という3つの論点を備えてこそ経済的に最も合理的であるといえる。

したがって、甲土地における公共公益的施設用地となる部分の地積を少なくすることで有効な宅地面積を最大にするという原処分庁の主張は、次のとおり経済的合理性をあまりにも狭く片面的にとらえるものであり、取引の実態を全く理解していない。

審判所の判断

相続により取得した土地が広大地に当たるか否か、さらに、広大地として評価する場合の公共公益的施設用地となる部分の地積の多寡について争いがあるので、以下、審理する。

(1)本件更正処分について

イ 甲土地について

(イ)甲土地における「標準的な宅地の地積」について

地積947㎡である甲土地についてみると、本件相続開始日における上記の地域において、戸建住宅等の居住用建物として利用されている宅地の地積は、その多くが100㎡ないし300㎡の範囲にあり、その中でも100㎡台の地積のものが最も多く占めていることが認められる。
また、甲土地における「その地域」には本件地価公示地が所在し、その地積は188㎡である。

(ロ)甲土地における「公共公益的施設用地の負担」について

A 原処分庁は、請求人らが甲土地の価額を評価するに当たって算定した公共公益的設用地となる部分の地積は過大に算定されており経済的に最も合理的なものとは言えず、原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発図による開発行為を行った場合には本件指導基準の運用により許可され、当該用地の地積は経済的合理性がある旨主張する。

しかしながら、①原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発は、甲土地内の道路が袋路になっており、②自動車の回転可能な広場が、道路の終焉若しくは当該道路の区画35m以内ごとに設ける必要があるにもかかわらず、当該広場が設けられていない。

これらの点から、原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発図は本件指導基準に従っていないものと認められる。

また、原処分庁は、実際に、甲土地は原処分庁が作成した別図3の土地開発図とほぼ同じ状況で開発されていることを理由に、原処分庁が算定した公共公益的施設用地となる部分の地積が相当である旨主張するが、相続税法第22条は、相続により取得した財産の価格は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時による旨規定していることからすれば、本件相続開始日後の甲土地の実際の開発行為の状況を持って評価の適否を判断することは、相当でない。

したがって、原処分庁の主張の基礎となる原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発図は採用することはできない。

B 一方、請求人らが作成した別図1の甲土地の土地開発図は、少なくとも本件指導基準に反したものではなく、また、当審判所において、精通者の意見等を参考に検討したところ、特に経済的に不合理な点は認められず、請求人らの主張する甲土地を広大地として評価するに当たって算定した公共公益的施設用地となる部分の地積は相当と認められる。

ロ.まとめ

(イ)甲土地の価額について

上記のことから、甲土地の価額は、別表6の「審判所認定額」欄のとおり36,954,781円となり、同表の「請求人ら主張額」欄の金額と同額となる。

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コメント

広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとしな場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。

土地の開発図を作成するに当たり各自治体の指導基準に基づく図面を作成する必要がありますが、甲土地は請求人はその指導基準に基づく土地開発図のため経済的合理性があるが、原処分庁の開発図は本件指導基準に基づいていないので原処分庁の主張する土地開発図は採用されず、請求人の主張が認められ、広大地として評価されました。

即ち、審判所は下記のように述べています。

『①原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発は、甲土地内の道路が袋路になっており、②自動車の回転可能な広場が、道路の終焉若しくは当該道路の区画35m以内ごとに設ける必要があるにもかかわらず、当該広場が設けられていない。

これらの点から、原処分庁が作成した別図3の甲土地の土地開発図は本件指導基準に従っていないものと認められる。』

このように各自治体の開発指導要綱等に即応した開発図面の作成が求められますので、面倒ですが役所調査を十二分にする必要があることを自覚する裁決事例でした。

20181220広大地 図

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/