相当地代通達の定めに基づき評価すべきとした事例
争点
本件土地は、評価通達又は相当地代通達のいずれかによって評価すべきか。
請求人の主張
本件土地が本件各土地が所在する地域は、 権利金を支払う取引上の慣行のある地域ではないので、本件土地は、相当地代通達ではなく、 評価通達を適用して評価すべきである。
権利金を支払う取引上の慣行のある地域とは、東京及び千葉県の一部地域のみであり、 大阪、 福岡等の関西地域及びその他の地方都市では権利金の授受はなく、権利金を支払う取引上の慣行が成熟しているとはいえない。
原処分庁の主張
本件各土地が所在する地域は、次のとおり、 権利金を支払う取引上の慣行のある地域であるので、 被相続人は、本件各土地の借地権の設定に当たり、権利金その他の一時金を収受しておらず、また、いずれも相当の地代の額に満たない地代を収受している貸宅地であることから、 本件各土地は、相当地代通達を適用して評価すべきである。
国税不服審判所の判断
評価通達及び相当地代通達の定めからすれば、借地権の設定に際しその対価として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の慣行のある地域において、 権利金の支払に代えて相当の地代が支払われているなどの場合には、 評価通達ではなく、 相当地代通達の定める評価方法によるべきことは明らかというべきであって、その評価方法は、当審判所においても、相続税法第22条の趣旨に照らし合理性を有するものと認められるところ、本件各土地の存する地域が借地権の設定に際しその対価として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の慣行のある地域であるので、原処分庁の調査に基づく認定に違法・不当はないから、 請求人らの主張は採用できない。
本件各土地は、相当地代通達を適用して評価するのが相当であるところ、 別表3記載のとおり、 本件相続開始日において実際に収受している地代の金額は、通常の地代の年額を超え、相当の地代の年額に満たないことから、 相当地代通達7の定めによってその相続税評価額を算定すると、 14, 983, 792円となる。
法令解釈
相当地代通達7《相当の地代に満たない地代を収受している場合の貸宅地の評価》 は、借地権が設定されている土地について、収受している地代の額が相当の地代の額に満たない場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額から同通達4に定める借地権の価額を控除した金額によって評価する旨定めてお り、ただし書で、その金額が当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額を超える場合は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する旨定めている。
ここで、借地権の設定された土地の評価について、 評価通達25 (1) は、 貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額から、 当該自用地としての価額に借地権割合を乗じて計算した借地権の価額を控除した金額によって評価する旨定めている。
そして、相当地代通達は、その趣旨において、 借地権の設定された土地につ いて権利金の支払に代え相当の地代を支払うなどの特殊な場合の相続税及び贈与税の取扱いを定めたものであり、 したがって、 借地権の設定に際し通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域において、 通常の地代を支払うことにより借地権の設定があった場合又は通常の地代が授受されている借地権若しくは貸宅地の相続、遺贈又は贈与があった場合には、この通達の取扱いによることなく、評価通達の取扱いによるものとした上で、 その3から8までにおいて、 借地権の設定に際し、 ①相当の地代を収受している場合、 ②通常の地代を超え相当の地代に満たない地代を収受している場合及び ③ 無償返還届出書が提出されている場合における借地権又は借地権の設定されている土地の評価方法について、別紙2のとおりそれぞれ定めている。
コメント
借地権が設定されている土地の評価は、相当地代を収受しているのか、相当の地代に満たない地代を収受しているのか等をよく見極め、どの通達に本件土地が該当するかを見分ける事はとても大切な事です。
どの態様なのか、面倒な作業かもしれません。
②貸主法人、借主個人
③貸主法人、借主法人
色々なバージョンがあります。注意が必要かと思います。