借地法に規定する借地権があるとした事例

借地権に規定する借地権があるとした事例

借地権は存しないと主張するが、被相続人と本件土地所有者との間の土地賃貸借は、借地法に規定する借地権があるとした事例 平成15年7月4日裁決・札幌

争点

本件土地の賃貸借契約は、借地権として評価することが妥当か否か

請求人の主張

本件土地の賃貸借において、権利金の支払いもなく、また土地所有者に無償で返還しているので、本体土地上には借地権は存しない。

原処分庁の主張

財産評価基本通達に定める借地権とは、借地借家法第2条((定義))第1号に規定する建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいうところ、本件賃貸借契約は、当初から建物の所有を目的として締結され、その後、被相続人が、権利金又は更新料を支払い、本件相続開始日においても当該賃貸借契約は継続しており、引き続き本件土地の上に本件建物が存在していたことが認められる。

したがって、本件賃貸借契約に基づく本件土地の賃借権は借地権に該当するから、本件借地権が存するとして行われた本件更正処分は適法である。

国税不服審判所の判断

①本件賃貸借契約は、建物の所有を目的とするものであること、
②本件建物は、被相続人名義で登記されていること
③ 被相続人は、本件土地所有者に対して地代を支払っていることが認められる

これらのことからすれば、被相続人と本件土地所有者との間の土地賃貸借契約に基づく本件土地の賃借権は、借地法に規定する借地権であると認められる。

審判所

また、本件建物の閉鎖事項証明書及び請求人らの答述によれば、本件相続開始日においても、本件建物は本件土地の上に存しており、土地賃貸借契約は継続していたと認められることから、本件相続開始日において本件土地には借地権が存していたものと認めるのが相当である。

なお、請求人は、本件土地所有者が、本件土地以外の賃借人からも無償で借地を返還してもらっているから本件借地権も存しないと主張するが、その理由の如何によって上記判断が左右されるものではない。

関係法令

①財産評価基本通達に定める借地権とは、借地借家法第2条第1号に規定する建物の所有を目的とする地上権又は土地の貸借権をいう。

②借地法(平成3年法律第 90 号により廃止) 第1条は、 借地権とは建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう旨規定し、借地借家法附則第4条 ((経過措置 の原則))は、この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。

ただし、廃止前の借地法の規定により生じた効力を妨げない旨規定している。

コメント

請求人は、本件土地の賃貸借は、土地所有者に対して権利金の支払もなく、また、土地所有者に無償で返還しているから、本件土地の上に借地権は存しない旨主張する。
審判所は、①本件土地の賃貸借は、建物の所有を目的とするものであること、②本件土地の上に存する建物は、被相続人名義で登記されていること及び ③ 被相続人は、土地所有者に地代を支払っていることから本件土地賃貸借契約に基づく賃借権は、借地法に規定する借地権と認められ、また、本件借地権には財産評価基本通達を適用して評価することに特に不都合と認められる特段の事情も認められないことから、本件借地権を財産評価基本通達の定めにより評価した原処分は適法である、と判断した。

本件土地において、請求人は権利金の支払いもなく土地所有者に無償で借地を返置しているので、借地権はないと主張するが、審判所は、本件土地は建物の所有を目的とし、被相続人が地代を支払っており、本体土地の賃貸借は、借地法上の借地権であると判断している。

借地法第1条では、借地権とは建物の所有を目的とする賃借権をいうと規定しており、 地代の支払いもされていることから判断して借地法上の借地権であることが認められる。
昭和36年から平成12年まで毎月地代を支払い続け、尚且つ、相続開始後も本件土地上に建物が存し土地賃貸借契約は継続していることからしても、借地権が存することが分かります。
本件賃貸借契約の期間満了により、本件土地の返還にあたり、本件土地の所有者に対し無償で返置しているので、借地権は存在しないと請求人は主張していきますが、審判所は、その理由の如何によって借地権の存否の判断が左右されない。借地権の存否とは関連がないと言い切っています。借地権の存在と返還は連動しない。