借地権の及ぶ範囲は土地全体に及ぶとした事例
ここに文章
借地権は、建物の敷地部分にのみ存すると主張するが、本件土地全体が建物所有を目的として賃貸されているので、 借地権は本件土地全体に及ぶとした事例
平成14年12月19日裁決 関信
請求人の主張
貸主及び被相続人に借地権に関する認識が全くなく、貸主が建物の増改築又は建物の賃貸などを全く認めていない本件土地について、建物の敷地以外の部分には借地権は存在しない。
原処分庁の主張
借地法(平成4年8月1日廃止前のものをいう。) 第1条には、「本法において借地権と称するは建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう。」と規定されており、本件土地上の建物は、本件相続開始日現在において被相続人が所有者であることの事実からすると、被相続人は建物を所有する目的で本件土地を賃借し、被相続人所有の建物を建築したのであるから、借地法に規定する借地権を所有していたと認められる。
請求人らは、 建物の敷地以外の土地については借地権が存在しない旨主張するが、本件土地は、建物の敷地のほかに、駐車場及び庭として、一体利用されており、本件土地のうち建物が建てられている部分のみに借地権があるとは認められない。
国税不服審判所の判断
請求人らは、建物の敷地以外の部分には借地権が存在しない理由として貸主及び被相続人に借地権に関する認識がなく、また、建物の増改築又は建物の賃貸などを全く認め ていない旨主張する。
しかしながら、本件土地の貸主は被相続人に借地権があることを認識しており、仮に 被相続人に借地権に関する認識がなかったとしても、借地法の借地権とは建物所有を目的とした賃借権をいうから、被相続人が借地権を有していたことは明らかである。
また、本件相続開始日における建物の敷地以外の部分の本件土地の利用状況が、庭、家 庭菜園、空き地であったとしても、本件契約書第1条によって本件土地全体が普通建物所有の目的をもって被相続人に賃貸されていたことから、 借地権は、本件土地全体に及ぶものと認められる。
したがって、当該建物の敷地部分についてのみ借地権がある旨の請求人らの主張は採用できない。
コメント
請求人は、貸主及び借主に借地権に関する認識がなく、借地上の建物の増改築又は賃貸等が認められていないので、 借地権は建物の敷地部分にのみに存すると主張する。
審判所は、①貸主は借地権を認識していること、②借地法第1条には、借地権と称する 建物の所有を目的とする地上権及び借地権をいうと規定していることから、借地権が借地全体に及ぶとあることから、 借地権は、本件土地全体に及ぶと認められると判断した。
借地法では、第1条で借地権は、「建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう」 と規定している。また、借地借家法では、借地権を「建物の所有を目的とする地上権および賃借権をいう」と定義している。相続税の評価における借地権は、建物の所有を目的とする地上権と土地賃借権に限定されている。
法務省民事局長通達の不動産登記事務取扱手続準則第136条第1項に 「建物とは、屋 根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」と規定し建物の認定基準が示されている。