公共公益施設用地の負担の必要性について

2019年6月12日

本件土地の概要

本件土地は、地積1,075㎡の土地で、ほぼく形の土地である。
本件土地の前面道路の幅員は6mである。
本件相続開始日において月決め駐車場として貸し付けられている
本件土地の属する用途地域は、近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率300%)である。


審判所の判断

(1)認定事実

広大地に該当しないとした事例

① 本件地域には、戸建住宅、駐車場、低層の建物及び中高層の建物が混在するところ、本件相続の開始日以前10年間において、戸建住宅については4件(平成9年に2件、平成10年に1件及び平成14年に1件)、低層の建物についてはコンビニエンスストアが1件(平成7年)、及び中高層の建物については8件(平成9年に2件、平成10年に3件、平成12年に1件、平成15年に1件及び平成16年に1件)の建築事例がある。

なお、中高層の建物については、集合住宅、店舗兼集合住宅及び事務所兼集合住宅等が建築されている。

② 本件地域の一部の用途地域が近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率300%)とされたのは、平成〇年○月○日(〇〇県告示第○○号)からであり、それ以前は住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)であった。
また、用途地域の変更理由は、隣接する幹線道路と大規模業務施設地区に対応し、商業・業務機能を強化し、周辺地域の発展の一翼を担うためであった。

なお、本件地域においては、平成〇年以降、開発許可申請はされていない。

(2)マンション適地等に該当するか否か

① 平成〇年以降、本件地域では〇〇市に対して開発許可申請がなされていないことから、本件地域においては、1,000平方メートル以上の土地について開発行為をした場合に公共公益的施設の負担が必要な開発、すなわち道路や公園等の公共公益的施設の必要な戸建住宅等の開発は行われていない。

さらに、上記のとおり、本件地域は、本件相続の開始日以前10年間において、戸建住宅よりむしろ中高層の集合住宅及び中高層の店舗・事務所兼集合住宅等が多く建築されている地域である。

 

② 次に、本件土地についてみると、上記の本件土地の形状、接面道路の幅員、本件土地と接面道路との接する距離及び接面道路と県道・国道との距離に加えて、容積率が300%と定められていることからしても、本件土地に中高層の建物を建築することについて特段の支障を来たす状況は見受けられない。

なお、平成10年8月には、本件地域内の約830平方メートルの土地に、11階建の事務所ビルが建築されており、本件土地と同規模の土地が細分化されることなく一体として利用されている。

③ 上記を勘案すると、本件土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の用に供することではなく、中高層の集合住宅及び中高層の店舗・事務所兼集合住宅等の敷地の用に供することであると認めるのが相当である。

したがって、本件土地はマンション適地等に該当するので、本件通達に定める広大地に該当するとして評価することはできない。

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コメント

本件土地に関して、下記のような事がある限り、マンション適地と判断されても仕方がありません。(本文裁決書より引用)

  • 「なお、本件地域内の約830平方メートルの土地に、11階建の事務所ビルが建築されており、本件土地と同規模の土地が細分化されることなく一体として利用されている。」
  • 本件相続の開始日以前10年間において、本件地域には戸建住宅や低層建物よりは中高層建物が多く建築されていることからすれば、本件地域において中高層建物の需要がなかったとはいえず、また、本件土地がマンション適地等に該当するか否かについては、上記を勘案して判断したところ、上記のとおりであり、さらに、請求人らの主張を裏付けるに足りるまでの具体的な事実は認められないことから、この点に関する請求人らの主張は採用できない」
  • 「本件地域の一部の用途地域が近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率300%)とされたのは、平成〇年○月○日(〇県告示第○○号)からであり、それ以前は住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)であった。また、用途地域の変更理由は、隣接する幹線道路と大規模業務施設地区に対応し、商業・業務機能を強化し、周辺地域の発展の一翼を担うためであった。」

用途地域が変更になったことは、本件広大地の判定に大きな後ろ盾になります。現行の用途地域は調べますが、過去に用途地域が変更になった、という事を調べる事は忘れがちですが、大切な事だと思います。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/