農地と広大地評価

2019年6月12日

幹線道路沿いの本件農地の評価は、評価単位を2単位(A農地、B農地を区分)とするか、又は1単位(A農地、B農地を1区画の農地とする)とするか争いとなった事例です。さらに本件農地は、著しく広大な土地でなおかつ公共公益的施設の用地の負担が必要か否かが争われた事例

(東裁(諸)平13第160号 平成14年2月25日裁決)広大地争われた事例の画像

本件土地の概要

A農地…2495.00㎡、B農地…32.93㎡
合計2527.93㎡

現況 A、B共に田、不整形地、二方道路に面す。
A路線:幅員は約3m市道,B路線:幅員約24m国道。
本件土地とA路線との間に幅1.64mの農業用水路あり。
本件土地は、道路より低い位置にある。
本件土地の属する用途地域は、第一種低層住居専用地域 (50%,100%)である。

審判所の判断

(1)評価単位について

評価基本通達33では、農地の価額は、1枚の農地(耕作の単位となっている1区画の農地をいう。)ごとに評価する旨定めており、1枚の農地とは、必ずしも1筆の農地からなるものとは限らず、2筆以上の農地として利用されている場合もあると解される。

これを本件についてみると、A農地及びB農地は、本件相続開始日においていずれも田として耕作されており、A農地とB農地の間には農道等による区分はなされていない。

そうすると、本件農地については、耕作の単位を同じくする1区画の農地、すなわち1枚の農地であると認めるのが相当であり、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2)広大地の評価について

これを本件についてみると、本件農地の地積は2,527.93㎡であるが、本件農地の存する同一用途地域(第1種低層住居専用地域)内において標準的な宅地の地積を有すると認められる地価公示法の規定に基づき公示された標準地(■■■)の地積は150㎡であり、また、本件農地の近隣に存する宅地開発済の宅地をみても一区画の地積はほぼ200㎡以下であることから、本件農地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地と認められる。

そうすると、本件農地は、上記のとおり、本件農地を宅地開発する場合には、公共公益的施設用地の負担が必要とされていることから、評価基本通達24-4に定める広大地に該当する。

したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

なお、請求人は、本件農地を宅地開発した場合には、公共公益的施設用地として全体の約24%が必要となる旨主張し、その根拠として、平成13年6月1日付の■■■作成の土地利用計画図を提出している。
当該土地利用計画図によれば、公共公益的施設用地として611.34㎡が必要であるとしているが、このことは当審判所で調査した結果によっても相当であると認められることから、評価基本通達24-4に定める広大地補正率を適用すると、その補正率は次の算式により0.76となる。

【算式】

本文中の数式の画像

(3)本件農地の価額について

以上により、評価基本通達の定めに基づき本件農地の価額を算定すると、次のとおり196,339,267円となる。

※本件農地の相続税評価額

①原処分庁……243,267,759円

②審判所………196,339,267円                 以上

なお、この事例は現行法の前の法規に基づくものです。

本件農地の位置図および間口距離等

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コメント

原処分庁は、広大地の評価について『本件農地の正面路線であるB路線は、■■■であり、本件農地が存する近隣のB路線沿いの地域は、自動車メーカーの大規模な営業所、ドライブイン等が混在している地域と認められるから、本件農地は、当該地域における標準的な土地に比べて著しく広大な土地とは認められない。

したがって、『本件農地の価額の評価においては、評価基本通達24-4の定めの適用はない』と言い切っています。

しかし、本件農地が存する地域の用途地域は第一種低層住居専用地域内に存するため、どちらかといえば低層住宅の良好な住環境を守るための地域であり、12種類の用途地域の中で最も厳しい規制がかけられている地域です。
店舗等、事務所等、ホテル、旅館、遊戯施設、風俗施設等は建築できないことになっています。

原処分庁のいう「B路線沿いの地域は、自動車メーカーの大規模営業所、ドライブイン等が混在している地域」と本件農地が存する第一種低層住居専用地域とは利用状況、環境等がおおむね同一とは認めにくい一面があるようです。

その点について審判所は、その地域の利用状況、環境等がおおむね同一と考えられる地域を選び『本件農地の存する同一用途地域(第一種低層住居専用地域)内において標準的な宅地の地積を有すると認められる地価公示法の規定に基づき公示された標準値の地積は150㎡であり、また本件農地の近隣に存する宅地開発済の宅地をみても1区画の地積はほぼ200㎡以下であることから、本件農地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な土地と認められる』として広大地に該当するとしています。

このように特に第一種低層住居専用地域は用途地域の中でも別格で他の用途地域と一緒にすることは難しい一面をもっていますので、要注意です。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/