地代の授受がなくても貸宅地として評価が相当とした事例

地代の授受がなくても貸宅地として評価

本件土地の評価は、地代の授受がなくても貸宅地(底地)として評価が相当とした事例  平成20年6月2日決紳・沖縄

【争点】

地代の授受がなくても、土地の評価は、貸宅地 (底地) とするのか相当か否か

【請求人の主張】

本体土地は、被相続人が役員をしていた法人Bの所有する賃貸用マンションの敷地として利用されており、法人B は、被相続人に権利金や地代を支払ったことはないが、土地の 固定資産税を負担していた。
したがって、本件土地は、使用借権が付着した宅地なので、使用借権が付着した宅地として評価するべきだ。

【不服審判所の判断】

請求人ら鑑定評価は、本件土地を使用借権が付着した宅地として鑑定評価し、原処分庁は、 貸宅地として評価している。 ところで、 「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」以下「使用貸借通達」という。)においては、建物の所有を目的として使用貸借により土地を借り受けている場合においては、 借地権の設定に際し、その設定の対価として権利金等を支払うなど借地権の取引慣行のある地域においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う旨定めている。

しかし、使用貸借通達の前文からも明らかなとおり、この通達の取扱いは、個人間の貸借関係の実情を踏まえて定めたものであるから、当事者の一方が法人である場合のその一方の個人については、法人税の課税との整合性を図るため、使用貸借通達による取扱いではなく、原則として、法人税の取扱いに準拠して取り扱うこととしている。そして、法人税法上の借地権の設定には、土地の賃貸期間、地代の額等についての明確な取決めをしないで若しくは使用貸借の名の下に他人に建物等を建てさせた場合も含まれるものと解されており、法人税基本通達 13-1-3 《相当の地代に満たない地代を収受している場合の権利金の認定》において、通常収受すべき権利金を収受せず、しかも、その収受する地代の額が法人税法施行令第137条 《土地の使用に伴う対価についての所得の計算》に規定する相当の地代の額に満たないときは、原則として借地権利金の認定課税を行うことを明らかにしており、 その後、土地の借主が借地権を有するものとして取り扱われる。

これらの取扱いについては、当審判所においても、土地の貸借関係の実態に沿ったもの であり、相続税法及び法人税法の趣旨に照らしても相当なものと認められ、これを本件についてみると、甲は、被相続人から本件土地を借り受けるのに際し、権利金及び地代の支払いも行ったことがなく、 また、税務署長に対する無償返還届出書の提出もされていない ことから、被相続人に係る相続開始時には甲が借地権を有していたものとみるのが相当であり、本件土地を貸宅地として財産評価基本通達等に基づいて評価した原処分庁の評価方法は、相当であると認められる。

【コメント】

請求人は、本件土地の賃借人である法人B は権利金や地代の支払いはなく、土地の固定資産税を負担しているだけなので、本件土地は、使用権の付着した土地となる。したがって使用借権の付着した土地として評価すべきだと主張する。

しかしながら、使用貸借通達の前主からも明らかなとおり、この通達の取扱いは、 個人間の賃借関係の実情を踏まえたものであるから、当事者の一方が法人である場合のそのー方の個人は、法人税の課税との整合性を図るため、 使用貸借通達による取扱いではなく、原則とし、法人程の取扱いに準拠して取り扱うことにしている法人税基本通達 13-1-3 において、 通常収受すべき権利金を収受せず、これもその収授する地代の額が法人税法施行令第137条に規定する相当の地代の額に満たないときは、原則として借地権利金の認定課税を行うことを明らかにしており、 その後、土地の借主が借地権を有するものとして取り扱われている。

本件においては、甲は、被相続人から本件土地を借り受けるに際し、 権利金・地代の支払いもなく税務署長への無償返還の届出書の提出もないことから、 被相続人に係る相続開始時には甲が借地権を有していたものとみるのが相当であると、 審判所は判断している。 法人税基本通達 13-1-3 等により、通常収受すべき権利金を収受せず、 地代の額が相当地代の額に満たない時は、原則として借地権利金の認定課税を行うことにして、土地の借主が借地を有するものとして取り扱うことになるという。
本件においては、当事者の一方が法人でその方が個人のため、相続開始時には借地権はあると判定している。

このような考え方は、相続税法等独特の考え方で、 不動産鑑定基準等を基準として鑑定を行う不動産鑑定士もよく勉強しておく必要がある項目と思うので、本件事例を掲載しました。