マンション適地とは、どういう土地か②

2019年6月12日

マンション適地とはどういう風に実務上判断したらいいかについて、裁決を通じて調べてみたいと思います。

審判事例①(東裁(諸)平17 第999 号・平成17 年12 月15日裁決)

A土地所在地域において、昭和54年以降、開発されている2,000㎡以上の土地は、すべてマンション敷地となっている。また、同じく1,000㎡から2,000㎡までの土地については、約1,000㎡の土地が1件戸建住宅の敷地になっている他は、マンション敷地となっている。

(中略)

そこで、A土地の最有効使用について、(中略)①A土地は、(中略)都心への接近性に優れていること、②容積率は100%であり、A土地所在地域には、戸建住宅とマンションが混在するものの(中略)2,000㎡以上の規模を有する土地は、マンション敷地として開発されていたこと、③現に○○(不動産業者)は、A土地上にマンションを建築していること、(中略)、④(中略)○○(不動産業者)は、A土地にマンションを建築し、販売した場合、採算がとれるとの判断をしていたということができること等から、A土地の最有効使用は、明らかにマンション敷地であると認められる。

そうすると、(中略)A土地を広大地として評価しない原処分庁評価額は誤りとする請求人らの主張には理由がないということになる。

マンションが建っている地域は容積率100% (第1種低層住居専用地域)でしたが、マンション適地だと判断されました。あくまでも推測ですが、本件土地がマンション事業者ではなく建売業者に売却されていたら、広大地として認められていたかもしれません。それほどまでに、土地の上に何が建っているかによって、広大地として認められるか、それとも否認されるか、判断が分かれる場合があります。

ここまではマンション適地と判断された事例を紹介してきましたが、次にマンション適地ではないと判断された事例を紹介します。

審判事例②は、相続開始日において2棟の共同住宅(鉄筋コンクリート造4階建)が建つ土地がマンション適地か、それとも広大地に該当するかが争われた事例です。

審判事例②(東裁(諸)平20 第151号・平成21年4 月6日裁決)

(中略)本件○土地の周辺地域の標準的使用の状況をみると、(中略)①付近の土地の利用状況は、一部に3階建程度の集合住宅が存するものの、大部分は戸建住宅の用に供され、②本件相続開始日前5年程度の近隣での住宅開発状況は、戸建住宅となっているものが多くその中には地積2,000㎡以上の土地が含まれていると認められる。
そうすると、本件○土地の周辺地域の標準的使用は戸建住宅の敷地であるということができる。

(中略)本件○土地上には鉄筋コンクリート造陸屋根4階建の共同住宅が存在している。しかしながら、(中略)当該建物は建築後既に35年を経過していること、本件相続開始日においては、当該建物建築後の都市計画の変更により、同じ4階建ての建築物の建築はできないことなどの特殊事情があることからすれば、当該建築の存在を考慮しても、本件○土地はマンション適地等に該当するとはいえないというべきである。

そして、①本件○土地周辺の標準的な戸建住宅の敷地面積は、(中略)190㎡程度と認められるところ、本件○土地の地積は、これに比して著しく広大と認められ、②また、本件○土地は、(中略)接面道路から奥行距離の長い形状と認められ、戸建住宅の敷地として利用する場合には、敷地内の道路開設など公共公益的施設用地を負担する必要が認められるから、(中略)広大地の評価の適用を認めるのが相当である。

審判事例②は国税不服審判所まで争われましたが、実は本件土地に建つ当該建物(鉄筋コンクリート造4階建)は既存不適格建築物です。現存する建物と同じものは建築不可なので、相続税の申告時にその旨を書面添付するか、広大地判定の意見書を添付しておけば、税務署からマンション適地と判断されずにすんだ可能性が高いと思われます。

あくまでも結果論ですが、このようにわずかなことで結果は大きく異なります。実際、本件土地の評価額は下記の通りになりました。

このように広大地として認められるか否かによって、評価額は倍以上も違ってしまいます。

請求人(納税者):2億3,783万2,594円
原処分庁(税務署):5億599万8,416円
国税不服審判所:2億3,783万2,594円

既存不適格建築物
建築時には適法でも、法令の改正等により現行法においては不適格なところがある建築物のことをいいます。

書面添付制度…
税理士法第33条の2に規定されている制度のことです。

ここまで紹介した審判事例が示すように、相続発生日以降の土地利用の状況によって、評価対象地がマンション適地になったり、広大地として認められたりします。したがって、相続税の税務調査が来るまでは、慎重に対応する必要があります。なぜならば、評価対象地の現況の「見てくれ」(何に利用されているか)は、広大地判定の基礎資料になるからです。

土地利用の状況は、相続発生時点の状況で判断するのが本来の姿ですが、相続発生後のその土地の利用状況は、その地域がどのような地域に移行しつつあるのかを知る判断材料になります。

国税不服審判所は、現実にそのような動きにあることを認識する必要があります。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/