開発行為と広大地評価判定

2019年6月12日

本件土地は開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来に新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件地域の標準的使用からしても有効利用と考えられるので、広大地には該当しないとした事例(大阪・公開 平成23年9月5日裁決)

本件土地の概要広大地に該当しないとした事例

本件土地の地積は、948.67㎡で、〇〇駅から徒歩約12分に位置する。
本件土地の西側は、幅員6.1m市道(市道L線)で、都市計画道路が指定され、西側へ拡張し、幅員8mの予定です。
本件土地の属する地域は、第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率150%)です。

本件土地上には、鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建床面積766.34㎡(以下本件建物という)が存し、賃貸マンションの用に供している。平成4年7月1日付で所有者保存登記されている。
本件土地は、本件建物の敷地及び本件建物入居者専用の駐車場としてされている。

争点

贈与により取得した本件土地は、評価通達24-4に定める広大地に該当するか否か。

請求人の主張

イ 現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、広大地通達の定めの適用を排除するべきではない。

ロ そうすると、本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件土地における経済的に最も合理的な開発行為は戸建分譲開発であり、その開発行為を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であることから、広大地に該当する。

原処分庁の主張

イ 広大地通達における広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地をいう旨定められている。

したがって、既に開発行為を了しているマンション等の敷地用地については、新たに公共公益的施設用地の負担が生じることはないため、標準的な地積に比して著しく広大であっても、広大地には該当しない。

ロ 本件土地は、本件建物及び本件建物入居者専用の駐車場の敷地であると認められるから、既に開発を了しているマンション等の敷地用地であるので、新たに公共公益的施設用地の負担が生じることはないため、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地かどうかを検討するまでもなく、本件土地は広大地には該当しない。

 

審判所の判断

本件審査請求においては、本件土地が広大地通達で定める「広大地」に該当するか否かに関して争いがあるが、この点を除き、本件贈与に係る財産の評価につき、評価通達の定めによることについては請求人と原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても、評価通達に定められた方式によらないことが正当として是認されるような特別の事情は認められない。

そこで以下、評価通達の定めに従って、本件土地が広大地に該当するか否かについて判断する。

(1) 本件土地の所在する「その地域」

本件〇丁目地区の土地、建物の開発状況及び利用状況についてみると、登記事項証明書の記載によれば、本件東側地域においては、135戸の建物のうち、戸建住宅が133戸、共同住宅が2棟であり、戸建住宅の建築年次別の内訳は、昭和30年代以前が11戸、昭和40年代が13戸、昭和50年代が27戸、昭和60年代が9戸、平成元年代が43戸、平成10年以降が30戸であり、共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が1棟、平成元年代が1棟であり、本件贈与の日以降においては、新築された戸建住宅及び共同住宅は認められないのに対し、本件西側地域においては、32戸の建物のうち、戸建住宅が24戸、共同住宅が8棟であり、戸建住宅の建築年次別の内訳は、昭和30年代以前が5戸、昭和40年代が6戸、昭和50年代が8戸、昭和60年代が2戸、平成元年代が3戸であり、共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が2棟、昭和60年代が1棟、平成元年代が2棟、本件贈与の日以降が3棟(3階建以下)であることからすると、本件東側地域と本件西側地域では、開発状況や土地の利用状況は大きく異なっているといえる。
さらに、本件西側地域の西側、南側及び北側は、それぞれ、市道L線、市道d号線及び市道e号線を境として町名を異にしている。

以上によれば、本件土地の属する「その地域」は、本件西側地域と認めるのが相当である。

(2) 本件土地の地積

広大地通達の適用される土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地に該当する必要があるところ、本件土地の地積は948.67平方メートルであり、上記本件公示地(本件土地の北90mに位置する)の地積である約426平方メートル及び〇〇市における都市計画法上の開発許可を要する面積基準である500平方メートルを上回っている。

(3) 本件土地の利用状況

以上のとおり、本件土地は、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない。

(4) 本件西側地域における宅地の利用状況

上記のとおり、本件西側が広大地通達における「その地域」と認められるところ、本件西側地域内に存する宅地の用途別の面積の割合は、上記のとおり、登記事項証明書及び住宅地図による限り、戸建住宅用地が66.96%、共同住宅(3階建以下)用地が24.94%、共同住宅(4階建以上)用地が8.10%であり、また、本件贈与の日を含む平成10年以降に本件西側地域内で新築された建物は共同住宅のみであることからすると、本件西側地域は、戸建住宅と共同住宅が混在する地域であると認められ、これらの用途のいずれもが本件西側地域における宅地の標準的な利用形態であると認めるのが相当である。

そうすると、本件土地は、標準的な利用形態である共同住宅用地として既に利用されていることになり、周囲の状況に比して特殊な形態として利用されているものとはいえない。すなわち、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されているということができる。

(5) 小括

本件土地は、その地積が、本件公示地の地積である約426平方メートル及び〇〇市における都市計画法上の開発許可を要する面積基準である500平方メートルを上回っているものの、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されていると認められるから、広大地通達の趣旨に鑑みても、広大地通達にいう広大地には該当しないものと認めるのが相当である。

(6) 請求人の主張について

確かに、本件土地上に本件建物が建築されていることは、地積が著しく広大であるか否かの判定に直接影響を及ぼすものではないが、上記(5)のとおり、本件土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるから、広大地通達の趣旨に鑑みても、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は同通達にいう広大地に該当しないものと認められるのであって、請求人の主張は、採用することができない。

(7) まとめ

以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、上記の更正の請求に対し、更正すべき理由がないとした原処分に違法はない。

(注)

1 平成23年2月10日及び平成23年4月27日時点の登記事項証明書並びに住宅地図に基づいて作成している。

2 登記事項証明書における種類が居宅と表示されている建物については、戸建住宅に分類したもので、道路及び進入路等については除いている。

本件土地の形状

0907本件土地の形状

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コメント

本件西側地域における宅地の利用状況について、審判所は、下記のように分析しました。

『本件西側が広大地通達における「その地域」と認められるところ、本件西側地域内に存する宅地の用途別の面積の割合は、登記事項証明書及び住宅地図による限り、戸建住宅用地が66.96%、共同住宅(3階建以下)用地が24.94%、共同住宅(4階建以上)用地が8.10%であり、また、本件贈与の日を含む平成10年以降に本件西側地域内で新築された建物は共同住宅のみであることからすると、本件西側地域は、戸建住宅と共同住宅が混在する地域であると認められ、これらの用途のいずれもが本件西側地域における宅地の標準的な利用形態であると認めるのが相当である。』

国税庁のホームページには、広大地の評価における「中高層の集合住宅等」の範囲の項目で『「中高層」には、原則として「地上階数3以上」というものが該当します』と述べていますので、本件において上記のごとく共同住宅(3階建以下)と共同住宅(4階建以上)の区分をするのではなく、

①戸建住宅用地

②共同住宅(2階建)

③共同住宅(3階建以上)

と区分すべきと考えます。

『共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が2棟、昭和60年代が1棟、平成元年代が2棟、本件贈与の日以降が3棟(3階建以下)である』と記載されている共同住宅についても、2階建ての共同住宅が何棟、3階建て以上の共同住宅が何棟と分ければ、非常に分析がし易いのですが、2階建てと3階建てを含めてしまえば、広大地の分析は不透明になってしまいます。
2階建てと3階建てを分けていれば、その地域の共同住宅の大半は2階建ての場合も考えられます。
そうなると、「その地域」は、大半が戸建住宅用地に該当するのではないかとも考えられます。
すると本件の結論が、もしかしたら変わっていたのではないかなと思います。
本件において、共同住宅の括りを3階建て以下としたことは、とても悔やまれます。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/