著しく地積が広大な土地か否かが争われた事例

2019年6月12日

広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。

本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地に該当しないので、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認めるものに該当するか否かについて、検討するまでもないとした事例(東裁(諸)平27第98号 平成28年2月18日裁決)

本件土地の概要

本件土地は■■■の約1,800mに位置し、北側幅員約20mの道路(以下■■という)と西側幅員約8mの道路に接面するほぼ整形な角地で、その地積は1,298.47㎡である。広大地に該当しないとした事例

本件土地は、本件相続の開始時において、本件被相続人が主宰する法人■■■■に貸し付けられ、同社所有の建物(鉄骨造陸屋根3階建 延床面積1798.10㎡、以下本件建物という)が存し、同社の事務所として利用されている。

争点

本件土地は、本件通達に定める広大地に該当するか否か。

請求人らの主張

本件土地は、以下の理由から、本件通達に定める広大地に該当する。

(1)「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」に該当するか否かについて

イ 本件通達に定める「その地域」について

本件通達に定める「標準的な宅地の地積」について、請求人らの主張地域における「標準的な宅地の地積」は100㎡前後であり、本件土地の地積は1,298.47㎡であるから、本件土地は、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地」に該当する。

(2)「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」に該当するか否かについて

イ  精通者の意見によれば、本件土地は、奥行距離が長く、路地状開発は不可能である。

ロ 上記イ及びロのとおり、本件土地は、開発行為を行うとした場合に路地状開発は不可能であり、道路の設置が必要な土地であるから、公共公益的施設用地の負担が必要と認められる土地である。

原処分庁の主張

本件土地は、以下の理由から、本件通達に定める広大地に該当しない。

(1)「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」に該当するか否かについて

イ 本件通達に定める「標準的な宅地の地積」について

原処分庁主張地域における土地の標準的な使用方法は、店舗等としての利用が最も多いことから、「店舗等の敷地」である。

原処分庁主張地域における「標準的な宅地の地積は、600㎡ないし1,300㎡程度であり、本件土地の地積は1,298.47㎡であることから、本件土地は、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地」には該当しない。

(2)「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」に該当するか否かについて

上記のとおり、本件土地は、本件通達に定める「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地」には該当しないことから、「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」に該当するか否かについては、検討するまでもない。

審判所の判断

イ 当てはめ

(イ)本件土地に係る「その地域」について

本件土地周辺の土地利用の公法上の規制、土地の利用状況の連続性等を総合勘案すると、本件土地に係る「その地域」は、本件土地の存する準工業地域から、■■■から西側の地域、■■■■の敷地及び■■■を除いた地域、すなわち、本件地域(原処分庁主張地域と同一の地域)と認めるのが相当である。

(ロ)本件土地に係る「その地域における標準的な宅地の地積」について

本件土地に係る「その地域」である本件地域には、地価公示の標準地及び都道府県地価調査の基準地のいずれも存在しない。本件地域における土地の利用状況をみると、上記によれば、画地数にして半分近く、地積割合にして約3分の2が店舗等の敷地として利用されているから、本件地域における土地の標準的使用は店舗等の敷地であると認められる。本件地域における店舗等の敷地の平均値は907.94㎡であるところ、本件土地の地積(1298.47㎡)は、上記平均値の1.5倍に満たず、また、店舗等の敷地の地積の範囲は206.67㎡から2733.84㎡までと大小様々であるものの、店舗等の敷地の35画地のうちの3分の1以上である13画地は1000㎡を超え、さらに、うち5画地は本件土地よりも地積が大きく、かつ1600㎡を超えている。これらの点を総合勘案すれば、本件土地は、本件地域における店舗等の敷地の地積に比して著しく広大な宅地であるとは認められない。

(ハ)小括

上記のとおりであるから、本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地には当たらない。

ニ 結論

上記のとおり、本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地には該当しないから、本件通達に定めるその他の要件を検討するまでもなく、本件通達に定める広大地には該当しない。

コメント

広大地に該当するか否かを判断するにあたり、「その地域」の決め方がとても重要となります。さらに「その地域」が決まれば、「その地域における標準的な宅地に比して著しく地積が広大」であることが必要です。

本件の場合、『本件地域における土地の利用状況をみると画地数にして半分近く、地積割合にして約3分の2が店舗等の敷地として利用されているから、本件地域における土地の標準的使用は店舗等の敷地である』と認め、『本件地域における店舗等の敷地の平均値は907.94㎡であるところ、本件土地の地積(1298.47㎡)は上記平均の1.5倍に満たず…広大な宅地であるとは認められない』として広大地を否認しました。

本件のように本件土地が幅員約20mの路線商業地域沿いに存する土地の場合は、路線商業地域沿いを商業等の特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域としてとらえる必要があるのかな、と思います。請求人らが主張する地域をとると(別図1)、住宅が多く存する地域となり、路線商業性がうすれてくるため、商業、住宅、工業など特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を表すことから遠ざかってしまいますので、要注意です。

請求人らが主張する本件土地の開発想定図

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/