借地上の建物の朽廃
大修繕がなされた場合の朽廃の認定時期
借地上の建物が朽廃しているといえるか。また、貸主の承諾を得て借地上の建物に大修繕がなされた場合の朽廃時期はどのようになるか
(札幌高判昭39・2・25下民15・2・376)
判旨
昭和34年7月当時の本件建物は、建物全体としては丸太支柱による補強と相まってなお数年間は存立を全うし得る状態にあり、その当時店舗兼住居として使用されていたのであるから、いまだ建物としての社会経済上の効用を失っておらず、朽廃していたとはいえない。
借主が、借地上の建物の朽廃すべかりし時期以前に、貸主の承諾を得て、これに大修繕を加え、そのため建物の命数が延長された場合には、当該借地権は修繕後の建物が現実に朽廃するまで消滅しないものと解するのが相当である。
裁判所の判断
本判決はおおむね以下のとおり判示して、控訴を棄却した。
旧借地法2条1項但書にいう「朽廃」とは、建物の構造の各部における材料そのものに浸透した物質的腐朽のみを指すものでなく、建物の要部に生じた腐蝕状態によって建物全体がもはや構造上の意義を失った場合換言すれば建物としての社会経済上の効果を失った場合を指す。
昭和34年7月当時の本件建物は、その主要構成部分である土台がほとんど全面的に廃損し柱の一部も腐蝕老朽化しこれに基因して建物に傾斜を生じていることが明らかではあるが、建物全体としては丸太支柱による補強と相まってなお数年間は存立を全うし得る状態にあり、その当時店舗兼住居として使用されていたのであるから、いまだ建物としての社会経済上の効用を失っておらず、本件建物が昭和34年2月1日の時点で朽廃していたとはいえない。
本件建物にはその後大修繕が施されており、昭和37年7月30日当時現実に朽廃していなかったことは明白であるところ、借主が借地上の建物の朽廃すべかりし時期以前に、貸主の承諾を得た上で建物に大修繕を加えた場合には、当該借地権は修繕後の建物が現実に朽廃するまで消滅しないものと解するのが相当である。
貸主の承諾がなされたときは、大修繕により命数延長された建物が現実に朽廃するまで借地関係を存続させることの暗黙の合意が当事者間に成立したものと推認することが相当であるからである。
「本件では、Yによる大修繕について貸主Aの代理人Bが承諾しており、貸主の地位を承継したXは承諾の効果も承継する。また、Xは、本件建物の借主として本件建物の修繕を了解しており、本件土地購入時には、Bに対し、引き続きYに対して本件土地を賃貸する旨確約しているのであるから、承諾の効果を承継したとしても不測の損害を被ることはない。
そうすると、本件では、昭和37年7月30日の時点で現実に本件建物が朽廃していないのであるから、借地権が消滅することはなく、Xの請求は認められない。
「借地上の建物をめぐる事例」(新日本法規出版より引用)
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