その地域の標準的使用と広大地判定
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地が存する地域は、大規模店舗・事務所・ファミリーレストラン・複合商業施設が連たんする地域に存し、現に宅地として有効利用されている建築物と認められるので、広大地には該当しないとした事例
(仙裁(諸)平17第12号 平成18年3月10日裁決)
1.本件各土地の概要
(1)本件甲土地
(イ)本件甲土地の地積は、3,029.41㎡の土地で、店舗の敷地として利用されている。
本件土地の属する用途地域は、準工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)です。
(ロ)本件甲土地には、平成12年3月7日付の事業用借地権設定契約公正証書により借地権設定者を■■■とし借地権を■■■とする事業用借地権の設定を目的とした契約がされており、その要旨は、次のとおりである。
A 期 間 平成12年3月9日から平成32年3月8日までの20年間
B 使用目的 隣接する周辺の土地と合せて、これらを一体として事業のための店舗、倉庫及び事務所等の商業施設並びに駐車場の用地として使用する。
2.争点
本件甲土地は評価基本通達24-4(広大地)を適用可能か否か。
3.請求人らの主張
(イ)広大地の評価の適用
A 本件甲土地は、■■■の裏通りに当たるため単独で郊外型店舗等の敷地として使用することは不可能である。
B なお、原処分には、次のとおりの誤りがある。
(A)他の土地と併合した形で利用されていることをもって直ちに広大地に該当しないとしており、併合した価値まで本件甲土地に吸収することになり限定価格に属するから時価を逸脱している。
(B)評価基本通達に定める広大地の評価方法は公知の事実であり、特段の理由が見当たらないにもかかわらず、請求人らに限って評価基本通達を適用しないのは法執行の平等原則に反する。
(ロ)評価方法
本件甲土地の価額は、評価基本通達に定める広大地の評価を行い、高低差に係る1割減額とした上で、定期借地権の価額を控除した価額とすべきであり、原処分庁が行った側方路線影響加算は論外である。
4.原処分庁の主張
(イ)広大地の評価の適用
A 広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で、都市計画法に規定する開発行為を行うとした場合には、公共公益的施設用地として相当規模の負担が必要と認められるものをいい、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地や現に宅地として有効利用されている建築物の敷地などについては、広大な土地であっても評価基本通達24-4に定める広大地には該当しないとされている。
B 本件甲土地は、都市計画法上の用途地域が準工業地域に指定され、第一種住居地域では建築することのできない床面積が3,000㎡を超える■■■の店舗の敷地として利用されており、また、その周辺は、■■■沿いに準工業地域に指定され、郊外型商業施設用地として利用されていることが認められるので、広大地とはいえないことになる。
(ロ)評価方法
したがって、本件甲土地は、側方路線影響加算を行い、■■■の定期借地権の価額を控除した金額によって評価することになる。
5.審判所の判断
(2)本件甲土地の評価について
イ 認定事実
(イ)本件甲土地は、準工業地域内の■■■に沿って敷地面積が概ね500㎡から5,000㎡の大規模店舗、事務所、ファミリーレストラン、複合商業施設等の用途に供されることを中心としたまとまりのある地域に属していると認められる。
(ロ)■■■の店舗は、不動産登記簿によると、平成12年2月22日に建築され、その床面積は4,711.84㎡である。
ロ 広大地の評価の適用
(イ)評価基本通達24-4は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものを広大地として、その評価方法について定めているところ、その趣旨は、未開発の土地を宅地として活用する場合や広大な宅地を再開発する場合には、都市計画法による開発行為が必要となり、その結果、道路、公園などの公共公益的施設用地としてかなりの提供用地が生ずることから、その土地の評価に当たって提供用地となる部分の地積を考慮することとしたものである。
したがって、その地域の標準的使用によって現に宅地として有効利用されている建築物の敷地などについては、評価に当たって提供用地となる部分の地積を考慮する必要がないから、その地域の標準的な地積に比して著しく広大な宅地であっても評価基本通達に定める広大地には該当しないものと解される。
(ロ)これを本件甲土地について、その所在する地域の特性及び現在の使用内容が有効利用であるか否かについてみると、本件甲土地の所在する地域は、準工業地域内の大規模店舗、事務所、ファミリーレストラン、複合商業施設等が連たんする地域であることが認められ、そうすると、■■■■■の店舗の敷地としての使用は、その地域の標準的使用に当たるから、本件甲土地は、現に宅地として有効利用されている建築物の敷地であると認められる。
(ハ)したがって、本件甲土地は、評価に当たって提供用地となる部分の地積を考慮する必要がなく、広大地には該当しないから、評価基本通達24-4を適用することはできない。
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コメント
広大地とは、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で、かつ都市計画法に規定する開発行為を行うとした場合には公共公益的施設用地が発生すると認められる土地」のことをいうと定めています。
又広大地の評価の適用にあたり、その地域の標準的使用によって現に宅地土地として有効利用されている建築物の敷地などについては、評価に当たって提供用地となる部分の地積を考慮する必要がないから、その地域の標準的な地積に比して著しく広大な宅地であっても評価基本通達に定める広大地には該当しないと解される、と審判所は判断しています。
本件甲土地は店舗の敷地として利用されていて、その地域は大規模店舗、事務所、ファミリーレストラン、複合商業施設等の用に供されていることを中心としたまとまりのある地域に属しているということなので、本件甲土地は現に宅地として有効利用されている建物の敷地なので、広大地には該当しないと審判所は判断しました。
本件甲土地が現に宅地として有効利用されているということは、その地域の土地の標準的使用と同じということを言っています。
それは上記にその地域は大規模店舗、事務所、ファミリーレストラン、複合商業施設等の用に供されていることを中心としたまとまりのある地域としているところにポイントがあります。
本件甲土地は店舗として標準的使用されてますよということは現に宅地として有効利用されているので、公共公益的施設用地の負担が必要となる土地ではないと認められるから、広大地には該当しないといっています。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)