マンション適地か否か
広大地は、一昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地はマンション適地等に該当するか否かが争われた事例
(東裁(諸)平24第123号 平成24年12月13日裁決)
1.本件A土地の概要
本件A土地の地積は1,765.87㎡の土地で、駅から約650mに位置し、同駅周辺には多数の商業施設が存在する。
本件A土地は、鉄筋コンクリート造陸屋根3階建の共同住宅(以下本件A共同住宅という)の敷地である。
本件A共同住宅は平成13年に新築した建物である。
2.争点
本件A土地は広大地に該当するか否か。
3.原処分庁の主張(争点1:本件A土地は広大地に該当するか)
本件A土地は、次のとおり、広大地に該当しない。
(イ)本件A土地は、次の理由から、広大地通達に定める「その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの」(以下「マンション適地等」という。)に該当する。
A 本件A土地の所在する地域には、中高層の集合住宅等が複数あり、また、同地域では、平成12年から平成20年までの間、中高層の集合住宅等の建築事例が3件ある反面、開発許可を要する土地を細分化して戸建住宅用地として開発した土地はない。
4.請求人らの主張(争点1:本件A土地は広大地に該当するか)
(イ)本件A土地は、次の理由から、マンション適地等に該当しない。
A マンション適地等の判断に当たっては、社会・経済情勢等も考慮すべきであり、平成20年9月のいわゆるリーマンショックの影響を考慮すると、原処分庁が主張する3件のマンション開発事例は、リーマンショック前の事例であると考えられるから、本件A土地がマンション適地等に該当するか否かの判断においてしんしゃくすべきでない。
(ロ)よって、本件A土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の分譲素地である。
そして、本件A土地を戸建住宅の敷地として開発するには、敷地内に道路開設が必要であり、公共公益的施設用地の負担が生じる。
5.審判所の判断(争点1:本件A土地は広大地に該当するか)
イ.当てはめ
本件A土地の広大地該当性を検討すると、以下のとおりである。
(イ)本件A地域における標準的使用及びマンション適地等の判定について
①本件A地域は、準住居地域(容積率200%・建ぺい率60%)であり、マンション等の建築に係る開発規制が厳しくない地域であること、②本件A地域には、中高層の集合住宅の敷地が6カ所存在し、これらの地積が、最小約1,200㎡、最大約3,500㎡で、平均すると約2,300㎡であること、③本件相続開始日前10年間に本件A地域で土地の開発許可を受けた建築事例(3件)の全てが共同住宅の建築事例であること、④本件A地域は、a駅からの徒歩圏内に位置し、同駅及び同駅周辺の商業施設への接近性に優れていることを総合勘案すると、本件A地域における土地の標準的使用は、中高層の集合住宅の敷地であり、その地積は1,200㎡程度ないし3,500㎡程度であると認められる。
そうすると、本件A土地(地積1,765.87㎡)は、広大地通達において広大地から除かれるマンション適地等に該当する。
(ロ)結論
したがって、本件A土地は、広大地に該当しない。
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コメント
評価基本通達24-4では、広大地は「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(中略)を除く」とあります。
つまり、マンション適地に該当する土地は広大地として認められません。
それでは、マンション適地をどう捉えたらいいのでしょうか。17年情報には、下記のように記載されています。
「評価しようとする土地が、課税時期においてマンション等の敷地でない場合、マンション等の敷地として使用するのが最有効使用と認められるかどうかの判定については、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とすることとなる。しかし、戸建住宅とマンション等が混在する地域(主に容積率200%の地域)は、最有効使用の判定が困難な場合もあることから、このような場合には、周囲の状況や専門家の意見から判断して、明らかにマンション等の敷地に適していると認められる土地を除き、広大地に該当する。」
なお、評価する土地がマンション適地かどうかの判断基準としては、次のような基準が参考になります。(清文社刊「特殊な画地と鑑定評価」土地評価理論研究会(1993年8月)より抜粋)
イ 近隣地域又は周辺の類似地域に現にマンションが建てられているし、また現在も建築工事中の者が多数ある場合、つまりマンション敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその以降の程度が相当進んでいる場合
ロ 現実のマンション建築状況はどうであれ、用途地域・建ぺい率・容積率や当該地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性から判断しても、換言すれば、社会的・経済的・行政的見地から判断して、まさにマンション適地と認められる場合
また、本件裁決書においてマンション適地か否かの判断基準を下記のように具体的に示していますので、実務上参考になります。
「本件A土地の面積は1,765㎡ですが、本件土地上には築年数8年の共同住宅があり、しかも貸家の稼働率は90%を超えていました。また、駅まで直線距離で約650mと交通に便利で、駅周辺には多数の商業施設が存在します。」
それでも請求人は広大地であることを主張し、争われました。
本分と重複しますがその一部を記載します。
「(ロ)本件■地域における標準的使用及びマンション適地等の判定について
①本件■地域は、準住居地域(容積率200%・建ぺい率60%)であり、マンション等の建築に係る開発規制が厳しくない地域であること、
②本件■地域には、中高層の集合住宅の敷地が6カ所存在し、これらの地積が、最小約1,200㎡、最大約3,500㎡で、平均すると約2,300㎡であること、
③本件相続開始日前10年間に本件■地域で土地の開発許可を受けた建築事例(3件)の全てが共同住宅の建築事例であること、
④本件■地域は、a駅からの徒歩圏内に位置し、同駅及び同駅種変の商業施設への接近性に優れていることを総合勘案すると、本件■地域における土地の標準的使用は、中高層の集合住宅の敷地であり、その地積は1,200㎡程度ないし3,500㎡程度であると認められる。そうすると、本件A土地(地積1,765.87㎡)は、広大地通達において広大地から除かれるマンション適地等に該当する。」
以上のように、その地域の状況を分析することによって、広大地であるか否かを把握することが可能になります。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)