地目の判定の仕方

2019年4月18日

宅地造成を誰が行ったかどうかは地目の判定に影響を及ぼすものではなく、かつ又本件土地は課税時期において建築途上の共同住宅の敷地があるので、宅地と解するのが相当とした事例 

 (名裁(諸)平11第52号 平成11年12月22日裁決)

1.本件土地の概要

(1)本件B土地

甲土地(田、1011㎡)と乙土地(田、376㎡)を併せて本件B土地という。被相続人は、本件B土地の宅地へ地目の判定の転用について平成7年12月6日付で農地法第4条(農地の転用の制限)の許可を受けた。

本件B土地のうち、甲土地は平成8年3月28日に地目が宅地に変更され、宅地983.21㎡(以下C宅地という)と公衆用道路28㎡(以下D道路という)になり、乙土地は平成8年3月28日に地目が雑種地に変更された。(以下この土地をE雑種地という)C宅地は、本件共同住宅の敷地として、E雑種地は本件共同住宅に係る駐車場として、それぞれ使用されている。

2.争点

相続財産である土地の価額の評価に当たって、宅地造成された土地を宅地又は造成前の農地のいずれで評価すべきか

3.請求人らの主張

(イ)本件B土地の現況

本件課税時期における本件B土地の現況は宅地となっているが、この宅地の造成及び本件共同住宅の建築は被相続人名義で契約を行ったものであるところ、当時、同人は病気のため自分自身で判断し決定できる状態ではなく、この契約は■■■が一存で行ったものである。

したがって、この宅地造成は被相続人の意志の及ばないところでなされたものであるから、本件B土地の価額は、宅地造成前の農地として評価すべきである。

(ロ)借地権の存否

仮に、本件B土地を宅地として評価する場合、本件B土地上には本件課税時期において、実質の所有者を■■■とする建築途上の本件共同住宅が存在し、更地としての利用が制限されているから、借地権相当額を控除すべきである。

なお、原処分庁は、■■■の本件B土地の敷地利用権は使用貸借によるものであり、本件B土地の評価において自用地としての価額から控除すべき借地権相当額はない旨主張するが、使用貸借といえるためには貸主の意思表示が必要であるところ、被相続人は本件B土地の造成時点から意識不明の状態にあり■■■と被相続人が使用貸借契約を締結することは不可能であったころから、その主張に根拠はない。

4.原処分庁の主張

(イ)本件B土地の現況

本件B土地は、本件課税時期前に宅地造成工事が行われ、本件B土地上には、本件課税時期において建築途上の本件共同住宅が存在していたことから、その評価に当たっては、宅地として評価することが相当である。

(ロ)借地権の存否

本件B土地について、被相続人と■■■との間には賃貸借契約の締結及び地代の授受の事実もないと認められることから、本件B土地に係る■■■の敷地利用権は使用貸借によるものと認められるので、本件B土地の評価に当たって、自用地としての価額から控除すべき敷地利用権の価額はないとするのが相当である。

2.審判所の判断

(1)本件B土地の価額について

本件B土地の価額の評価に当たり、宅地で評価するか、宅地造成前の農地で評価するかについて争いがあるので、以下審理する。

イ 認定事実

■■■は、異議審理庁所属の担当職員に対し、要旨次のとおり申述している。

(イ)被相続人は、平成5年9月ころから病気のため入院して手術を受けたが、同年10月ころからは意識不明の状態が継続し、相続開始(■■■■■)に至ったものであり、本件B土地の宅地造成工事及び本件共同住宅の建築工事の意思決定には全く関与していない。

(ロ)本件B土地の宅地造成工事を含む本件共同住宅の建築請負契約の名義及び本件借入金の名義が、いずれも被相続人の名義で行われているのは、本件B土地の名義が被相続人にあることを理由としたものであり、これらの行為は被相続人が病気の為意識不明の状態であったことから同人の了解を取ることなく、■■■が単独で行ったものである。

(ハ)本件課税時期においては、本件B土地の宅地造成工事はすべて完了しており、本件共同住宅の建築完成割合は、80%ないし90%である。

ロ 土地の評価上の区分

評価通達等に基づき評価された価額は合理的であると解されているところ、評価通達7《土地の評価上の区分》は、土地の価額は原則として、宅地、田、畑、山林等の地目の別に評価するものとし、また、地目は、すべて課税時期の現況によって判定し、地目の区分は、不動産登記事務取扱手続準則第117条《地目の定め方》及び第118条に準じて判定する旨定めている。

したがって、たとえ、登記簿上の地目が農地であっても、課税時期の現況が宅地である土地は、宅地として評価することとなる。なお、不動産登記事務取扱手続準則第117条は、田については、「農耕地で用水を利用して耕作する土地」、宅地については、「建物の敷地及びその維持もしくは効用を果たすために必要な土地」と定めている。

ハ 本件B土地の地目の現況

上記に照らして本件B土地の地目の現況をみると、基礎事実並びに上記の■■■の申述から、本件課税時期においては、本件B土地上に建築途上の本件共同住宅が存在しており、本件B土地は、本件共同住宅の敷地として利用されている土地であることが認められる。

また、評価通達7の定めから判断すると、本件の場合、宅地造成を誰が行ったかどうかは、地目の判定に影響を及ぼすものではないと認められる。以上のことから本件B土地の課税時期における地目の状況は宅地と解するのが相当である。本件B土地を農地として評価すべきである旨の請求人らの主張には理由がない。

ニ 借地権の存否

次いで、請求人らは、仮に、本件B土地が宅地として評価される場合、本件課税時期において、本件B土地上には実質の所有者を■■■とする建築途上の本件共同住宅が存在し、更地としての利用が制限されているから、借地権相当額を控除すべきである旨主張するので、借地権相当額を控除すべきか否かについて、以下審理する。

(イ)本件B土地の宅地造成工事を含む本件共同住宅の建築請負契約は、いずれも被相続人名義で行われているものの、被相続人はこれらの工事について全く関与しておらず、これらの行為は■■■が単独で行ったものであるとすることから、本件B土地の使用について、被相続人と■■■との間に①特段の契約、②地代の授受、③権利金等の授受があったとは認めることはできない。

(ロ)そうすると、被相続人の意識不明の状態がどの程度であったか定かではないが、被相続人と■■■が親子関係にあった当時生計を一にしていた点を考慮に入れてこれらを総合判断した場合、本件B土地の使用関係は、これを使用貸借に基づくものと推認するのが相当である。

(ハ)本件B土地は、■■■の使用貸借による敷地利用権の目的とされていたものであり、使用貸借による土地の敷地利用権は、借地権のように借地借家法上の保護を受ける強い権利に比較して、いわば権利性の薄弱なものであり、専ら当事者の信頼関係のみを基盤とするのが通例であり、経済的価値を有しないものと解されていることから、本件B土地に係る■■■の敷地利用権の価額は零円として評価するのが相当である。

(ニ)また、一歩進んで、請求人らが主張するように、本件共同住宅の建築当時、被相続人が病気のため意識不明で全く判断能力がない状況にあったため本件B土地について使用貸借契約を締結することが不可能であったとしても、■■■が被相続人の了解を得ずに本件B土地に本件共同住宅を建築した行為について、本件B土地の敷地利用権を保護する法益はないと解するのが相当である。

なお、■■■が負担した本件B土地の宅地造成工事費用については、異議審理庁は、当該工事費用を被相続人の負担すべき債務として認定しており、請求人らは、相続税の課税について不利益を受けていないことが認められる。

(ホ)以上のことから判断すれば、本件B土地の評価について、自用地としての価額から控除される敷地利用権の価額はないものとするのが相当であり、請求人らの主張には理由がない。

裁決要旨(平11.12.22名裁(諸)11-52)

請求人らは、課税時期における本件土地の現況は宅地であるが、この宅地の造成は契約上は被相続人名義で行われているが、この契約は請求人甲の一存で行ったものであり、被相続人の意思の及ばないところでなされたものであるから、宅地造成前の農地として評価すべきである旨主張する。

しかしながら、評基通7は、土地の価額は課税時期における地目の現況に基づき評価する旨定めており、宅地造成を誰が行ったかどうかは地目の判定に影響を及ぼすものでないと認められるところ、本件土地は、課税時期において建築途上の共同住宅の敷地の用に供されていることから、宅地と解するのが相当であり、原処分は相当である。

 

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コメント

宅地の評価は、1画地の宅地ごとに評価することになっています。即ち利用の単位となっている1区画の宅地として評価します。地目の判定については、財産評価基本通達7(土地の評価上の区分)は、「地目は、課税時期の現況によって判定する」と定めています。

本件相続発生日において、本件B土地の宅地造成工事はすべて完了しているので、誰が宅地造成をしたかに関わらず、宅地と判定することになります。

 

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