標準的な画地と広大地評価の判定の仕方

2019年6月11日

本件土地は、開発道路を敷設せずとも、標準的な敷地に区画割が可能なので、広大地に該当しないとした事例

(関裁(諸)平23第67号 平成24年3月27日裁決)

1.本件各土地の概要

本件1土地の地積は、2,166㎡(仮換地地積)です。
本件土地は、区画整理事業地内に存する土地で、東、南及び北の三方で幅員6mの市道に接面するL字形の形状を有する土地である。
本件1土地は、本件相続開始日において、商業施設の駐車場用地として貸し付けられていた。
又本件1土地の属する用途地域は、第二種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)である。

2.争点

本件1土地は、評価通達24-4に定める広大地に当たるか否か。

3.原処分庁の主張

広大地に該当しないとした事例本件1土地は、開発行為を行うとした場合に、次のとおり、公共公益的施設用地の負担を要せず、かつ、法令等に違反することなく標準的な宅地の地積に区画割りすることが可能であると認められることから、評価通達24-4に定める広大地に当たらない。

(イ)本件1土地は、別図1の区画割りのとおり、潰れ地を生じさせることなく標準的な宅地の地積である200㎡から300㎡までで区画割することが可能であり、この区画割りによる分譲開発が経済的に最も合理性がある。

(ロ)そもそも、本件1土地は、本件区画整理事業地に存し、都市計画法上必要とされる公共公益的施設用地は既に確保、整備されているから、別図2の区割図のようにあえて開発道路を敷設する区画割が経済的に最も合理的であるとするのは相当ではない。

4.請求人の主張

仮に、評価通達に定められた評価方法により評価するとしても、本件1土地は、その周辺地域の標準的な宅地の地積である200㎡から300㎡までに比し地積が著しく広大で、開発行為を行うとした場合に、別図2の区画割図のとおり、公共公益的施設用地の負担が必要であるから、評価通達24-4に定める広大地に当たる。

また、別図2の区割図のような区画割が、1区画の面積が売れ筋と想定される250㎡以下になるよう区画割され、戸建住宅の敷地として経済的に最も合理的であるのに対し、原処分庁が主張する別図1の区割図のような区画割は、現実的ではなく、1区画の面積も大きすぎることから合理的ではない。

5.審判所の判断

(1)認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。

イ ■■■の市街化区域において、開発区域の面積が1,000㎡以上で区画形質の変更を伴う工事を行う場合には、開発行為の許可を受けなければならない。

また、■■■■第12条《宅地計画基準》第1項は、戸建住宅用の宅地の面積をおおむね180㎡以上確保するよう定めている。

(2)争点について

(イ)本件1土地地域は、戸建住宅、駐車場用地及び畑が混在し、土地の利用状況、環境等がおおむね同一であると認められることから、評価通達24-4で定める「その地域」の範囲とするのが相当である。

そして、本件1土地地域における標準的な宅地である戸建住宅の敷地の地積は、200㎡から300㎡程度までの規模であると認められる。

そうすると、本件1土地の地積2,166㎡は、■■■で開発許可を受けなければならない地積である1,000㎡以上であり、上記の標準的な宅地の地積である200㎡から300㎡程度までの規模に比して著しく広大であると認められる。

(ロ)本件1土地について、本件1土地地域における標準的な土地の使用状況である戸建住宅の敷地として、別図2の区割図のように開発道路を敷設して行う開発方法は、別図1の区割図のように開発道路を敷設せずに行う方法に比べ合理性があるとは認められないことからすれば、本件1土地を経済的に最も合理性のある戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないと認めるのが相当である。

(ハ)したがって、本件1土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であると認められるものの、経済的に最も合理性のある戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないと認められることから、評価通達24-4に定める広大地に該当しない。

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コメント

本件土地は、土地区画整理事業地内の土地でなおかつ三方が道路に面する土地であることが特徴の土地です。

広大地の評価は、戸建住宅分譲用地として開発した場合に相当規模の公共公益的施設用地の負担が生じる宅地を前提としていることから、「公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」とは、経済的に最も合理的に戸建住宅の分譲を行った場合にその開発区域内に道路の開設が必要なものをいいます。

即ち、広大地に該当するためには、公共公益的施設用地としての潰れ地が生じなければなりませんが、本件土地のように土地区画整理事業地内の三方道路に面する土地の場合には開発道路が生じにくい土地が数多くあります。「標準的な地積」がいくらかによって1区画の地積がほぼ決まってきます。その1区画の地積に合わせて区割した場合に開発道路が必要か否か、経済的合理性があるか否かを検討していくことになります。

本件1土地の別図1、別図2をみてその地域の標準的な宅地の地積(200㎡から300㎡)程度の規模で戸建住宅の敷地として区割した場合、公共公益的施設用地を設けることが経済的に最も合理性があるか否かです。

その地域の標準的な宅地の地積を200㎡から300㎡となると原処分庁の主張が採用されるでしょうね。
その地域の標準的な宅地の地積は220~250㎡ですという根拠を明確にできる資料がでてくれば、請求人の主張の区割図が採用されると思います。

本件の場合、原処分庁の意見が採用されましたが、資料の収集は大切です。

190401区画割図

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/