宅地と借地を合わせた土地の評価単位に関する事例

2024年12月13日

評価単位として評価すべきか否か

本件宅地の価額は、本件宅地と本件各借地とを併せた土地を1画地(評価単位)とした上で評価すべきか否かが争われた事例  平成26年4月22日裁決 (東京公開)

争点

本件宅地の価額は、本件宅地と本体各借地を併せた土地を1画地(評価単位)とした上で評価すべきか否か

請求人の主張

本件宅地の価額は、以下のとおり、 本件宅地と本件各借地とを併せた土地を1画地の宅地 (評価単位)とした上で評価すべきである。

①土地の所有者が隣接する土地を賃借して、当該隣接土地を専属的に使用できる場合で、かつ、当該隣接土地を自己所有の土地と一体として利用している場合、当該賃借している土地と自己所有の土地は、これらを併せて1画地の宅地を構成するものとして評価すべきである。

② 本件の場合、本件被相続人は、本件各借地を賃借して専属的に使用することができたため、本件共同住宅の敷地として、本件被相続人自身が所有する本件宅地と一体として利用をしていたものである。

したがって、本件宅地と本件各借地とを併せた土地を1画地の宅地とした上で、本件宅地の価額を評価すべきである。

国税不服審判所の判断

①本件宅地等の利用状況等は、

(イ)本件宅地902.43 ㎡、

(口) 本件A宅地168.00㎡、

(ハ)本件B 宅地198.34 ㎡、合計 1268.77m2 (本件敷地という) である。

上記土地上に鉄筋コンクリート造2階建の建物(延 450.61m2・本件賃貸ビル)と鉄筋コンクリート造陸屋根 9階建の建物 (延 4132.12㎡、 本件共同住宅) がある。

②本件宅地の評価単位については、自己が所有する宅地に隣接する宅地を借りている場合に、当該隣接する宅地を借りる権利が当該隣接する宅地(借地)を専属的に利用できる権利である場合で、当該所有する宅地と当該借地を併せて全体が一体として利用されているときには、その全体を 1画地の宅地として評価することが相当である。

しかるに、本件各借地権は、本件共同住宅の敷地として本件各借地を専属的に利用できる権利であること、本件被相続人は、本件相続開始日において、自己が所有する本件宅地と隣接する本件各借地を併せて、本件共同住宅の敷地として、その全体を一体として利用していたことからすると、本件宅地の価額は、本件各借地と併せた全体を1画地の宅地として評価することが相当である。裁判所

③ 請求人らの主張について
請求人は、本件各借地権は、借地借家法上の借地権ではあるが、相当地代通達の定めに基づきその価額が零円と評価されるから、実質的には借地借家法による保護を受けない借地権であって、隣地を利用する権利が使用借権である場合と同様に、本件宅地のみを1画地の宅地として評価すべきである旨主張する。

しかしながら、使用借権には借地借家法の適用がなく、借主の死亡が使用貸借の終了原因とされているところ、本件各借地権には借地借家法の適用があり、所定の要件を満たせば従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる(借地借家法第 5条第1項及び第2項)上、本件A借地に係る土地 賃貸借契約については、借主の死亡によって終了するものではないこと、 また、本件B 借地に係る土地賃貸借契約については、借主の死亡のみによって当然に終了するものではなく、請求人が本件共同住宅を相続したときに、本件B借地の所有権と借地権が 同一人に帰属することによって、当該借地権が混同により消滅する (民法第 179条 《混同》 第1項)にすぎないことから、本件各借地権の価額が相当地代通達の定めに基づき零円と評価されることによって、本件各借地権の内容が変わるものでもない。

したがって、本件各借地権が実質的には借地借家法による保護を受けない借地権であるなどとして、 その内容を使用借権と同様に見ることはできず、本件各借地権が使用借権と同様であることを前提として本件宅地のみを1画地の宅地として評価すべきであるとする請求人らの主張は、前提を欠くものであり、理由がない。

④以上から、本件宅地の価額は、本件宅地と本件各借地とを併せた全体を1画地の宅地として評価した価額を基に評価することが相当であり、これにより 本件宅地の価額を評価すると、別表2の原処分庁算定による本件宅地の価額と同額となる。

法令解釈等

宅地の評価単位については、評価基本通達7-2 (1)は、宅地については、1画地の宅地 (利用の単位となっている1区画の宅地)を評価単位として評価する旨定めるとともに、同通達の注1は、1画地の宅地は、必ずしも1筆の宅地からなるとは限らず、 2筆以上の宅地からなる場合もあり、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合もあることに留意する旨定めている。

また、課税実務上、1画地の宅地の判定に当たっては、原則として、① 宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利 (原則として使用貸借による使用借権を除く。)の存在の有無により区分し、②他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分して、それぞれの部分を1画地の宅地とする取扱いをしており、自己が所有する宅地に隣接する宅地を借りて、当該所有する宅地及び当該借地の上に建物を所有している場合には、当該所有する宅地と当該借地の全体を1画地として評価した価額を基に評価する取扱いをしている。

宅地の取引は、通常利用単位ごとに行われ、その取引価格は、その単位を基に形成されていることは公知の事実であることから、このような評価基本通達の定め及び課税実務上の取扱いはいずれも合理性を有すると考えられる。
そうすると、自己が所有する宅地に隣接する宅地を借りている場合において、当該隣接する宅地を借りる権利 が当該隣接する宅地 (借地) を専属的に利用できる権利である場合で、 当該所有する宅地と当該借地を併せて全 体が一体として利用されているときには、その全体を1画地の宅地として評価することが相当である。