500㎡未満の土地と広大地評価判定

2019年6月12日

500㎡未満の土地だが、広大地を適用すべきか否か争われた事例
(関裁(諸)平20第51号 平成21年4月22日裁決)

本件土地の概要

本件土地の面積479.00㎡、間口10m、奥行47.9m、ほぼ長方形の農地。西側接面道路幅員約6.8m。○○の北西約900mに位置する。

第1種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に存する。広大地に該当しないとした事例

争いのない事実

平成16年6月29日付「資産評価企画官情報」第2号「財産評価基本通達の一部改正について」通達のあらましについて(情報)(以下本件情報という)の3「通達改正の概要」の(2)「広大地の範囲」の(広大地に該当する条件の例示)において、「(注)ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する」とある

原処分庁の主張

イ.次のとおり、本件土地は開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設の負担が必要と認められるものには当たらないから、本件土地の評価に本件通達は適用されない。

(イ)本件通達は、開発行為を行うとした場合の公共公益的施設用地の負担を前提としているので、開発許可を要する面積を、その適用の可否の指標としているところ、○○の市街化区域内については、首都圏整備法第2条第4項に規定する近郊整備地帯に所在していることから、都市計画法第4条第12項及び都市計画法施行令第19条第2項の規定に基づき、開発行為を行うとした場合に、許可を要する規模は500㎡以上である。

したがって、本件通達の前提となる公共公益的施設用地の負担が必要とされる面積は500㎡以上であることから、本件土地が広大地に当るか否かの面積基準は500㎡となる。

そうすると、本件土地はその地積が479.00㎡であるから、本件通達の定める広大地には該当しない。

(ロ)なお、請求人らは、面積500㎡未満の土地の開発であっても3区画に土地を分割し、分譲土地以外の部分に公衆用道路の付設された開発事例がある旨主張するが、当該開発事例は、いずれも地区計画が決定される以前に開発が行われており、地区計画決定後においては法令違反となることから、当該開発事例を前提として、本件土地が開発行為を行う場合に公共公益的施設の負担が必要ということはできない。

3.請求人らの主張

イ.次のとおり、本件土地は開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設の負担が必要と認められるものには当たるから、本件土地の評価に本件通達は適用される。

(イ)本件土地は、間口10m、奥行48mという奥行が長大であるという個別事情のある土地であることから、開発に当たっては道路部分を負担する必要性があり、さらに、3㎡のごみ集積所を設ける必要性もあるのだから、本件土地は開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要と認められる土地といえる。

(ロ)本件土地の近隣には、地積が500㎡未満であっても、その土地に道路を設け、当該道路が○○の所有となった例もあることからすれば、本件土地は本件情報の注意書きの「ミニ開発分譲が多い地域に存する土地」に該当する。

3.判断

(1)認定事実

当審判所の調査によれば、本件隣接土地を落札した者は、平成16年8月5日に道路を開設することなく路地状開発の方法によって、本件隣接土地を2区画に分筆した上で、同年11月15日と平成17年2月21日にそれぞれ譲渡していることが認められる。

(2)争点イについて

イ.本件土地の属する地域は、住宅地域であり、本件土地に開発行為を行う場合は、戸建住宅建築を目的として行われることが想定される。そして、本件土地の所在する「B地区」は、建築物の敷地面積の最低面積が100㎡から135㎡になっているのであるから、地積的には本件土地には、2戸又は3戸の住宅建築が可能という計算となる。

事実、本件相続開始日において、本件土地の属する地域における開発事例をみると、本件隣接土地については道路を設けず、2画地に路地状開発されている。この例のように、本件土地も本件隣接土地と同様に道路を設けなくても法令等に反することなく2画地への開発は可能であるから、本件土地について開発行為を行う場合に、道路の負担が必要とは認められない。

ロ.また、ごみ集積所用地は、○○第45条第2項では、開発者は「設置できる。」旨、規定しているのであって、開発行為を行うとした場合に必ず義務付けられているものではなく、仮に、ごみ集積所用地が必要であったとしても、評価通達15から評価通達20-5による減額の補正では十分とはいえない程のつぶれ地が生じるとは認められない。

ハ.以上から本件土地は、開発行為を行う場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないと認められる。

そうすると、本件土地は、本件通達に定める広大地の要件①及び②のうち、②の要件(都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担を必要と認められるもの)を満たさないことになるから、①の要件を判断するまでもなく、本件土地は広大地に該当しないことになるから、本件土地評価に本件通達は適用されない。

ニ.なお、請求人らは、本件情報を根拠にミニ開発分譲地域が多い地域においては、開発許可を要する面積要件(本件では500㎡)未満でも本件通達の適用があるとして、本件土地についても本件通達の適用がある旨主張するが、請求人らの主張するとおり、開発許可を要する面積基準未満でも道路用地等が必要となる場合もあるが、本件土地は、上記イのとおり、道路用地の負担が必要な土地とは認められないから、請求人らの主張は採用できない。

以 上

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コメント

平成17年6月17日付で国税庁より発せられた「広大地の判定に当たり留意すべき事項(情報)(「資産評価企画官情報第1号」(『平成17年情報』))に下記の例示があります。

<広大地に該当する条件の例示>

・普通住宅地区等に所在する土地で、各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上のもの(ただし、下記の該当しない条件の例示に該当するものを除く。)

(注)ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する面積基準(例えば、三大都市圏500㎡)に満たない場合であっても、広大地に該当する場合があることに留意する。

<広大地に該当しない条件の例示>

・既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地

・現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)

・原則として容積率300%以上の地域に所在する土地

・公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地

(例)道路に面しており、間口が広く、奥行がそれほどではない土地(道路が二方、三方、四方にある場合も同様)

0921広大地の文中の図

上記の(注)は、開発許可を要する面積基準(たとえば、三大都市圏500㎡)に満たない場合であっても、ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、広大地に該当する場合があると記載されていますが、周辺の土地の利用状況を見る必要があります。本件においては、審判所は、「事実、本件相続開始日において、本件土地の属する地域における開発事例をみると、本件隣接土地については道路を設けず、2画地に路地状開発されている。この例のように、本件土地も本件隣接土地と同様に道路を設けなくても法令等に反することなく2画地への開発は可能であるから、本件土地について開発行為を行う場合に道路の負担が必要とは認められない」と判断しています。

隣接地またはその地域等でこのような事例があると、道路を開設してまで開発を行う必要はない、という結論に至ると考えられます。

その地域、およびその周辺の地域の土地の利用状況をよく観察することはとても重要です。
また。その地域のエリアを決めるにあたっても慎重に選ぶことが大事だと思います。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/