代償分割と土地の時価

2019年7月9日

代償分割により、共同相続人の一人が所有する土地を他の相続人に交付したことによる譲渡所得の収入すべき金額は、その土地の時価によるべきとした事例(平成16年12月8日 関裁(所)平16-28公開事例)
代償分割による土地の時価について争いになった所得税の裁決事例がありましたので掲載します。
本件は資産を無償で交付した場合の時価について争いになった事例です。
1.裁決要旨A
請求人は、本件代償分割に基づく本件土地の譲渡は、本件代償分割により負担した12,000,000円の金銭債務に代えて本件土地を代物弁済したものであるから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の収入金額は、当該金銭債務の額である旨主張する。
しかしながら、遺産分割協議書には本件土地を無償で交付するとのみ記載されており、また、請求人は、代償分割の相手方が現金ではなく本件土地でよいというので本件土地を交付することに合意し、本件土地の価額は遺産分割協議書の作成後に関与税理士から聞いた旨答述していることからすれば、本件代償分割は、具体的な代償債務の金額の定めのない代償分割であると認められる。
したがって、本件譲渡は、請求人が具体的な金額の定めのない代償分割債務を履行したものというべきであるから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の収入金額は、本件土地の譲渡の時における本件土地の価額、すなわち客観的な交換価値である本件土地の時価によるべきである。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(平16.12.8関裁(所)平16-28)
2.裁決要旨B
代償分割債務を履行するために資産を無償で交付した場合における譲渡所得の収入すべき金額は、その代償分割の目的となる資産を交付した時におけるその資産の価額によると解されるところ、その場合の価額は、その交付の時における客観的な交換価値、すなわち時価をいうものと解することが相当である。
請求人は、地価の下落を理由として修正した路線価を基に、本件土地の管理状況及び他の相続人への金銭債務の支払額を考慮して本件土地の価額を算定しているが、その算定方法は客観的な時価を求めるにおいて合理的な根拠を欠くものである。
 また、原処分庁が採用した公示地及び基準地は、その用途地域、建ぺい率及び容積率は本件土地と異なっていることが認められるから、本件土地の価額を求めるための基礎としては合理性を欠くものである。
よって、請求人及び原処分庁の主張する価額はいずれも時価であるということはできない。
そこで、当審判所が、取引内容が明確で、かつ、資料の正確性が確保されている3取引事例を選定し、これに相当と認められる不動産鑑定評価基準及び土地価格比準表等を参考として、不動産鑑定評価における取引事例比較法と同様の手法により価格を試算し、これらを平均した金額は本件土地の譲渡時における価額と認められるところ、当該価額を基に本件譲渡所得の金額を計算すると、本件更正処分の額を上回るので、本件更正処分は適法である。
平成16年12月8日裁決

関連ページ:相続税法上の時価鑑定(https://erea-office.com/appraisal/fair_valuation/)