広大地で評価額が大幅な減額をされる理由
そもそも広大地の価格を決める広大地補正率および計算式は、エンドユーザーへの転売価格(すなわち買主が購入可能な土地の価格)から開発道路用地等の潰れ地、開発事業者の負担する造成費、購買費等の必要諸経費、開発リスク、適正利潤を考慮して広大な土地の価格を求めるという不動産鑑定評価における開発手法の考え方を取り入れて作成されました。
そのため、広大地の評価額が大幅に減額されることになったのです。
したがって、土地の面積が大きければ大きいほど減額される金額は大きくなりますが、広大地補正率は0.35が限度です。
つまり、5,000㎡の土地であっても、5,000㎡を超える土地でも、適用される広大地補正率は同じ0.35となります。
また、広大地補正率を適用する土地は、評基通15~20-5までの減額補正では十分に減額できたとはいえないことから、評基通24-4により減額の補正を行うことになりました(16年情報)。
したがって、図表1-6の各項目との重複適用は認めてられていません。
このことにはよく注意してください。
審判事例①は、広大地補正率と他の補正率(不整形地の評価)の重複適用を否認した事例です。
請求人(納税者)は「本件土地は、すり針状の土地で側面ががけ地であることから開発もできない土地であるにもかかわらず(原処分庁の評価は)マイナス要素が考慮されていない」と主張しました。
なお、本件土地の面積は1,070.24㎡です。
請求人の主張に対して、国税不服審判所は次のように判断しました。
審判事例①(福裁(諸)平23 第5 号・平成23 年9 月5日裁決)
請求人は、本件○土地は、すり鉢状の土地で側面ががけ地であることから開発もできない土地であるにもかかわらず、マイナス要素が考慮されていない旨主張する。 この請求人の主張は、(中略)本件○土地の宅地部分については、(中略)広大地として評価することによって不整形地としての評価減の要因を考慮した評価額より低額になっている。また、(中略)長年居住の用に供されているのであるから、開発行為を行うことが可能であると認められる。そして、請求人は、マイナス要素の具体的な内容や評価額を減額する具体的計算根拠等を示していない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 |
なお、国税不服審判所は次のような理由を挙げて広大地として評価することが合理的であるとしています。
(a)(略)そうすると、本件○土地の宅地部分の地積は(中略)1,070.24㎡であるため、開発行為を行うに当たってあらかじめ開発許可の申請が必要であることから、本件○土地がある地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であると認められる。 そして、本件○土地は、上記の建ペイ率及び容積率からマンション等の敷地として使用することが困難であると認められることから、広大地として評価することが客観的な最有効使用を前提とした時価の算定方法として合理的であると認められる。(b)また、本件○土地の宅地の評価に当たり、評価通達15及び20《不整形地の評価》の定めを用いて評価した価額より広大地として評価した価額が下回ることから、広大地として評価することが客観的な最有効使用を前提とした時価の算定方法として合理的であると認められる。(c)以上のことから、本件○土地の宅地部分の価額について、広大地として評価した原処分庁の評価額は相当と認められる。 |
広大地補正率の適用は認めるものの、広大地補正率と不整形地の適用を併用することは認めないということです。平成16年1月1 日以降、広大地補正率と各種補正率との重複適用が厳格になりました。したがって、評基通15、16、17、18、20、20-2、20-3、20-4、20-5との重複適用は難しいでしょう。
争うには、マイナス要素の具体的な理由、具体的な計算根拠等を提示し、説得力あるものにする必要があります。
それがなければ、争いには負けます。それは必然の真理です。
広大地補正率との重複適用が認められない各種補正率
評基通15 | 奥行価格補正 |
評基通16 | 16側方路線影響加算 |
評基通17 | 二方路線影響加算 |
評基通18 | 三方または四方路線影響加算評 |
基通20 | 不整形地の評価 |
評基通20-2 | 無道路地の評価 |
評基通20-3 | 間口が狭小な宅地等の評価評 |
基通20-4 | がけ等を有する宅地の評価 |
評基通20-5 | 容積率の異なる2 以上の地域にわたる宅地の評価 |
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)