「開発を了している」とは

2019年6月12日

16年情報には、広大地に該当しない条件として「既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地」が例示されています。
審判事例①~②は、この条件に関する事例です。

審判事例①は「既に開発を了している」として広大地が否認された事例です。

国税不服審判所の判断は下記の通りです。

審判事例① (平成23 年4 月21日裁決)

イ. 本件各土地の使用状況

(略)甲土地は、開発行為に関する工事の検査を受けて平成14年1月18日に新築された鉄筋コンクリート造陸屋根4階建の共同住宅(甲地上建物)の(中略)敷地として使用されており、本件各建物は、実効収入割合が100%に近いほどに有効に利用されている。
そして本件各建物につき財務省令で定める耐用年数は、甲地上建物については47年(中略)であり、(中略)外観上建築後の経年によることを超えて著しく老朽化又は損傷している事実は認められず、(中略)今後相当の期間利用することができるものと見込まれる。

以上のとおり、本件各土地は開発行為を了した上共同住宅の敷地として利用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない。

(中略)

ロ.  小括

(略)本件各土地は、(中略)既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されているものと認められるから(中略)広大地には該当しないものと認めるのが相当である。

ハ.  請求人らの主張について

(イ)(中略)

しかしながら、上記のとおり、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるから、本件各土地について開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地である道路を開設することの要否について検討する必要はなく、この点に関する請求人らの上記主張は、採用することができない。

審判事例1 のポイントは、「既に開発行為を了している」ことと、その地域の標準的な使用方法から判断して有効に利用しているか否かということです。
国税不服審判所は、下記のような調査をして、本件土地が標準的な使用形態か否かをチェックしています。

二.  本件地域における宅地の使用状況

本件地域内に存する宅地の用途別の面積の割合は、(中略)戸建住宅用地が約26%、共同住宅用地が22%、法人等事業所用地が約21%、倉庫・車庫・工場用地が約30%であり、(中略)本件土地はこれらの標準的な使用形態の一つである共同住宅用地として使用されているものと認められ、周囲の状況に比して特殊な形態で利用されているものとは認められない。

次に紹介する審判事例② は、開発許可面積に関するものです。

本件土地は795㎡の不整形な無道路地で、相続開始日時点でM自治体の集会所敷地として利用されていました。ただし、敷地の半分以上は空閑地でした。また、この地区の開発許可面積の要件は1,000㎡以上です。

本件土地に対し、税務署は「開発を了している」として広大地の適用を否認しましたが、国税不服審判所は下記のように広大地に該当すると判断しました。

審判事例②(平成18 年5 月8日裁決)

原処分庁は、(本件)土地は〔1〕M自治体の建物及び敷地として使用され既に開発を了しており、〔2〕隣接地と比較しても著しく広大な地積とは認められないから、広大地補正の適用は認められない旨主張する。

ところで、原処分庁の主張する開発を了しているか否かについては、評価対象地がその地域の土地の標準的な使用に供されているといえるかどうかで判定し、また著しく広大な地積とは近隣の標準的な宅地の地積を基に判定するものと解されている。

(本件)土地は、〔1〕M自治会の集会所敷地として利用されているものの、当該地域の標準的な使用は戸建住宅地と認められるところ、(中略)(敷地の)半分以上が空閑地となっていることからすれば標準的な使用に供されているとはいえないので開発を了しているとは言い難いこと及び〔2〕(本件)土地は(中略)当該地域内の標準的な宅地の5倍程度の地積を有し、また、戸建住宅とする場合には都市計画法第4号第14号に規定する道路の負担が必要と認められることからすれば、広大地に該当するものと解するのが相当であり、原処分庁の主張には理由がない。

審判事例② のポイントは、以下の2点です。

①たとえ都市計画法29条に基づき開発を了していたとしても、本件土地が最有効使用されているか否かは、その地域の標準的使用の用に供されているか否かで判断する。

②著しく広大な地積か否かは、その地域の標準的な宅地の地積に基づき判断する。

これは、「その地域」の標準的使用と本件土地の利用状況を十二分に見比べる必要があることを意味します。要するに、本件土地上にテナントビルが建っていても、賃貸マンションが建っていても、あるいは店舗が建っていても、その地域の標準的使用と一致していなければ、広大地になる可能性があるということです。

ですから、決して諦めることなく、「その地域」を調べてみましょう。

何かのヒントが隠されている場合があります。

それを見つければ、広大地となる可能性はあります。

ところで、本件土地は795.00㎡の不整形な土地で、なおかつ無道路地です。

また、該当地域の開発の面積要件は1,000㎡以上です。そして、それが裁決として公表されました。これは、無道路地でも広大地の適用は可能であることを意味します。

用語の説明

開発行為
主として、建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更のことをいいます。

土地の区画形質の変更
土地の区画形質の変更は、次の3つに区分されます。

①区画の変更:道路・水路などの新設、変更、または廃止することをいいます。

②形(形状)の変更:造成により切土、盛土または切盛土をすることをいいます。

③質の変更:山林、農地等の土地を宅地にすることをいいます。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/