開発道路が必要か否かが広大地であるか否かを決める!!
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
同族会社の株式を評価するに当たり本件土地は広大地に該当すると主張するが、本件土地は開発のための道路は不要なので、広大地には該当しないとした事例(関裁(諸)平26第38号 平成27年3月24日裁決)
1.本件土地の概要
(1)本件1土地
本件1土地の地積は、3,592㎡のほぼ正方形の土地で三方が道路に接面している。本件債務免除日において、本件会社が所有する事務所及び倉庫等の敷地として利用されている。当該建物は本件会社が使用していた。本件1土地の属する用途地域は近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率200%)に所在する。
(2)本件3土地
本件3土地の地積は、973.52㎡の宅地で、本件2項道路に接面する不整形地である。本件債務免除日において、本件会社が所有する居宅の敷地として利用されているが、当該居宅は空き家である。本件3土地は、市街化調整区域内に所在する(建ぺい率70%、容積率200%)。
2.争点
イ 本件1土地は広大地に該当するか否か。
ロ 本件3土地は広大地に該当するか否か。
3.争点イ(本件1土地は広大地に該当するか否か。)について
(1)主張
イ 原処分庁の主張
以下のとおり、本件1土地は広大地に該当しない。
(イ)本件1土地の所在する広大地通達にいうその地域は、別図3の太線で囲まれた地域(以下「本件甲地域」という。)である。
(ロ)本件甲地域における標準的な宅地の地積は1区画当たり950㎡程度であり、本件1土地は三方を道路に囲まれていることから、公共公益的施設用地の負担を生じさせることなく区割りすることができるため、広大地に該当しない。
ロ 請求人の主張
仮に、本件1土地の価額を評価通達の定めに従い評価するとしても、以下のとおり、本件1土地は広大地に該当する。
(イ)本件1土地の所在する広大地通達にいうその地域は、別図3の二重線で囲まれた地域(以下「本件乙地域」という。)である。
(2)審判所の判断
イ 本件1土地の所在する広大地通達にいうその地域について
本件1土地が所在する本件近隣商業地域内の宅地は、主に店舗等敷地として利用され、本件国道及び市道の二方の道路に接している区画も複数存在している。
以上のように、土地の利用状況や用途地域の違いによる公法上の規制を総合勘案すると、本件近隣商業地域が、利用状況や環境等がおおむね同一であって、ある特定の用途に供されたひとまとまりの地域と認められる。
したがって、本件1土地の所在する広大地通達にいうその地域は、本件近隣商業地域とするのが相当である。
ロ 公共公益的施設用地の負担の必要性等について
(イ)認定事実
当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件近隣商業地域に存する店舗等敷地は27区画である。当該27区画を地積規模別に区分した各々の区画数の占める割合は、地積が400㎡以下の区分が約18%、地積が400㎡を超え600㎡以下の区分が約15%、地積が600㎡を超え800㎡以下の区分が約11%、地積が800㎡を超え1,000㎡以下の区分が約22%、地積が1,200㎡を超え1,400㎡以下の区分が約4%、地積が1,600㎡を超え1,800㎡以下の区分が約15%、地積が1,800㎡を超え2,000㎡以下の区分が約4%、地積が2,000㎡を超える区分が約11%となっている。
B 本件近隣商業地域に存する店舗等敷地のうち、上位3区画を除く店舗等敷地の各区画の平均地積は877.33㎡である。
(ロ)当てはめ
A 上記(イ)Aのとおり、本件近隣商業地域において、店舗等敷地として使用されている1区画の地積規模別の区画数の割合は各区分においておおむね平均的であり、突出している特定の区分はないことから、本件近隣商業地域における標準的な宅地の地積規模の判定に当たっては平均地積を重視するのが相当であるが、本件近隣商業地域において上位3区画は地積規模が著しく過大であるため、当該3区画を含めて標準的な宅地の地積の規模を判断するのは相当とはいえない。
従って、本件近隣商業地域における標準的な宅地の地積規模は、上位3区画を除いて判定すべきであり、上位3区画を除いた平均地積は877.33㎡であるから、本件近隣商業地域における標準的な宅地の地積はこれと同程度の地積とするのが相当である。
そうすると、本件1土地の地積は3,592.00㎡であるから、本件1土地の地積はその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大であると認められる。
B そして、本件1土地を、上記Aの本件近隣商業地域における標準的な宅地の地積の規模となるように区分すると4区画に区分されることになるが、当該区画数に区分した場合に公共公益的施設用地の負担が必要であるか否かについて審理すると、本件1土地は三方が道路に接しており、別図5のとおり、本件1土地内に道路を設けることなく区分することができる。
C したがって、本件1土地について開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担は必要ないことから、本件1土地は広大地に該当しない。
4.争点ロ(本件3土地は広大地に該当するか否か。)について
(1)主張
イ原処分庁の主張
(イ)本件3土地の所在する広大地通達にいうその地域は、■■■の字が「■■」の地域(別図6の太線で囲まれた地域。以下「本件丙地域」という。)である。
(ロ)本件丙地域における標準的な土地の使用は戸建住宅敷地としての使用である。
そして、本件丙地域において戸建住宅敷地として使用されている96区画のうち、当該敷地の地積は200㎡程度から1,000㎡程度までの区画数の占める割合は約80%であり、戸建住宅敷地の地積規模別の分布には偏りがない。
したがって、本件丙地域における標準的な宅地の地積は200㎡程度から1,000㎡程度となる。
そうすると、本件3土地の地積は973.52㎡であるから、本件3土地の所在する広大地通達にいうその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であるとはいえない。
したがって、本件3土地は広大地に該当しない。
ロ 請求人らの主張
(イ)本件3土地の所在する広大地通達にいうその地域は、本件3土地を中心に住宅が密集している地域であり、別図6の二重線で囲まれた地域(以下「本件丁地域」という。)である。
(ロ)本件3土地の近隣にある戸建住宅の敷地面積や周辺の地価公示地(■■■■)の地積(■■)及び最終的に土地を購入する者の観点からすると、本件丁地域における標準的な宅地の地積規模は220㎡程度となる。そして、本件3土地の地積973.52㎡であるから、本件3土地はその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地である。
また、本件3土地について本件丁地域における標準的な宅地の地積規模に区分する開発行為を想定したところ、1区画が210㎡程度の4区画を創出することができるが、本件3土地は奥行距離が約54mあり、さらに幅員6mの建築基準法の道路(市道)に直接接していないことから、公共公益的施設用地の負担が必要となる。
したがって、本件3土地は広大地に該当する。
(2)判断
イ 市街化調整区域内の土地に係る広大地通達の適用について
(イ)広大地は、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるなどの一定の要件を満たす場合に該当するものであるから、開発行為を行うことができなければ、広大地には該当しないことになる。
ところで、本件3土地は市街化調整区域内の土地であるが、都市計画法第7条第3項において、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域と規定されており、開発行為が制限されていることから、本件3土地が広大地に該当するか否かを判断する前提として、市街化調整区域内にある本件3土地について開発行為を行うことができるか否かについて審理する。
(ロ)本件3土地の存する■■■においては、■■■開発審査会付議基準及び■■■開発審査会包括承認基準(当該各基準の要旨は別紙6及び別紙7の各記載のとおり。なお、■■■開発審査会包括承認基準の「基準2既存宅地内建物」を以下「本件既存宅地開発事業」という。)が定められており、市街化調整区域内に所在する宅地であっても、上記各基準を満たす場合には開発行為を行うことができる。
(ハ)本件3土地は、本件既存宅地開発基準の1から3までの各定めに該当する宅地(以下、当該各定めに該当する宅地を「本件基準該当宅地」という。)である。また、本件3土地は、建築基準法第42条第2項の規定により道路幅員が4mとみなされている道路(以下「本件2項道路」という。)に接するのみであるが、本件既存宅地開発基準7(1)では、開発区域内の道路は、取付け道路を含み幅員6.0m以上でなければならない旨定めていることからすると、本件2項道路の隣接地の一部を取得等し、本件2項道路の幅員を6mにすることにより、本件既存宅地開発基準7(1)を満たすことになる。
(ニ)したがって、本件3土地は、本件既存宅地開発基準に基づく開発行為を行うことが可能な土地と認められる。
ロ 本件3土地の所在する広大地通達にいうその地域について
広大地通達にいうその地域については、本件丙地域は、字が「■■」の地域にあり、その地域内においては容積率や建ぺい率が同一である。さらに、本件丙地域内は、主として戸建住宅の敷地として利用されており、その環境や利用状況がおおむね同一と認められることから、広大地通達にいうその地域は本件丙地域とすることが相当である。
ハ 公共公益的施設用地の負担の必要性について
(ロ)当てはめ
A 本件丙地域においては、本件地域内住宅のほかに戸建住宅用地の分譲事例がないことからすると、本件丙地域は宅地開発が進んでいない地域と認められる。
B また、本件丙地域を含む■■■は、本件既存宅地開発基準に基づく開発道路を設けた開発行為が行われたことのない地域であり、さらには、本件地域内住宅のうち、ほぼく形である5戸の敷地を除く4戸の敷地は路地状敷地に区分されたものであることからすると、本件丙地域において、開発道路を設ける開発行為が一般的な開発行為とはいえない。
D したがって、本件3土地について開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担は必要ないことから、本件3土地は広大地に該当しない。
5.本件各土地の価額について
以上のとおり、本件1土地等の価額は評価通達の定めに従い評価した価額が相当であり、また、本件1土地及び本件3土地は広大地に該当しない。したがって、本件各土地の価額を評価通達の定めに従い評価すると、本件更正処分による価額と同額となる。
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コメント
A.本件1土地について
本件1土地の特徴は、①ほぼ正方形の形状をした三方が道路に面した土地であること②本件1土地を事務所及び倉庫等に一体利用している土地であること、③用途地域が近隣商業地域であることです。
①三方が道路に面した土地の場合、本件のように4区画に区分し、開発道路が不要になるケースや、住宅地域内の住宅の敷地の場合、路地状敷地等を含む土地に区分し、開発道路が不要となるケースが多いため広大地には該当しない場合が多々ありますので、要注意です。
②本件1土地を一体利用しているということは、その地域内に土地を一体利用するニーズが高い地域である可能性があるため、その地域の標準的使用並びに最有効使用を決めるには要注意です。
③本件1土地は近隣商業地域に属しているということは、本件1土地の存する自治体は一般住宅を多く建てていただくよりも、近隣の住宅地の住民のための日用品の供給を行うための店舗などの業務の利便性を高めるための施設を増進してほしいと定めた地域です。したがって近隣商業地域は、マンション、店舗、飲食店、事務所、オフィスなどが混在する街並みになってきます。又近隣商業地域は駅の周辺、国道や県道などの幹線道路沿いの路線商業地域などの地域が該当します。
本件1土地の場合その地域に店舗等が27区画存し、店舗等の敷地の平均地積が877.33㎡がその地域の標準的画地の地積と同程度であると審判所は判定しました。
そして本件1土地を区分すると4区画に区分され、開発道路が不要であるので、本件1土地は広大地には該当しないと結論づけました。
このように近隣商業地域という利便性の高い地域に存し、一定規模以上の土地については広大地の判断については要注意です。
B 本件3土地について
本件3土地の特徴は
①市街化調整区域内に存する土地であること
②本件3土地は、市街化調整区域内に存する土地であるが、本件既存宅地開発基準に基づく開発行為を行うことが可能な土地であること
③本件3土地の存する地域において、4戸の路地状敷地があること
これらのことを勘案すると、審判所は『本件丙地域を含む■■■は、本件既存宅地開発基準に基づく開発道路を設けた開発行為が行われたことのない地域であり、さらには、本件地域内住宅のうち、ほぼく形である5戸の敷地を除く4戸の敷地は路地状敷地に区分されたものであることからすると、本件丙地域において、開発道路を設ける開発行為が一般的な開発行為とはいえない。
したがって、本件3土地について開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担は必要ないことから、本件3土地は広大地に該当しない』としました。
その地域内に路地状敷地があれば、その地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行われていると断定される可能性が高いと考えておく必要があります。ただ対象地が間口が狭く路地状開発が難しい土地等は、開発道路を設ける必要性があると考えられれば、広大地になる可能性はあると思います。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)