単独所有と共有地では評価単位と異なる!!
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
一方は単独所有、他方は共有財産の隣接する土地は、1画地の宅地ではなくそれぞれを1画地の宅地として評価し、一方のみを広大地として評価することが相当とした事例(東裁(諸)平21第12号 平成21年8月26日裁決)
本件土地の概要
(1)本件土地について
①本件土地全体の土地の実測地積は、1,039.58㎡である。
②被相続人は本件土地を所有していた。本件相続開始日現在において被相続人及び請求人■■が居宅の用にしていた家屋(本件家屋という)の敷地、本件建物への通路及び庭として利用していた。
③請求人■■は平成18年11月3日、本件A土地をC業者に売却した。
④請求人らで平成19年2月19日本件相続に係る遺産分割協議が成立し、本件A土地は、請求人■が 、請求人■■が に共有で取得し、本件B土地は請求人■■が単独で取得した。
(2)本件A土地
本件A土地は、実測地積683.67㎡の宅地で本件北側道路(幅員6m)に等高に接面するほぼ正方形の土地である。用途地域は、第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。本件A土地は本件家屋の敷地に該当する。
(3)本件B土地
本件B土地は、実測地積355.91㎡の宅地で本件南側道路(幅員約6m)に等高に接面する長方形の土地である。本件B土地は本件家屋の敷地の庭等に該当する。
(4)本件土地全体の属する途地域は、第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。
(5)本件土地は、一部に賃貸マンション等があるものの大半は中小規模の一般住宅が建ち並ぶ地域に所在する。
請求人らの主張
①評価基本通達7-2によれば、宅地については「1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。)を評価単位とする。」とされており、本件土地は、請求人■■が本件相続に係る相続税申告期限の日において、その全体1,039.58㎡を居住の用に供していることから、1画地の評価単位とすることに問題はないと思われる。
②また、本件A土地に請求人■の名義を入れたのは、請求人■が代償金の受領を確実なものとするために、法定相続分の6分の1の名義を通すことを要望し、請求人■■はこれに応じることとなったものであり、実質的には本件土地全体を請求人■■が取得したものであること、③更に、「雑種地を評価するに当たっては、相続開始時において物理的に一体として利用されている土地ごとに区分して評価するのが、『相続開始時における財産の現況』に即した評価と解される。」旨判断した平成7年1月12日付の裁決事例は今回の審査請求に置き換えられる内容であることから、全体を1画地の宅地として広大地の評価を適用することが相当であり、その価額は、別表4のとおりとなる。
原処分庁の主張
①本件土地の評価は、別紙2の2のとおり、課税時期である本件開始日現在の現況で評価することとなるが、評価単位は、遺産分割後の取得者単位で評価することが相当である。
②本件土地は本件遺産分割により、本件A土地は請求人■と請求人■■が共有で取得し、本件B土地は請求人■■が単独で取得したものであるから本件A土地と本件B土地の取得者は異なっている。
したがって、本件土地は本件A土地と本件B土地それぞれを1画地として評価すべきである。
審判所の判断
イ 本件土地の評価について
(イ) 1画地の宅地の判定
A① 本件土地は、本件相続開始日においては、本件遺産分割により、本件A土地は請求人■が持分1,000分の167を、請求人■■が持分1,000分の833を取得し、本件B土地は請求人■■が単独取得したのであるから、本件B土地は、請求人■■にとって単独所有の自由地として何ら制約なく利用できる土地であるのに対し、本件A土地は、請求人■と請求人■■の共有財産であり、共有物の変更や処分は共有者の同意が必要であるなど単独所有の場合と比較して使用、収益及び処分について制約がある土地であると認められる。
② そして、本件遺産分割が著しく不合理であるか否かについてみてみると、本件A土地及び本件B土地は、いずれも地積・地形及び近隣の住宅の画地規模から、住宅の新築や戸建住宅地の分譲等の用途として有効活用でき、宅地として通常の用途に供することができないとは認められないことから、本件遺産分割が著しく不合理な分割であるとは認められない。
B 以上によれば、本件土地を1画地の宅地として評価する事情は認められず、本件遺産分割後の本件A土地及びB土地をそれぞれ1画地の宅地として評価することが相当と認められる。
(ニ)広大地の評価の適用について
A 本件土地は、本件A土地及び本件B土地をそれぞれ1画地の宅地として評価することとなるところ、本件土地は中小規模の一般住宅が立ち並ぶ地域に所在し、その近隣で戸建専用住宅建築のための宅地開発が行われていることから、その標準的使用は、戸建住宅の敷地と認められる。
そして、①■■■によれば、開発許可が必要となる土地で建ぺい率が60%の地域の場合には、1区画当たり66.0㎡以上の面積を確保することとされていること、②■■では、建ぺい率60%の地域であれば開発区域の1戸当たりの敷地面積は70㎡から80㎡位が多いこと、③本件土地と同一地域で行われた宅地開発における敷地面積は最少63.56㎡から最大113.15㎡で平均84.1㎡であることから、本件土地の所在する地域における標準的な宅地(戸建住宅の敷地)の地積は、70㎡から100㎡程度の規模と認めるのが相当である。
B 本件A土地は、地積が683.67㎡と上記Aの標準的な宅地の地積に比べると著しく広大であり、■■■が■■■から開発行為の許可を受けた別表6の分割図は、中央に公共公益的施設用地としての道路を開設した上で区画割りをしているところ、いずれの区画についても、その地積は、上記Aの標準的な宅地の地積の範囲内となっており、戸建住宅用地分譲のための区画割りとして合理的なものと認められる。
そうすると、本件A土地は、著しく広大で開発行為により公共公益的施設用地の負担が必要な土地と認められるから広大地に該当し、広大地の評価を適用することができる。
一方、本件B土地は、地積が355.91㎡であるから、上記のとおり、開発許可は不要な土地であり、本件B土地の本件南側道路との接面状況及び形状からすれば、戸建分譲のための開発を行うとした場合においても公共公益的施設用地としての道路を開設する必要は認められないから、広大地に該当せず、広大地の評価を適用することはできない。
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コメント
本件A土地、本件B土地を区分して各土地を評価する決め手になったのは共有物件か(本件A土地)、単独所有物件(本件B土地)かということと、二方路に面する土地で本件A土地及び本件B土地を分割しても各土地は各道路に接面し、相続による本件A土地及び本件B土地が非合理分割にならないことがあげられると思います。
本件A土地及び本件B土地を共に共有物件にしてから共有物分割をすれば本件A土地及び本件B土地は1039.58㎡全体が広大地として評価されるところをできなくしてしまったのは共有物件と単独物件にしてしまったからだと思います。
本来ならば共有物件は争いの的になりがちですが、本件土地(本件A土地、本件B土地)を共有で相続した後、広大地を適用し評価を下げた後に、共有物の分割をするという手法があります。
相続後の共有物分割であれば、お互いの価値割合に変更がないため、贈与税等は課税されません。つまり、土地の評価単位を変えるだけで大きく評価減することができますし、節税にもつながります。本来相続案件の共有はおすすめできませんが、この場合は節税のための共同作業と割り切って行う有効な手法だと思います。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)