【判例】立退き料について
【解約申入れの6か月以降になされた立退料の提示を当初の解約申入れの正当事由の判断に際して参酌した事案】
最判平3・3・22(判時1397・3)
建物の賃貸人が解約の申入れをした場合において、その申入れ時に借家法1条ノ2に規定する正当事由が存するときは、申入れ後6か月を経過することにより当該建物の賃貸借契約は終了するところ、賃貸人が解約申入れ後に立退料等の金員の提供を申し出た場合又は解約申入れ時に申し出ていた金員の増額を申し出た場合においても、提供又は増額に係る金員を参酌して当初の解約申入れの正当事由を判断することができると解するのが相当である。
けだし、立退料等の金員は、解約申入れ時における賃貸人及び賃借人双方の事情を比較衡量した結果、建物の明渡しに伴う利害得失を調整するために支払われるものである上、賃貸人は、解約の申入れをするに当たって、無条件に明渡しを求め得るものと考えている場合も少なくないこと、金員の提供を申し出る場合にも、その額を具体的に判断して申し出ることも困難であること、裁判所が相当とする額の金員の支払により正当事由が具備されるならばこれを提供する用意がある旨の申出も認められていること、立退料等の金員として相当な額が具体的に判明するのは建物明渡請求訴訟の審理を通じてであること、さらに、金員によって建物の明渡しに伴う賃貸人及び賃借人双方の利害得失が実際に調整されるのは、賃貸人が金員の提供を申し出た時ではなく、建物の明渡しと引換えに賃借人が金員の支払を受ける時であることなどにかんがみれば、解約申入れ後にされた立退料等の金員の提供又は増額の申出であっても、これを当初の解約の申入れの正当事由を判断するに当たって参酌するのが合理的であるからである。
借地借家解決の手引き(新日本法規出版より引用しました)
参酌(さんしゃく):[名](スル)他のものを参考にして長所を取り入れること。斟酌(しんしゃく)。
「第三者の意見を参酌して適切な処置をとる」引用元(https://kotobank.jp/word/%E5%8F%82%E9%85%8C-513616)
関連ページ:相続税法上の時価鑑定(https://erea-office.com/appraisal/fair_valuation/)