「特別の事情」が認められた裁決事例
相続税法において土地の評価は、評価通達の定めに従って評価するのが基本ですが、
評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合には、
対象土地の価額の算定は、他の合理的な評価方式によることができるとしています。
本件(関裁(諸)平24第50号、平成25年5月28日)の裁決事例では、下記の通りで、
特別の事情があるので、評価通達による価額ではなく、鑑定評価額によるべきとしました。
※概要
①本件通達評価額(広大地適用)…150,452,114円
②相続人の評価額(鑑定評価) …60,000,000円
③相続人の評価額( 〃 ) …73,000,000円
④審判所鑑定評価 …69,300,000円
※裁決の一部を抜書き
イ 本件土地の本件相続開始時における価額(時価)はいくらか(本件土地の時価を評価するに当たり評価通達の定めにより難い特別な事情があるか否か)について
上記のとおり、評価通達に定められた評価方法により算定される価額が時価を上回る場合には、評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合に該当するといえ、その場合には、評価通達の定めによらず、他の合理的な評価方法により評価することが許されると解されるところ、本件土地につき、広大地通達を適用して算定される価額(150,452,114円)は、本件土地の本件相続開始時における価額(時価)である審判所鑑定評価額(69,300,000円)を上回ることから、本件土地の評価額を評価するに当たっては、評価通達の定めにより難い特別な事情があると認められ、本件土地の評価額は審判所鑑定評価額とするのが相当である。
ニ その他の請求人らの主張について
請求人らは、前記のとおり、本件土地の本件相続開始時の価額は、請求人鑑定評価額(60,000,000円)が認められない場合であっても、■■鑑定評価額(73,000,000円)を上回るものではない旨主張するところ、本件土地の本件相続開始時における価額(時価)は、上記のとおり、審判所鑑定評価額(69,300,000円)とするのが相当である。
※本件土地は
本件1土地2716.74㎡、本件2土地343.01㎡、合計3059.75㎡を有する土地ですが、本件土地は袋地で、急傾斜の崖地があったり、道路が狭かったりする個性の強い土地で、隣接する取り付け道路用地を買収して開発することによる開発法による価額(672000,000円)と比準価格(71,300,000円)のほぼ中庸値69,300,000円をもって本件土地の価額とするとしました。
このように無道路地、急傾斜地等の個性の強い土地は評価通達の定めによる価額は、時価を上回っている場合が多いので、鑑定評価を採用した方がいい場合があります。
全ての土地を評価通達の定めに従って評価できるものではありません。あきらめずに色々な方法を考えてみましょう。