賃借関係の実態は使用貸借

本件土地の賃借関係の実態は、使用貸借と解するのが相当とした事例  【平成14年1月31日裁決・東京】

争点

本件相続開始日において、本件土地の上に借地が存在するか否か

請求人の主張

本件土地の本件被相続人と商工連合会の貸借関係は、建物の所有を目的とする賃貸借であって使用貸借ではないから、本件土地の上には借地権が存在するのであって、本件土地は借地権の目的となっている貸宅地として評価すべきである。

原処分庁の主張

本件土地上の建築物は、鉄パイプにトタンを張ったものであり、取壊しが容易で移築が可能なものであって、 借地借家法が適用される建物とは認められない。
当該建築物を利用しているH祭り実行委員会は、本体被相続人に対して支払っている金員は、本件土地の固定資産税等に担当する額にも満たない額であることから、本件土地に係る本件被相続人と実行委員会との貸借関係は使用貸借であり、本件金員の支払は単なる謝礼の支払と認められる。したがって、本件土地は、評価基本通達25に定める借地権の目的となっている宅地に該当せず、自用地として評価するのが相当である。

審判所の判断

本件建築物は、その構造が、建築用廃材の鉄パイプで高さ約5mの柱や梁で造られ、屋根及び外壁はトタンを張ったものであり、その全体の大きさが、 縦約6.5m 横約13m、 高さ約5mであって基礎工事及び内部の造作は一切なされておらず、移築可能で簡易な建築物である。また、本件建築物については、不動産登記はされていないし、固定資産税等も課税されていない。

[1]本件被相続人は、本件相続開始日まで実行委員会の会長であり、同委員会が本件建築物を所有し、 本件土地を使用していたこと、
[2]平成2年当時に、本件被相続人が本件金員を受領していたと認めるに足る証拠資料等の提出はないこと、
[3]本件金員は、本 件土地に係る固定資産税等の年額を超えていないこと、
[4]本件土地に係る賃貸借契約書等の書面は存在しないこと、及び
[5]実行委員会は、本件金員について、本件被相続人に対する謝金と認識していることが認められ、 そうすると、本件土地に係る本件被相続人と実行委員会の貸借関係は、同人が同委員会の会長であったという特殊関係、本件被相続人の好意及び両者の信頼関係を基盤としたものであって、本件金員を本件土地の使用の対価であると認めることはできず、 その実態は使用貸借であると解される。

したがって、借地権が存するとは認められないことから、本件土地は自用地として評価すべきである。