地域の標準的使用は店舗等である
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地が、6階建ノマンションに挟まれていることや本件土地の所在する地域の標準的使用が店舗等の敷地であることを考えれば、広大地には該当しないとした事例
(大裁(諸)平20第62号 平成21年3月25日裁決)
本件土地の概要
本件土地は、本件相続開始日において更地で実測地積1,227.52㎡の土地である。
二方が道路に面し土地区画整理地内に存する。駅から約1.7kmに位置し、■■■の区画(以下本件街区という)にある。
本件土地内には道路境界から約25mの中央付近に道路境界と平行に約2.6mの段差があるが、その段差は各道路とほぼ同一面上にある平坦な土地である。
争点
本件土地は、広大地に該当するや否や。
原処分庁の主張
本件土地は、以下のとおり、広大地に該当しない。
(1)マンション適地等に該当するか否かについて
広大地通達は、マンション適地等は広大地に該当しないと定めているところ、本件土地の近隣には■階ないし■階建ての中高層の共同住宅が存在していることや、■■■■及び■■■■の建築物が存在しているという周辺地域の標準的使用の状況から、本件土地は、マンション適地等に該当すると認められるから、広大地に該当しない。
(2)その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地に該当するか否かについて
広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地をいい、普通住宅地区等に所在する土地で、各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上であっても、その面積が地域の標準的な規模である場合は広大地に該当しないこととされている。
したがって、本件土地は、■■■における開発許可面積基準以上の土地であるものの、その地積は、その地域における標準的な宅地の地積の規模にとどまり、これに比して著しく地積が広大な宅地とはいえないから、広大地には該当しない。
請求人らの主張
本件土地は、以下のとおり、広大地に該当する。
(1)マンション適地等に該当するか否かについて
本件土地は、近隣にマンションが建築されるまでは、マンション適地等に該当したかもしれないが、近隣のマンションが建築され、マンション需要が飽和状態となった今では、マンション適地等に該当しない。
(2)その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地に該当するか否かについて
17年情報は、標準的な規模が500㎡以上である場合には、500㎡を標準的な土地の面積に置き換えて、その面積を超える面積のものは広大地となると説明しており、仮に原処分庁が主張するとおり、標準的な土地の面積が■■■であるとしても、本件土地は1,227.52㎡と当該面積を超えているのであるから、広大地に該当する。
(3)公共公益的施設の設置の要否について
本件土地を、戸建て住宅の宅地として開発する場合、■■■条例に基づき最低宅地面積を■■■とし、宅地造成等規制法、都市計画法第29条等を総合的に検証すると、現実に最も収益性が高く建築可能な開発想定図は別紙分割図の請求人ら分割図のとおりであり、この場合には公共公益的施設の設置が必要である。
審判所の判断
イ 検討
(イ)本件土地における最有効使用の方法は、本件土地の属する地域における宅地の標準的使用の状況等に照らして検討すべきであるから、以下、これらを検討する。
A 広大地通達における「その地域」の範囲について
本件街区を含む本件7箇街区は、利用状況、環境等がおおむね同一であり、■■■の中心的な商業地域として、商業用施設用地に供されることを中心としたひとまとまりの地域と認められるから、本件土地に係る広大地通達における「その地域」は、本件7箇街区に相当する地域であると認めるのが相当である。
B 本件7箇街区における宅地の標準的な使用方法
実際の建築物の立地状況をみても、本件7箇街区の■■■沿いにはマンションも立地しているものの、その1階部分が店舗として使用されているものが多く存在するなど、⑰街区の■■■を中心として、■■■の商業施設が立ち並んでいるものと認められる。
以上のような本件7箇街区の用途制限や、実際の建築物の立地状況を総合すると、■■■を中心として地域を形成している本件7箇街区における宅地の標準的な使用方法は、店舗等の敷地としての使用であると認めるのが相当である。
(ロ)本件土地における最有効使用及び公共公益的施設用地負担の要否
A 本件土地は、本件相続の開始時点で建築物等の敷地とはなっておらず、開発を了していないと認められるものの本件7街区における宅地の標準的な使用方法は店舗等の敷地である。
B 本件街区も4棟の賃貸マンションはあるが、戸建住宅はない。
C 本件土地は■階建のマンションに挟まれていて、低層の戸建住宅を建設するには不適当であることなどの状況を考慮すると、本件土地における最有効使用の方法は、標準的使用である店舗等の敷地として利用する事であると認められるのが、相当である。
D 本件土地は、その中央部に約2.6mの段差が存在するので、■■に面する部分を店舗用地、他方をそれ以外として使用も考えられる。
しかし、現に本件7箇街区の低層の店舗等は、その敷地内に存する段差をそのまま利用して駐車場として利用するなどしている。
仮に段差を解消した場合その工事費用も要するし、車両の進入も難しいことを考えると、本件土地はその全体を一体として店舗等の敷地として使用するのが最有効使用である。
以上より本件土地は、その全体を一体として店舗等の敷地として使用することが最有効使用であるから、公共公益的施設用地の負担が必要となる土地ではないと認められる。
よって、広大地には該当しないというべきである。
(ハ)請求人らの主張について
A 請求人らは、本件土地は、マンション適地等ではなく、その最有効使用は戸建分譲地であり、別紙分割図の請求人らの分割図のとおり開発すると道路に係る公共公益的施設用地の負担が必要である旨主張し、これを裏付けるものとして、■■■作成の報告書を提出する。
しかしながら、上記報告書は、本件土地の有効な利用方法として、賃貸マンション事業、分譲マンション事業及び宅地分譲事業を選択して検討したものであるところ、これら三つの事業のみを選択した根拠は不明であり、店舗等の敷地用地としての使用可能性を検討していない点は合理性がないこと、当該選択をするに当たって地域的に総合判断したとするが、当該「地域」がどの範囲であるかが不明であることなどの点に照らすと、上記報告書の意見は直ちに採用できず、これを基にする請求人らの主張も採用できない。
したがって、最有効使用が戸建分譲地であることを前提とする請求人ら分割図に基づく開発についても、その分割方法を検討するまでもなく採用できない。
B 請求人らは、17年情報が、著しく広大であるか否かの判定について、開発許可面積基準(■■■■)以上の土地については、原則として広大地に該当するとしていること、また、標準的な土地の面積が500㎡を超える場合においては当該標準的な土地の面積を超えるだけで足りるとしていることから、本件土地は広大地に該当する旨主張する。
確かに、17年情報には請求人指摘の部分があるが、当該部分は、広大地の判断要素のうち面積基準について解説した部分にすぎず、同情報では、そのほか、広大地に該当しない条件の例示やマンション適地等の解説がされていると認められるのであって、これらの内容等に照らすと、同情報が面積基準を満たせば直ちに広大地に該当する旨を解説したものでないことは明らかであって、本件土地が広大地に該当しないとの上記判断が同情報に矛盾するものではない。
したがって、請求人らの主張は採用できない。
(ニ)まとめ
以上によれば、本件土地は広大地に該当せず、その評価に当たって広大地通達の定める減価補正をすることはできないというべきである。
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コメント
マンション適地等について、国税庁は次のように述べています。
『評価対象地が「中高層の集合住宅等の敷地用地に適している」か否かの判断については、その宅地の存する地域の標準的使用の状況を参考にすることになります。
例えば、次のように「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」に該当すると判断できる場合を除いて「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」には該当しないことになります。
①その地域における用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性(社会的・経済的・行政的見地)から判断して中高層の集合住宅等の敷地用地に適していると認められる場合
②その地域に現に中高層の集合住宅等が建てられており、また、現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまり、中高層の集合住宅等の敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当進んでいる場合
本件においては「その地域」において、「4棟の賃貸マンションはあるが、戸建住宅はない。本件土地は■階建のマンションに挟まれていて…本件7街区における宅地の標準的な使用方法は店舗等の敷地である。さらに本件土地における最有効使用の方法は、標準的使用である店舗等の敷地として利用する事である。よって本件土地は、その全体を一体として店舗等の敷地として使用することなので、公共公益的施設用地の負担が必要となる土地ではないので、広大地には該当しない」と審判所は結論付けました。
その地域に賃貸マンションはあるが、戸建住宅はない、というのでは、広大地は難しいですね。その地域の範囲の決め方は十人十色ですが、周囲の方にも納得していただけるように「その地域」の範囲の決め方に理由付けをすることは必要かと思います。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)