市の店舗の設置の協力と広大地判定

2019年6月11日

広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。

市の条例により商業・事務系施設の集積を高めるため、少なくとも1階部分は店舗等の設置の協力があるので、店舗又は店舗併用住宅が多く建築されていることから、店舗又は店舗併用住宅が標準的な宅地の使用と認められる。従って広大地には該当しないとした事例     (東裁(諸)平24第76号 平成24年10月15日裁決)

1.本件土地の概要

本件土地は、面積1,350㎡の土地で、二方が道路に面する鍵型の不整形地である。
相続開始日の現況は、である。本件土地は、駅の北方100mに位置する。
本件土地の属する用途地域は、第2種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。

2.争点

本件土地は、本件通達に定める広大地に該当するか。

3.原処分庁の主張

次の点から、本件土地は広大地に該当しない。広大地に該当しないとした事例

イ 本件土地の存する「その地域」とは

(1)本件土地の属する第2種住居地域は土地区画整理事業が完了していること及び公法上の規制が異なること等から、請求人の主張するように容積率等が同一であることをもって、第2種住居地域及び第1種中高層住居専用地域を併せてその地域とすることは相当でない。

ロ 本件土地の最有効使用は、次の理由から、駐車場である。

(イ)原処分庁主張地域の約55%が、駐車場用地であるから、原処分庁主張地域内の土地の標準的使用は駐車場である。

(ロ)最有効使用の判定は、需給動向の洞察も必要であるところ、原処分庁主張地域の土地は、おおむね地主が所有し、将来、容易に売買が想定されないことからすれば、大きく変わるとはいい難い。

ハ 本件土地は、次の理由から、開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地(道路等)の負担が必要な土地とは認められない。

(イ)最有効使用が駐車場としての利用であるから、公共公益的施設用地の負担を要する開発の必要がない。

(ロ)原処分庁主張地域において、本件相続の開始前10年間、公共公益的施設用地の負担を要する開発は行われていない。

(ハ)本件土地は、最有効使用が駐車場としての利用であるが、仮に、戸建て住宅用地として開発するとしても、次の理由から、別図の1「原処分庁開発想定図」のとおり、公共公益的施設用地の負担を要しない土地である。

A 本件土地は、公法上、道路を開設しない路地状敷地による開発が可能であり、当該開発の方が、道路を開設する開発に比べ、路地状部分の面積も敷地面積に含まれるから、より広い延べ床面積の建物の建築が可能である等の有利な点がある。

B 上記(ロ)のとおり、本件相続の開始前10年間、戸建住宅の開発分譲において、公共公益的施設用地の負担が必要な開発は行われていない。

C 本件土地は、土地区画整理法による換地処分がされた土地であり、原処分庁主張地域は、土地区画整理事業が実施され、必要とされる公共公益的施設用地は既に確保・整備されているから、本件土地の開発に当たっては、道路の開設が必ずしも求められているものではない。

4.請求人らの主張

次の点から、本件土地は広大地に該当する。

イ 本件土地の存する本件通達に定める「その地域」は、用途地域が第一種中高層住居専用地域及び第二種住居地域の地域(以下請求人主張地域という)である。

「その地域」の判断については、同一の用途地域である必要はない。利用状況で「その地域」を判断すべきであり、請求人主張地域の大部分は戸建住宅の敷地である。

ロ 本件土地の最有効使用は、次の理由から、戸建住宅の敷地の分譲素地である。

(イ)標準的使用は最有効使用の判定の有力な標準となるところ、周辺の利用状況及び条例等から、請求人主張地域の標準的使用は一般住宅地で、その標準的画地の規模は100~120㎡程度である。

(ロ)本件土地は、マンション適地等ではないから、需要者は戸建分譲業者に限定される。

(ハ)駐車場は最有効使用でない。

ハ 本件土地は、請求人主張地域の標準的画地の地積(100~120㎡)に比し著しく地積が大きく、その最有効使用は、戸建住宅の敷地の分譲素地であり、戸建住宅の敷地として開発分譲する場合、次の理由から、別図の2「請求人開発想定図」のとおり、公共公益的施設用地(道路等)の負担が必要となる。

(イ)本件相続の開始前10年間及び後の期間において、■■■■の地域を中心に■■北口エリアの周辺地域の戸建住宅開発分譲事例を調査したところ6事例あり、いずれも道路を開設する開発であった。また、上記の期間以外でも、上記地域内で道路を開発事例があった。

5.審判所の判断

(1)当てはめ

イ 本件通達に定める「その地域」について

■■の北側にあって、本件区画整理区域内にあり、本件土地が所在する第2種住居地域内の地域(以下審判所認定地域という)が本件通達にいう「その地域」であると認めることが相当である。

ロ 「その地域」における宅地の標準的使用について

(イ)原処分庁は標準的使用が駐車場でだと主張する。

(ロ)請求人は最有効使用が戸建住宅の敷地の分譲素地であり、標準的使用が画地面積100~120㎡程度の一般住宅地であると主張する。

(ハ)本件相続開始日は本件換地日以後であり、また■■■の影響に考慮すべきであるから、審判所認定地域における宅地の標準的使用の判定に際しては、上記のとおりの本件換地日以後の各区画の状況を基礎とすることが相当である。

又市長が定める■■区域内で建物の建築をする場合、商業・事務系施設の集積を高めるため、少なくとも1階部分について店舗等の設置の協力を依頼していること、又、現に、戸建住宅や共同住宅に比して、店舗又は店舗併用住宅が多く建築されていることからすると、審判所認定地域では、店舗又は店舗併用住宅が宅地の標準的使用と認めるのが相当である。

ハ 公共公益的施設用地の負担の需要について

上記のとおり、審判所認定地域では、店舗又は店舗併用住宅が標準的な宅地の使用と認められる。

(イ)そこで、別表「本件換地日以降に建築された建物の概要」において、本件土地に状況が類似する事例の規模により最も小さい544.00㎡規模の区画に割るとしても、2区画程度となるから開発想定図を用いて検討するまでもなく、公共公益的施設用地の負担は見込まれない。

(ロ)以上から、本件土地については審判所認定地域における標準的な使用をするに当たって、開発行為を要しないか、区画割りをするとしても公共公益的施設用地の負担が見込まれないものと認められる。

ニ まとめ

以上のとおり、本件土地は本件通達に定める広大地には該当しないものである。

 

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コメント

本件におけるポイントは、本件土地が存する市では、『法的義務や行政指導を伴うものではないが、本件土地を含むある地域内で建物の建築をする場合、商業・事務系の集積を高めるため、少なくとも1階部分について店舗等の設置の協力を依頼している』という事実があることです。

即ち審判所は下記のように述べています。

『又市長が定める■■区域内で建物の建築をする場合、商業・事務系施設の集積を高めるため、少なくとも1階部分について店舗等の設置の協力を依頼していること、又、現に、戸建住宅や共同住宅に比して、店舗又は店舗併用住宅が多く建築されていることからすると、審判所認定地域では、店舗又は店舗併用住宅が宅地の標準的使用と認めるのが相当である。』

請求人らも原処分庁もこの点については十分に市役所調査ができていないようですが、審判所は市役所調査の結果、上記の協力依頼をしているという事実とその地域に店舗が多いという事実を合せて、店舗又は店舗併用住宅が宅地の標準的使用だと言っています。

そうなってきますと、その地域の宅地の標準的な画地の面積も住宅地より規模が大きくなって(544㎡)、公共公益的施設用地の負担が不要となってきます。

したがって広大地にはならないという結果になっていきます。

広大地190214開発想定図

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/