広大地に該当するか!
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地の地積は、535㎡であるが、その地域に存する基準地の地積が、611㎡であることが認められる。すると、その地域における標準的な宅地の地積に比して本件土地は、著しく地積が広大であると認められず、広大地には該当しないとした事例
1.本件土地の概要
本件土地の地積は、535㎡の土地である。
本件土地の存する地域は、中小の工場又は事務所の敷地及び集合住宅の敷地等が存する地域である。
2.争点
本件土地は広大地に該当するか。
3.原処分庁の主張
原処分は、次の理由により適法である。
イ 本件更正処分について
(イ)本件土地における広大地の評価について
本件土地における「その地域」の「標準的な宅地の地積」とは、次の事実から、611㎡を中心として、おおむね500㎡から700㎡程度の間の地積であると解するのが合理的であると認められる。
a 本件土地の接する路線に面する宅地の利用状況は、中小の工場又は事務所の敷地及び集合住宅の敷地等であるが、その大部分の区画の地積は、500㎡から700㎡程度である。
b 本件土地の近傍(本件土地の北西約140mの地点)には、地価調査の基準地(基準地番号は■■■である。以下「本件基準地」という。)があり、その地積は611㎡である。
c まとめ
上記a及びbのことから、地積が535㎡である本件土地は、この範囲内であり、標準的な宅地の地積に比して著しく広大とは認められず、本件土地は、広大地として評価するのは相当ではない。
(ロ)本件土地の価額について
本件土地の価額は、評価基本通達に基づくと、別表5の「原処分庁主張額」欄のとおり46,770,770円となる。
(ハ)納付すべき税額等について
上記(ロ)のことから、本件相続に係る取得財産の価額の合計額及び課税価格の合計額は、別表1の「更正処分」欄のとおり、また、請求人らの本件相続に係る課税価格及び納付すべき税額については別表2ないし別表4の「更正処分等」欄のとおりとなるから、本件更正処分は適法である。
4.請求人らの主張
イ 本件更正処分について
本件土地は、次の理由により広大地に該当することから、本件更正処分は違法であり、その全部の取り消しを求める。
(イ)本件土地における「標準的な宅地の地積」について
原処分庁が主張する本件土地における「その地域」においても、「標準的な宅地の地積」とは小規模住宅用地としての地積、つまり、■■■開発指導基準における一区画の最低区画割地積である150㎡程度の地積と考えるのが相当である。
ロ 本件賦課決定処分について
上記のとおり、本件更正処分はその全部が取り消されるべきであるから、本件賦課決定処分も取り消されるべきである。
5.審判所の判断
(1)認定事実
原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件基準地の地積は611㎡であり、本件基準地は工場敷地として利用されている事実が認められる。
(2)本件更正処分について
そこで、本件土地が広大地に当たるか否かについて争いがあるので、以下、審理する。
(イ)本件土地における「その地域」について
本件土地における「その地域」とは、本件土地の所在地周辺の中小工場地区と定められたひとまとまりの地域であるとするのが相当である。
(ロ)本件土地における「標準的な宅地の地積」について
A 本件土地における「標準的な宅地の地積」とは、本件土地の所在地周辺の中小工場地区と定められたひとまとまりの地域において判断することとなり、当該地域において同様な利用形態である宅地の地積に基づいて判断するのが相当である。
B そして、これを地積535㎡である本件についてみると、本件相続開始日における上記Aの地域において、中小の工場、事務所等として利用されている宅地の地積は、その多くが400㎡から700㎡の範囲にあり、その中でも500㎡台の地積のものが最も多くを占めていることが認められる。
また、本件土地における「その地域」には本件基準地が所在し、その地積は上記(1)のとおり611㎡である。
C したがって、上記のことから、地積が535㎡である本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地とは認められないので、本件土地は広大地に当たらない。
(ハ)まとめ
上記のとおり、本件土地は広大地に該当しないことから、本件土地の価額は、別表5の「審判所認定額」欄のとおり46,770,770円となり、別表5の「原処分庁主張額」欄の金額と同額となる。
そして、本件相続に係る請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、いずれも別表2ないし別表4の「更正処分等」欄に記載の金額と同額となるから、本件更正処分は適法である。
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コメント
評価基本通達24-4にいう広大地評価は、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、…開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」をいうとされています。
現時点(平成28年7月1日現在)の国税庁がいう「その地域」及び「標準的な宅地の地積」とは下記のように説明としています。
この場合の「その地域」とは、原則として、評価対象地周辺の
①河川や山などの自然的状況
②土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断する道路、鉄道及び公園などの状況
③行政区域
④都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制など、土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすもの
などを総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、住宅、商業、工業など特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものをいいます。
また、「標準的な宅地の地積」は、評価対象地の付近で状況の類似する地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地の地積、評価対象地の付近の標準的使用に基づく宅地の平均的な地積などを総合勘案して判断します。
なお、標準的使用とは、「その地域」で一般的な宅地の使用方法をいいます。
では「その地域」とは、本件裁決書では、『評価対象の土地の接する路線を基準として、当該路線に面する宅地とその利用状況がおおむね同一と認められるひとまとまりの地域をいうものと解される』としています。
よって本件土地における「その地域」とは、審判所は、『■■■■ないし■■にわたる中小工場地区と定められたひとまとまりの地域と解するのが合理的である』としました。
一方、請求人らは、「その地域」とは、街や校区などの言葉で表現されるある程度広い範囲を想定しており、評価基本通達14-2に定める地区区分により厳密に線引きされるものではない。
したがって、本件土地における「その地域」とは、■■■■及び■■■を中心としたその周辺一帯の広い範囲を指すものと考えられる、と主張しました。
審判所は「その地域」について、
『C つまり、宅地が広大地に当たる場合には、評価基本通達14-2の地区区分ごとの奥行距離に応じて定められた奥行価格補正率に代えて、単に、有効宅地化率が適用されるのであるから、同通達24-4に定める広大地として評価できるか否かを判断する場合の「その地域」とは、奥行価格補正率の適用区分である地区と解するのが相当である。
D これを本件についてみると、本件土地の周辺は、集合住宅等の居住用建物が一部散在して見受けられるものの、他の多くは中小の工場、事務所等として利用され、評価基本通達14-2に定める中小工場地区に所在すると認められることから、本件土地における「その地域」とは、本件土地の所在地周辺の中小工場地区と定められたひとまとまりの地域であるとするのが相当である。』
としました。
本件においては、「その地域」の選び方について双方違いが出ていますが、審判所が指し示す「その地域」の中に本件基準地がある場合には、上記国税庁が述べているように「標準的な宅地の地積」は評価対象地の付近で公示地・基準地の地積等を勘案するように、ということですので、その地積と対象地との地積を検討する必要性は高まりますので、その標準的な宅地の地積によっては、広大地にいう公共公益的施設用地の確保が難しくなって広大地に該当しないこともありえますので、要注意です。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)