本件土地全体を1画地の宅地として評価すべきか否か
本件土地は本件自宅等の敷地として一体で利用されていると認められるので,本件土地全体を1画地の宅地として評価すべきとした事例
(東裁(諸)平17第42号・平成17年9月16日裁決)
本件土地の概要
本件土地は三方路線に面する広大な土地であり,本件土地の西側部分が本件-1土地2,050.05㎡,東側部分が本件-2土地2,261.21㎡,合計4,311.26㎡である。
本件土地上に建坪399.50㎡の本件自宅等が存する。
請求人の主張
本件更正処分は,次の理由により違法であるから,その全部を取り消すべきである。本件-1土地の上には,現に納屋や物置が存在し,また畑として耕作している部分もあるから,未開発の土地として本件-1土地を1画地の評価単位としたことに誤りはない。居住用および貸家建付地用の宅地として利用している本件-2土地を合わせた4,311.26㎡の本件土地を1画地の評価単位とした原処分庁の評価は誤りである。
原処分庁の主張
原処分は,次の理由により適法であるから,本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
原処分および異議申立てに係る調査の結果によれば,次の事実が認められる。本件土地の上には,本件相続開始日現在,被相続人所有の建物(以下「本件自宅等」という)が,本件-1土地と本件-2土地の上にまたがって立っている。
平成13年度の固定資産課税明細書によれば,本件-1土地および本件-2土地の現況地目は,いずれも宅地となっている。
本件自宅等の総床面積は631.50㎡であり,被相続人は,そのうち102.479㎡を事務所等として賃貸し,残りの529.021㎡を自宅の用に供している。
①本件自宅等が,本件-1土地および本件-2土地の上にまたがって立っていること,②本件土地は,その周囲を石塀で囲まれていること,③本件-1土地および本件-2土地の固定資産税における地目はいずれも現況宅地であることから,評価通達7-2に定める1枚の農地とは認められない。
本件-1土地と本件-2土地はいずれも本件自宅等の敷地であり,一体として利用されていることから,1画地の宅地として評価するのが合理的であると認められる。
審判所の判断
当審判所の調査の結果によれば,次の事実が認められる。
本件土地は,その周囲すべてを石塀およびブロック塀で囲まれており,この石塀等の高さは低いところで2m弱,高いところで4m強である。
本件自宅等は,本件-1土地と本件-2土地にまたがって,本件土地の北側中央部分に建てられており,建坪(建築部分の面積)は399.50㎡である。
本件土地には,同土地が接する東側の中央よりやや南側部分にある門から,北西方面および南西方面の二方向に幅2m程度の通路があり,北西方面の通路は本件自宅等に通じており,また南西方面の通路は,同土地内の南側を周遊して,同土地の中央よりやや西側部分で,北西端方面と本件自宅等方面の二方向に通じる通路(幅は同じく2m程度)に分かれている。
本件土地内にある上記の各通路の両脇一面,当該通路と通路の間,当該通路と石塀等との間および同土地の中央部は,相当な範囲にわたって,かつては手入れされていたとされる庭園があり,高さ10mを超える樹木が数多く生い茂っている。また,本件土地の南西部分の一部は樹木は生い茂っておらず,平坦な土地である。
被相続人らに係る平成10年分から平成16年分までの所得税の申告においては,いずれの者からも農業所得の申告はない。
請求人は,本件-1土地の上には,現に納屋や物置が存在し,また畑として耕作している部分もあるから,未開発の土地として本件-1土地を1画地の評価単位としたことに誤りはない旨主張する。しかしながら,評価通達7は,土地の価額は課税時期の現況の地目ごとによって評価する旨定めており,開発,未開発の別により評価するものとはされていない。また,評価通達7-2は,宅地の評価単位は,その利用単位となっている1画地の宅地ごとに評価する旨定めている。
ところで,本件土地は,極めて広大な地積(4,311.26m)に,建坪399.50㎡の本件自宅等が存する土地であるところ,①本件自宅等は,この広大な土地の北側中央部分に,本件-1土地と本件-2土地の上にまたがって立っていること,②本件土地は,その周囲すべてを高さ2m弱ないし4m強の石塀等で囲まれていること,③本件土地内は幅2m程度の通路で周遊可能な状況に配置されていること,④本件-1土地の南西部分の一部は家庭菜園であると認められること、⑤本件-1土地および本件-2土地の固定資産税における現況地目はいずれも宅地であることからすれば,本件土地は本件自宅等の敷地として一体で利用されていると認められることから,本件土地全体を1画地の宅地として評価するのが相当であり,本件-1土地を1画地の評価単位とすることは相当でない。したがって,この点に関する請求人の主張には理由がない。
コメント
評価単位をどう決めるかのポイントは,①評価対象地の現況を把握すること,たとえば未利用地なのか,畑なのか,建物が立っている宅地なのかを確認し,②評価対象地上に権利が付着していないか否か,たとえば建物を建てるにあたり,被相続人が第三者に土地を貸して(地代発生)第三者が建物を建てているとか,被相続人が自宅用の建物を建てているとかを確認することが必要である。さらに本件の場合,請求人は『本件土地の上には,現に納屋や物置が存在し,また畑として耕作している部分もあるから,これらの部分を未開発の土地として本件土地を2画地の評価単位である』(裁決要旨より)と主張している。本件土地の面積が4,311.26㎡という広大な土地であることが背景にあるのであろうか。しかし,評価通達7-2は,宅地の評価単位は,その利用の単位になっている1画地ごとに評価すると定めているので,審判所は前掲のように結論付けています。現場をよく見ることが大切である。
関連記事:相続税法上の時価鑑定(https://erea-office.com/appraisal/fair_valuation/)