敷地全体を一単位として評価すべきか否か!!

本件土地に存する調整池の敷地を含めた土地全体を貸家建付地とすべきか否かが争われた事例

(平成22年3月25日裁決(非公開・関裁))

本件土地の概要

本件-1土地……貸家建付地4,477.99㎡, 調整池465.50㎡

本件-2土地……貸家建付地4,386.74㎡, 調整池183.30㎡

本件土地は鉄道高架の南側に隣接し,周辺地域は戸建住宅の中に中小規模の工場が点在している地域であり,用途地域は第一種住居地域である。本件土地には条例に定める雨水の貯留施設(以下,調整池という)が2箇所設置されている。

被相続人は,本件土地上に昭和46年から昭和48年ころにかけて,倉庫等を23棟(以下,本件各倉庫という)建築し,被相続人が主宰する甲に一括賃貸し,甲は本件各貸倉庫を乙に一括で転貸し,乙は本件各貸倉庫をさらに第三者に再転貸した。

請求人の主張

本件土地に存する本件各調整池は,雨が降った際に本件土地の雨水が流れ込む仕組みとなっており,雨水流出対策として設計建築されたものである。本件土地を利用する際には必要不可欠のものであり,本件各調整池の敷地を本件土地から切り離して評価することはできないため,本件各調整池の敷地を含めた本件土地全体を貸家建付地として評価すべきである。

原処分庁の主張

本件各調整池の賃貸借の事実が認められないことから,本件各調整池の敷地は自用地として評価すべきである。

審判所の判断

評価通達7は,土地の価額は,その土地の地目別に評価する旨定め,ただし書きで,一体として利用されている一団の土地は,そのうちの主たる地目からなるものとして評価する旨定めている。

○○県の担当者は,平成20年12月19日,当審判所に対し,要旨次のとおり答述した。

①本件土地の開発行為は,開発登録簿によると,昭和46年6月21日に貸倉庫用敷地として許可されている。

 

②○○県条例では,1ヘクタール以上の土地に開発行為を行う場合,雨水流水対策として雨水の浸透施設または調整池の設置義務を課しており,昭和46年当時も同様な設置義務が課されていたものと思われる。

 

③調整池は本件土地に2箇所設置されているが,本件土地を二分して雨水処理を行う必要があったものと考えられる。

 

④○○県条例では,開発行為の許可要件の一つとして,雨水流出対策として調整池等の設置義務を課しているが,設置後,設置者(地主等)が許可なく調整池を埋めるなどして取り壊し,宅地造成を行ったとしても,同条例に罰則の定めはなく,また,設置者に対し原状回復命令はできない。しかし,大雨等で近隣に被害が生じた場合,責任の所在が問われることになるので,設置者が調整池を取り壊した事例は聞いたことがない。

原処分庁は,本件各調整池の賃貸借の事実がないことから,その敷地を自用地として評価すべきである旨主張するが,1本件各調整池は,本件土地の開発行為を行うに当たり,○○県の指導により設置が義務付けられたものであって,本件土地の本件各調整池以外の部分を利用するため,必要不可欠な施設であること,2罰則の定めはないものの,本件各調整池を取壊し転用することは事実上できないと認められること,および3本件各調整池は本件各貸倉庫の建設のための開発工事により設置され,本件各貸倉庫敷地としての利用が開始されるとともに,その機能が果たされてきていることからすれば,本件土地の一部である本件各調整池の敷地は本件各貸倉庫の敷地として一体で利用していたと認めるのが相当である。

以上のことからすれば,本件各調整池の敷地を含め,本件土地は一段の土地として,本件各貸倉庫の敷地として利用されていたと認められるから,本件各調整池の敷地は,貸家建付地として評価すべきである。

土地の評価額の図

コメント

評価通達7は,土地の価額はその土地の地目別に評価する旨定め, ただし書で,一体として利用されている一団の土地は,そのうちの主たる地目からなるものとして評価する旨定めている。

審判所は,本件各調整池の敷地を貸家建付地として評価するにあたり,

①件各調整池は県の指導により設置したものであること
②本件各調整池は本件各貸倉庫敷地の利用と共にその機能を果たし,本件各貸倉庫の敷地として一体利用していること

等を勘案した。