土地全体を一画地とすべきか否か!

相続人の1人が遺産分割により取得し同族会社に一括貸ししていた単独所有地および共有地の評価単位は全体を一画地とするのが相当とした事例

(東裁(諸)平24第123号・平成24年12月13日裁決)

本件各土地の概要

本件土地1,703.17㎡は駅から約600mに位置する。近隣商業地域に所在し,建ぺい率80%,容積率200%である。

本件土地は4筆の宅地,1筆の畑および8筆の雑種地からなる土地であり,相続開始日には単独所有地と共有地が混在しているが,その全てが立体駐車場として賃貸に供されている雑種地である。

原処分庁の主張

遺産分割後における本件土地を構成する各地番の土地については,共有者の有無およびその共有持分の割合がそれぞれ異なるから,本件土地は,本件-1土地ないし本件-5土地の5区画に区分して,それぞれを一団の雑種地として評価するのが相当である。

請求人の主張

本件土地は,その全てが本件会社の立体駐車場の敷地として貸し付けられていること,また本件土地の全ての筆に被相続人の持分があり,その各持分を一人の相続人が取得していることからすれば,本件土地全体を一団の雑種地として評価すべきである。

立体駐車場の絵

なお,相続開始日において,本件土地の一部が共有地であったのは,被相続人が生前,相続税対策として子や孫へ土地の贈与を行ったことにはじまり,その後,共有のデメリットを考慮し,交換により共有状態の解消を図ったものの,完全に共有状態を解消する前に本件相続が発生したという事情による。

審判所の判断

評価通達7-2の(7)は,雑種地については,利用の単位となっている一団の雑種地を評価単位とし,宅地と状況が類似する雑種地である場合には,原則として,贈与,遺産分割等による分割後の画地を「利用の単位となっている一団の雑種地」として評価する旨定めている(なお,この「利用の単位となっている一団の雑種地」とは,同一の目的に供されている雑種地であるか否かによって判定することとされている)。

また,評価通達82《雑種地の評価》は,宅地と状況が類似する雑種地である場合には,宅地の価格形成要因による影響を受けるため,宅地の価額を基として当該雑種地の価額を評価する旨定めている。

以上を併せ考えれば,「利用の単位となっている一団の雑種地」は「1画地の宅地」(利用の単位となっている1区画の宅地)に準ずる概念であり,当該雑種地を取得した者が使用等をすることができる利用単位または処分単位をいうものと解するのが相当である。

認定事実等を基に本件土地の評価単位について検討すると,以下のとおりである。

本件土地は,その全てが立体駐車場として賃貸の用に供されている雑種地(現況の地目)であり,その周囲の状況からして,当該雑種地は,宅地と状況が類似する雑種地に該当する土地である。そして,その所有関係は,相続に係る遺産分割後においても,単独所有地と共有地が混在している。

そこで,相続に係る遺産分割の前後における本件土地の利用状況をみると,本件土地は,本件会社に対して一括して賃貸されており,本件会社は,本件土地と,請求人の共有地(本件-6土地)および本件会社の単独所有地(本件-7土地)を併せた土地上に堅固な構築物(立体駐車場)を設置し,これらの土地を立体駐車場の敷地として一括して利用している。

そして,本件会社は,相続開始日以後の株主および代表取締役が配偶者であり,その他の役員も請求人ら被相続人の親族のみで構成されている。また,相続に係る遺産分割後の本件土地の共有関係をみると,共有者は,配偶者,請求人,その子および本件会社(株主は配偶者のみ)であり,1名を除き,本件会社の関係者と共通である。

以上の利用状況,権利関係等諸般の事情を考慮すれば,相続開始日において,本件土地は,その一部が共有地であっても,現に一体として賃貸の用に供され,相続に係る遺産分割後も同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる状況にあったから,本件土地については,その一部が共有地であることによる使用等の制約が実質的にないものと認められる。

したがって,本件土地は,全体を一つの評価単位として,一体として評価するのが相当である。

コメント

土地の全てを本件会社に立体駐車場として賃貸の用に供されている雑種地で,その所有関係は,相続による遺産分割後も,単独所有地と共有地が混在し変化がない土地である。

この土地の評価単位の分け方について,審判所は雑種地であること,一括して貸し付けの用に供されていたこと,遺産分割後も利用状況に変化はないこと等を勘案すれば,一部の土地が共有地であっても使用上の制約もほぼないことを考えれば,本件土地は全体と一体として評価するべきであると判断をしました。