自用地の農地と貸家建付地は地続きなので一団の土地として評価すべきか否かが争われた事例

自用地の農地と貸家建付地は地続きなので一団の土地として評価すべきか否かが争われた事例

(熊裁(諸)平22第5号・平成22年11月12日裁決)

本件土地の概要

甲土地:地積1,201㎡。畑として利用(市街化農地)。

乙土地:地積543.41㎡。被相続人の所有する家屋が存在し,貸家建付地。甲土地と地続きであり,市街化区域内に所在する。

原処分庁の主張

甲土地は畑で農地として,乙土地は宅地で貸家建付地として利用されており,各々の土地は地目が相違する区分された土地として利用されていることから,甲土地および乙土地は評価通達7が例外的に定める複数地目からなる一体として利用されている一団の土地等に該当するものとは認められないため,甲土地および乙土地をそれぞれ地目別に区分して評価することが相当である。

請求人らの主張

土地の評価の原則からいえば,地目の別,用途の別に評価することは承知しているが,評価方法について特例的な取扱いがある趣旨からすれば,広大地通達は評価の原則をあてはめることは相当でない。

あくまでも「開発行為をするとすれば」ということから判断すべきである。

甲土地は畑で自用地,乙土地は宅地で貸家建付地であるが,各土地は同一所有者で地続きの一団の土地であり,面積は併せて1,000㎡以上となるから,甲土地および乙土地を一団の土地として広大地評価をすべきである。

審判所の判断

評価通達7は,土地の評価は地目別にすることを原則とし,ただし一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には,その一団の土地は,そのうちの主たる地目からなるものとして,その一団の土地ごとに評価する旨定めている。

相続開始時において甲土地の地目は畑で乙土地の地目は宅地であり,甲土地とは異なっており,また甲土地は自用の農地として,乙土地は貸家建付地として,それぞれが別個に利用されており,一体として利用されていた事実は認められない。

そうすると,甲土地および乙土地の評価に当たっては評価通達7のただし書きに定める特例的な取扱いを適用する余地はなく,土地の価額は地目の別に評価するという原則を適用して,甲土地および乙土地それぞれ別に評価するのが相当である。

したがって,甲土地と乙土地を併せて一団の土地として評価することは出来ない。

請求人らは、評価の原則からいえば,地目,用途の別に評価することは承知しているが,「開発行為をするとすれば」ということから判断すべきであり,甲土地は畑で自用地,乙土地は宅地で貸家建付地であるが,地続きの一団の土地であるから,甲土地および乙土地を一団の土地として広大地の評価をすべきである旨主張する。

しかしながら,一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合においては当該一団の土地の主たる地目で評価することとなるが,甲土地と乙土地は一体として利用されていたとは認められず,甲土地と乙土地とを併せて一団の土地として広大地通達を適用することはできないから,この点に関する請求人らの主張は採用することができない。

コメント

評価通達7は,土地の評価は地目別にすることを原則とし,一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には,その一団の土地は,そのうちの主たる地目からなるものとして,その一団の土地ごとに評価すると定めている。しかしながら、相続開始時に一体として利用されている事実がなければ,一団の土地ごとに評価できない。現地確認の大切さ,判断の厳格さが認識させられる事例である。