特別な事情があるとした事例(裁決事例)
特別な事情ありとする事例がありましたので、掲載します。
通達を適用して評価する事が著しく不適当と認められる特別な事情があるとした事例(裁決事例)
特別な事情ありとする事例
東裁(諸)平23第69号 平成23年10月25日裁決
市街化区域内の市街地山林の時価は、鑑定評価によるべきとした事例
①本件土地の概要
本件土地は、間口約90m、奥行約60m、面積3316.74㎡を有する不整形な形状の土地です。
○○の1.4kmに位置する市街化区域内の市街地山林です。
4.5m市道に接面するなだらかな下り傾斜地で、頂上部分は平坦な土地です。
なお、道路より約1mないし5m高く接しています。
又準住居地域と第1種低層住居専用地域とに跨っている土地です。
②事案の概要
本件は、相続人らが相続により取得した土地について鑑定評価による価額45,100,000円を基礎として相続税の申告をしたのに対し、原処分庁が路線価による評価額が時価を上回っていることから財産評価基本通達によらず、別途依頼した鑑定評価に基づき、当該土地の価額を89,600,000円として相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったところ、請求人らが当該各処分の全部の取り消しを求めた事案です。
③請求人ら、原処分庁の価格
イ…請求人…鑑定評価額による申告 45,100,000円
ロ…原処分庁…鑑定評価による価格 89,600,000円
路線価による評価額が時価を上回っていることから、財産評価基本通達によらず、別途依頼した鑑定評価書による土地の価額としました。
④審判所の判断
原処分庁の鑑定評価を支持し 89,600,000円としました。
その理由は下記の通りです。
(ⅰ)一方、上記通達により算定される土地の評価額が客観的交換価値を上回る場合等同通達を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する場合には、他の合理的な方法により時価を求めるべきものであるところ、本件では、原処分庁鑑定書においてみても、同通達による本件土地の評価額が客観的交換価値を上回っていることが認められ、同通達を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する。
(ⅱ)本件土地の本件相続開始日における適正な時価について
上記のとおり、原処分庁鑑定書は、不動産鑑定評価基準に基づき取引事例比較法及び開発法を適用し、公示価格を規準として使用しており、本件土地の鑑定評価の過程について、特段、その合理性を疑わせるような点を認めることができないから、原処分庁鑑定書による評価額89,600,000円は、本件相続開始日における本件土地の適正な時価を示すものと認めるのが相当である。
なお、財産評価基本通達によらないことについてという一項目を設けて下記のように説明しています。
財産評価基本通達によらないことについて
- 相続税法第22条は、相続、遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価、すなわち、当該財産の客観的な交換価値によるべき旨を規定しているが、すべての財産の客観的な交換価値は、必ずしも容易に把握し得るものではないから、課税の実務上は、財産評価の一般的基準が財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達)によって定められ、同通達によらないことが正当と是認されるような特別の事情がある場合を除き、同通達による画一的な評価方法によって、当該財産の評価をすることとされ、当審判所も、当該財産の価額は、税負担の公平、効率的な租税行政の実現等の観点からみて同通達によることが相当であると認める。
- 一方、上記通達により算定される土地の評価額が客観的交換価値を上回る場合など同通達を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する場合には、他の合理的な方法により時価を求めるべきものであるところ、本件では、原処分庁鑑定書においてみても、同通達による本件土地の評価額が客観的交換価値を上回っていることが認められ、同通達を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する。
≪裁決要旨≫
請求人は、相続開始日における本件山林の時価は、請求人の主張する不動産鑑定額(請求人鑑定額)であり、原処分庁の主張する不動産鑑定額(原処分庁鑑定額)は時価を超える違法なものである旨主張する。 しかしながら、請求人鑑定額の鑑定評価過程においては、 ①取引事例比較法では、採用した取引事例の3つの事例のすべてにおいて、標準化補正及び時点修正をしておらず、うち2つの事例にあっては、競売という事情を何ら補正していないこと、 ②開発法では、分譲価格が、本件山林の近隣に存する基準地の標準価格及び実際に開発された土地の分譲価格に比して極端に低いこと並びに ③採用するのに不適切であるというべき事情のない公示価格があるにもかかわらず、公示価格を規準としていないことからすると、その合理性に疑問があるから、請求人鑑定額は、本件山林の適正な時価として採用することはできない。一方、原処分庁鑑定額は、その鑑定評価過程において合理性を疑わせるような点を認めることができないから、本件山林の相続開始日における適正な時価を示すものと認めるのが相当である。 |
関連ページ:相続税法上の時価鑑定(https://erea-office.com/appraisal/fair_valuation/)